オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『フェリチタ!』

Felicità, 81min

監督:ブルーノ・メルル 出演:ピオ・マルマイ、リタ・メルル

★★★

概要

自由人な三人一家。

短評

フランスのコメディ映画。設定が少々“シュール寄り”なので分かりづらい映画なのかもしれないと思ったが、意外に直球だった。「フェリチタ(Felicita)」というのはイタリア語で「幸福」の意味らしく(劇中で流れる歌の歌詞として出てくる)、風変わりで問題だらけではあるものの、“それはそれで幸福”という一家の姿を描いている。その“普通”と異なる幸福の形は、子供にとっては辛い部分もあるのだが、普通でないものを“選択”することもできるという可能性が提示されている。

あらすじ

夏休みの最終日。父ティム、母クロエ(カミーユ・ラザフォード)、そして娘トミー(リタ・メルル)の三人一家は、予定よりも1日早い家主の帰還を受けて“家”から脱走する。しかし、その後、クロエが仕事に出掛けたまま帰ってこず、ティムとトミーは彼女を探しに行くのだが……。

感想

母クロエがバカンス中の家を清掃する仕事をしているらしく、一家は家主不在の間に居候する“ヤドカリ”ということらしい。ボートという“本拠地”はあるようだったが、自由気ままに暮らす風変わりな一家である。一見好き勝手に楽しくやっているようだが、父ティムは前科者だし、まだ子供のトミーにとっては良いと思えることばかりではない。それ故に彼女はイヤーマフを装着して外界を遮断し、嫌なことからは目を背けている。

一家はある“遊び”を好んでいる。映画冒頭、ティムがトミーに「実は君は実子じゃなくて……」という深刻そうな話を始めるのだが、これをトミーが「話盛りすぎ」と看破。この時点では純粋な冗談だと思っていたものの、次に、クロエがティムに告げる「昔出演したポルノがネットに流出して……」という“冗談”を、彼が事実だと疑っている様子が見られ、トミーの出自に関する話も本当なのか嘘なのか分からなくなってくる。

トミーの前に突如として出現する宇宙飛行士。このシュールな男は、それまで無音だったイヤーマフ装着状態のトミーと会話するため、明らかに“イマジナリー”である。そんな彼が「このままでいいの?どうする?」と彼女に選択を迫る。イヤーマフで外界を遮断したままのトミーには何が本当なのかも分からず、それ故に辛い思いをすることもあるのだが(宇宙飛行士との会話で”最悪の可能性”を想像する場面に象徴されている)、一歩踏み出して“自分の目”で世界を見ることで、改めて自分の家族の在り方を受け容れる物語であるように感じられた。

「選択」という言葉がしつこいくらいに出てくるし、トッド・ブラウニングの『フリークス』を観たトミーが「普通の人の方が怪物ってこと?」と感想を漏らす場面もあるため、一見シュールな話のようではあるが、“普通ではない幸福の形を選ぶことができる”という主題は分かりやすかったように思う。大人になっても人と違うこと(あるいは、他者が自分と異なること)を受け容れられない人は多いが、もっと気楽に生きてもよいのだ。

パッケージに写っている屈んで歩く三人の姿は、家主に見つからないように家から脱出する場面。娘をこんな形で振り回す両親はポンコツにも思えるのだが、父は右腕に娘の成長を文字通り刻み込み、母は泳げないのに娘のお気に入りのぬいぐるみを回収するために海に入りと(“普通の家庭”が子供に普通を強いることとの対比も上手い)、不器用な愛の形が温かく描かれていた。それ故に、映画の最後に見られるトミーが自ら選んだ笑顔が輝くのである。

トミー役のリタ・メルルは、監督と同じ姓なので実の娘か。

フェリチタ!(Felicità)

フェリチタ!(Felicità)

  • メディア: Prime Video