オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ジョン・デロリアン』

Driven, 113min

監督:ニック・ハム 出演:ジェイソン・サダイキスリー・ペイス

★★★

概要

ジョン・デロリアンの隣人。

短評

最初に白状しておこう。三十郎氏は「デロリアン」というのが、“『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でタイムマシンになる自動車”のことだと思っていた。それはそれで間違っていないのだが、そのイメージが強すぎて、“市販されていた車”だということが完全に頭から抜け落ちていた。したがって、その車を作ったジョン・デロリアンについても何一つ知らずにいたわけだが、これがなかなか面白い経歴を持った人物であった。イーロン・マスクのように大言壮語を並べて夢を語る割には事業内容はスカスカで、自分がデロリアンという車についてほとんど何も知らなかったのも納得である。ちなみに、本作の“実話レベル”は「Inspired」。

あらすじ

ボリビアから家族でコカインを密輸して帰ってきたところを現行犯逮捕されたパイロットのジム・ホフマン。彼はFBIの情報提供者となることと引き換えに起訴を免れ、標的となるモーガンが暮らす南カリフォルニアで新生活を始める。ある日、彼が愛車のGTOを修理していると、やって来た隣人が手を貸してくれる。隣人曰く、「いい車だ」「私がデザインした」。なんとその隣人は、かの有名なジョン・デロリアンだったのだ。

感想

ホフマンとデロリアンが仲良くなる。デロリアンが資金繰りに行き詰まる。ホフマンが麻薬取引による儲け話を持ち掛ける──というのが本作の大まかな流れである。他にも色々と要因はあるのかもしれないが、DMC(Delorean Motor Company Ltd.)が経営危機に陥った原因は(デロリアンの正式名称は「DMC-12」)、基本的には車が故障ばかりのポンコツで売れなかったことにあるらしい。デロリアンはおとり捜査に引っ掛かった“被害者”という立場になるわけだが、同時に、見栄っ張りで軽薄な、負けず嫌いで違法行為も辞さない、いけ好かない人物であったことが描かれている。

麻薬取引の裁判には勝利したデロリアンだったが、他の裁判には連戦連敗であり、結局DMC-12以外には一つも車を作ることなく会社を畳んでいる。『BTTF』の印象ばかりが強烈で(三十郎氏は同作内での“固有名詞”だとすら思っていた)、市販車としてのイメージが全くなかったのは、単純に普及しなかったからなのである。三十郎氏の生まれる前には既に会社がなくなっていたのだから無理もない。あの“名車”にはそんな過去があったのだ。

本作はそんなデロリアンの姿をホフマンの視点を通して描いている。デロリアン視点ならば、密輸で逮捕されてチクリ屋になった男が隣に引っ越してきたばかりに……という不運一色の物語となるわけだが、このホフマンという男もまた、一筋縄ではいかず面白い。単なる阿呆の憎めない男のようであり、平気で人を裏切る卑劣漢のようであり、意外にもしたたかな側面を見せたりもする。この男が物語の中心となることで、一連の出来事の滑稽さが、また、デロリアンという人物の(凄いのか詐欺師まがいなのかの)“よく分からなさ”も強調されている。伝記映画にとって重要な“数奇さ”をもって面白おかしく描かれており、「デロリアン」という車を作った男の話を興味深く観られた。

本作を観る人の九割以上は、「あの『BTTF』の……」という興味からではないかと思う。三十郎氏がそうではないとは言わないが、実は別の理由の方が大きかったりする。モーガンの女ケイティを『ザ・ボーイズ』のスターライト役でお馴染みのエリン・モリアーティが演じており、彼女のおっぱいが拝めるのである。引き締まったお腹と小ぶりながらもプリンっとしたそれのコントラストは大変に魅力的であり、彼女が同作で完全に“売れてしまう”前に(どうでもいい役で)脱いでいてくれたことに感謝したい。ちなみに、当該シーンは51:58辺りから。

ホフマン視点で全体的にコミカルな一作なのだが、再起を期すデロリアンが格好いいところを見せた後に「やっぱり」となるオチが最も笑えた。

エピローグに登場するデロリアン本人の写真と彼を演じたリー・ペイスはそっくりである。ホフマン本人とジェイソン・サダイキスはあまり似ておらず、本人はマイケル・マドセンに似ていると思った。仮にホフマンをマドセンが演じていたら、コメディ寄りではない本格的な犯罪映画となっていたことだろう。

ジョン・デロリアン (字幕版)

ジョン・デロリアン (字幕版)

  • 発売日: 2020/04/29
  • メディア: Prime Video