オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『失踪』

실종(Missing), 98min

監督:キム・ソンホン 出演: ムン・ソングン、チュ・ジャヒョン

★★★

概要

水炊きを食べに行ったら店主に監禁・陵辱される話。

短評

韓国の陵辱系スリラー映画。エログロ描写が(少なくとも映像的には)そこまで強烈というわけではないものの、犯人の不快感がとにかく凄い一作である。「へへへ……」と笑いながら卑劣な行動を繰り返す老人の姿は正に“ナチュラル畜生”といった趣で、その強烈なサイコパス臭が恐ろしかった。彼は紛れもない化け物ではあるのだが、映画的なモンスターとは異なり、“いそう”な感じのするリアリティがある。

あらすじ

役をゲットするため監督と楊平の田舎にある水炊き店へとやって来たヒョナ(ジョン・セホン)。しかし、ヒョナに欲情した店主パンゴンは監督を殺害し、彼女を地下室の檻で監禁する。妹が老人から陵辱を受けているとは知らぬ姉ヒョンジョン(チュ・ジャヒョン)は、妹と連絡がつかなくなったことを不審に思って警察を訪ねるものの相手にしてもらえず、自力での捜索を試みる。

感想

警察署のハゲ上司は「パンゴンは嫁に逃げられたし、病気で寝たきりの母親を看病している苦労人なんだよ」とヒョンジョンを相手にしないが、若い部下キムが「美人だなあ……タイプだなあ……」と(パンゴンと同じく)欲情して捜査に協力。目撃情報を得て再び署を訪れたヒョンジュンと共にパンゴン宅に行くのだが、そこにヒョナの姿はなく……。後日、パンゴンがヒョンジュンに「ペンダント拾ったけど、妹さんの?」「家にあるよ」と誘いをかけ、姉妹揃って毒牙に掛かるという展開である。

ヒョナはヒョンジュンが警察とパンゴン宅を訪れた時にはまだ存命だったものの、彼らが帰ると、「(バレそうだし)あーやっべ」くらいの軽いノリで“粉砕機”にかけられる。それも生きたままである。このシーンに映像的な衝撃はないのだが、パンゴンの何でもないかのような態度が衝撃的である。恐ろしい残虐行為なのに、それが当然であるかのように振る舞うのである。その上、拘束を脱して反撃してきたヒョンジュンに殺されそうになると、「お前が来なかったら妹は死ななかったのにな~」と、これまた笑いながら告げるのである。行為そのものよりも、パンゴンの態度が生み出す恐怖にリアリティがあった。

ちなみに、粉砕機にかけられたヒョナの肉片は“鶏の餌”として消費されている。『スナッチ』では「豚に食わせるといい」と言っていたが、このような手段もあるらしい。「養鶏家手作りの、その場でシメた鶏の水炊き」という言葉は美味しそうに聞こえるが、このような周囲に気付かれにくい辺ぴな場所では何が起きても不思議ではないわけで、“田舎怖い”的な要素もあった。

他にも、パンゴンが何かしているらしいと察した養犬家のデブから「黙ってるから土地くれ」と脅される場面があるのだが、「やるから女を殺すのを手伝え」と共犯者にしてしまう思考経路の表現が見事である。なお、このデブは普通に殺される。

エロシーンは四つ。一つ目は、檻で失禁したヒョナに服を脱がせ、ホースで放水して身体を洗うシーン。おっぱいが見られるのはここだけである。パンゴンがヒョンジュンに「俺は無理強いしない優しい男」「外見より内面を見て」と語っていたのだが(後者の言葉を自ら口にする者の内面が美しいことは決してない。口に出した時点で傲慢さを隠しきれていない)、上述の行動も本人には“優しさ”として脳内処理されているらしい。実に気味が悪い。

二つ目は、三本のロウソクを立てたケーキでヒョナの“飼育”を祝った後、生クリームをローション代わりに使って犯すシーン。塗って舐めるわけではなく、塗って挿入していた。

三つ目は、生理で体調が悪いと言うヒョナに「じゃあ口でいいよ」とさせるシーン。きっとこれも本人にとっては優しさである。それを期待していた相手がそうだと分かった時、彼と同じことを考えてしまう男もいるかと思うが、その邪悪さが端的に分かる場面である。ちなみに、噛まれる。そして、歯を抜かれる。

四つ目は、ベッドに四肢を拘束されたヒョンジュンが身体を弄られるシーン。これは無理強いの内に含まれないらしい。都合のいい男である。

“コーヒー配達嬢”(ファン・ウンジョン)が登場する。『監視者たち』で水飲みカバがユンジュに「コーヒー配達?」と尋ねる場面があり、デリヘルの店舗名か何かなのかと思っていたのだが、「チケット茶房」と呼ばれるデリヘルの一般名称であるらしい。日本の特殊浴場に“(自由恋愛に落ちる)介助員”がいたり、その手の“料亭”に行くと飲み物が出てくるらしいのと同じで、韓国の風俗業にも建前が必要なのだろうか。

下着屋の女(イ・ウニ)がさり気なく美人だった。イ・ビョンホンの妹で、ミス・コリアの受賞者らしい。

失踪 (字幕版)

失踪 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video