オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『レディ・オア・ノット』

Ready or Not, 95min

監督: マット・ベティネッリ=オルピン、タイラー・ジレット 出演:サマラ・ウィーヴィング、アダム・ブロディ

★★★

概要

ゲームガチ勢な一族への嫁入り。

短評

ザ・ベビーシッター』で“理想のお姉さん”を演じたサマラ・ウィーヴィングが血みどろの花嫁を演じる(コメディ寄りの)ホラー映画(同作の続編があるらしい。ネトフリで忘れずに観なくては)。三十郎氏の大好物な“美女+鮮血”の組み合わせである。劇ヤバな一族に嫁いでしまった彼女の純白のウェディングドレスが“赤黒く”染まっていく様子を“楽しんで”観られるタイプである(“血みどろ”をやり過ぎて笑ってしまうようになる境界線はどこなのだろう)。非常に阿呆で楽しいホラー映画のようでありながら、(欧米ではそこまで厳格だと思っていなかった)家制度のバカバカしさも皮肉っていて、汚くもスマートに仕上がった一作だった。

あらすじ

大富豪ル・ドマス家のアレックスとの結婚式の日を迎えた花嫁グレース(サマラ・ウィーヴィング)。夫や彼の兄ダニエルは「変人一家から逃げるなら今の内」だと言うが、グレースはこれを冗談だと思って耳を貸さない。式を終えた夜、夫妻は一族が勢揃いした場に呼び出され、次の事実を告げられる。曰く、「一族に新たに加わった者はゲームに参加する伝統がある」のだと。グレースの引いたカードには“かくれんぼ”と記されていたのだが、それはただのかくれんぼではなかった。

感想

ル・ドマス家が財を成した裏にはル・ベイル氏という謎の男がいて、新参者にゲームが義務付けられているのは彼との約束である。言ってしまえば、これは悪魔との契約であり、一族は約束を守ることで繁栄が保たているという信じている。また、この約束を破れば自分たちが死んでしまうとも信じている。

これが“0時から夜明けまでの約6時間耐久かくれんぼ”という馬鹿げた大人の遊びであれば、いくらしょうもなくとも、「どの家族にも独特のルールが存在する」というブラックコメディで片付けられる。しかし、この「かくれんぼ」とはほぼ名ばかりであり、見つかると殺される(正確には生け捕りされて儀式の生贄になる)。したがって、花嫁グレースにとっては完全にホラーとなる。状況的にはホラーだし、痛々しい描写も多いのだが、そもそもの設定とのギャップによってコメディが成立している形である。

グレース殺害に積極的な者とそうでない者がいるのだが、積極的な方が誰なのかが面白い。最もゲームに忠実であろうとするエレーヌおばは、かつて自身の夫チャールズをゲームで失っている。「それならどうして……」と思うかもしれないが、かつて自分が味わった苦痛を後進にも体験させる文化は至るところに存在しており、嫌な意味での強い説得力があった。ダニエルの妻チャリティ(エリス・レヴェスク)の積極性も同じ理由で説明できよう。また、アレックス母ベッキー(=姑)がそれ程ノリ気でないのは意外だったが、妹エミリー(メラニー・スクロファーノ)はノリノリで、小姑という存在の面倒臭さをよく現していた。欧米の家制度は儒教文化圏のアジアよりはユルいイメージがあったのだが、“上級”ほどそうでもないらしい(貴族の歴史を考えれば当然か)。

動きやすいようにドレスの裾を、負傷した左手の包帯代わりに左袖を、フェンスに引っ掛かって腹部を。物理的にも心理的にも“花嫁”という属性を破り捨てていくグレース。そんな彼女が母の頭を粉砕している現場を目撃し、夫アレックスが裏切る。夫というのは“家族”の中で唯一の味方になってくれるはずの存在だが、所詮は“あちら側”というのも、世の多くの女性たちが経験することなのだろう。そもそも結婚前に伝えるべきだったことを伏せていたエゴが上手い伏線になっていた。

血みどろの戦いを命からがら生き延びたグレース。夜明けを迎えて何が起こるかと言えば……、何も起こらない……、からの一族大爆発である。何も起こらないままの方が古い因習のバカバカしさを強調する意味では物語との整合性があったのではないかと思うが、それでは爽快感がない。『キングスマン』のような豪快な結末は笑えたし、全てを終えてタバコを吸うグレースの気怠い表情も素敵である。ここの良し悪しは難しいところだろう。

ゲームは“伝統”である。したがって、「当時のルールのまま。当時の道具で」というルール設定が行われているのだが、これが意外にも雑。古い武器の扱いに困ってグダる辺りはルール準拠なのだが、途中で「ご先祖様の時代にもあったら使ってただろ」とか言って監視カメラを見ようとする。随分といい加減なもので笑えた。

チャリティは本人もノリ気でゲームに参加した上で家族の仲間入りを果たしたらしいのだが、どうして彼女の時は一族が爆発しなかったのか。そもそもこのルールであれば、家名を繋ぐ方法が原理的に存在しないはずだが、最悪のゲームらしいかくれんぼの特殊性について具体的な言及があっただろうか。何か見落としたか。

レディ・オア・ノット (字幕版)

レディ・オア・ノット (字幕版)

  • 発売日: 2020/06/24
  • メディア: Prime Video