オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『GHOUL グール』

Ghoul, 85min

監督:ペトル・ヤクル 出演:ジェニファー・アーマー、イナ・ベリコバ

★★

概要

飢饉による食人の取材。

短評

ウクライナが舞台のチェコ映画。まさかの展開のホラー映画だった。悪い意味で、である。過去に飢饉によって食人が行われた地域を取材するファウンド・フッテージと来れば、当然に食人鬼が襲いかかってくることを期待するわけだが、なんと“心霊もの”である。いや、そっちじゃないだろ。せっかくの食人鬼設定がほとんど何の意味も成していないではないか。その大いなる“ガックリ”を除けば、全てがありきたりな一作だった。

あらすじ

1932年、ウクライナスターリンによる大飢饉“ホロドモール”が発生し、700万の死者を出すに至った。国民は飢えを凌ぐために食人に手を出していたとも言われ、ジェニー(ジェニファー・アーマー。大量の投稿に対して自撮りが少なくて本人確認に苦労した)、イーサン、ライアンの三人は、食人のための殺人容疑で逮捕されたことのあるボリスを取材するために訪宇する。彼らは現地民ワレリー、通訳カタリーナ(アリーナ・ゴロフリョーヴァ)、霊感女イナ(イナ・ベリコヴァ)の三人を伴って食人のあった村を取材するのだが、その夜、降霊会をし、とある悪霊を召喚してしまう。

感想

降霊会をしたら悪霊を召喚してしまい、登場人物たちが怖い思いをする。これまでに何本観てきたのか分からない心霊もののホラー映画とそっくりそのまま同じ展開である。食人はどこにいった。グールはどこにいった。完全に設定倒れではないか。降霊会が始まった時点で嫌な予感はしたのだが、まさかそのまま海千山千の心霊ものと同じ展開を辿るとは思わなかった。

その後の流れについて特筆すべき点はない。「悪霊の仕業かと思ったら実は地下に潜んでいた食人鬼の仕業でしたー」みたいなどんでん返しもありうるのかと思ったが、最終盤までは本当にそのまま心霊ものとして話が進んでいく。細かい点に至るまでかつての食人の影響を感じさせることはない。最後の最後になって「食人鬼現る!」みたいなオチがつくのだが、心霊ものというジャンルは不変である。薄暗い空間に怖いおっさんがいて、それで食人要素を消化したことになってしまう。

悪霊の正体は、アンドレイ・チカチーロという実在の食人犯。だから何だ。だからどうした。こっちが観たいのは食人そのものなのである。それに彼が生まれたのはホロドモールの後の話ではないか。どうして「村には今も食人の習慣が残っていたのです」という展開にならないのか。悪霊に憑依されて死んだ猫の死体なんかはよく出来ていたし、そちらの方向性でスプラッター映画にはできなかったのか。

ほぼ褒めるべき点のない一作ではあったが、一点だけ笑えるところが。降霊会を行った翌朝、一行は記憶を失っている。イーサンとカタリーナ、ライアンとジェニーがそれぞれ同じベッドで朝を迎えるのだが、女性陣がセックスの最中に男から引っかかれたと傷跡を見せて主張するのに対し、男はこれを覚えていない。そこで監視カメラを確認してみると、そこにはジェニーが一人でしている姿が捉えられていた。この後、彼女が逆ギレするかのように「帰る!」と言い出す場面がハイライトである。

GHOUL グール(字幕版)

GHOUL グール(字幕版)

  • 発売日: 2019/04/01
  • メディア: Prime Video