オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『RONIN』

Ronin, 121min

監督:ジョン・フランケンハイマー 出演:ロバート・デ・ニーロジャン・レノ

★★★

概要

元スパイによる謎のケース争奪戦。

短評

冷戦の終結によって役目を終えた元スパイたちの暗躍を描いたアクションスリラー。映画の冒頭と途中に「浪人」についての言及があり、主人公たちがそのような存在であると示唆される。しかし、それを殊更に強調するわけではなく、あくまで静かに死力を尽くして戦うシブい物語だった。(デ・ニーロが動けないからなのか)アクション成分はほぼカーチェイス頼りで、“アクションスリラー”としては後者の比重が大きかった印象である。(既にそうではなくとも)スパイ映画らしく裏切り者が出てくるのだが、最も裏切りそうな奴が裏切る前にいなくなったのには笑った。

あらすじ

江戸時代、主を失ったサムライたちは「浪人」と呼ばれていた。時は流れて冷戦終結後のパリ。ディアドラ(ナターシャ・マケルホーン)からサム(ロバート・デ・ニーロ)やビンセント(ジャン・レノ)ら四人の元諜報員たちが呼び集められ、とあるケースの強奪任務を与えられる。メンバーの離脱がありながらも見事に任務を成功させたかに思われたが、裏切りに遭ってケースが持ち去られてしまう。

感想

離脱者の名はスペンス。演者はショーン・ビーンである。チームを仕切ろうとイキるスペンスだったが、サムに「お前、素人だな」と見抜かれ、本番前にチームから追放となる。『007 ゴールデンアイ』や『ロード・オブ・ザ・リング』でのイメージが強く、常に主人公を裏切るイメージのあるショーン・ビーン。追放された彼が敵側に寝返って復帰する展開もあるのではないかと思ったが、それすらない圧倒的な小者で笑った。サムに怒られた時に何も言い返せずに震える姿が逆に微笑ましくすらある。

目的のケースの中身は典型的なマクガフィン。サムがディアドラに対して「中身は何だ」と迫る場面はあるものの、それ以上に追求されることはない。ケースを巡って繰り広げられる裏切りとアクション。この二つが本作の目玉である。もっとも、“意外な人物”が裏切るような驚きの連続が待っているわけではなく、アクションもカーチェイス以外は必要最低限といった印象。その戦いに身を投じる元スパイのドラマこそが物語の核だったかと思う。

デ・ニーロが淡々と“仕事”をこなしていく姿はシブくて格好よいのだが(スパイというよりはギャングのヒットマンっぽいが)、本作の公開当時(1998年)と比べ、現代では“冷戦終結後”という空気感が今ひとつ掴みづらくなっており、「もう少し説明的でも親切でいいかな」と思うところもあった。普通に楽しめはするのだが、“浪人”という要素の影響が正直よく分からずじまいだった(『サムライ』よりは分かる)。“何のために働くのか”という依代を失ったことも裏切りの一因ではあるのだろうが、金のために国家を裏切るのは冷戦中にもあったことだろうし。

銃撃戦もありはするが、アクションはほぼカーチェイスということもあり、これはなかなか迫力があった。アクションなしで貫徹できるほどの緊迫感溢れるスパイスリラーだとは思えないため、これは賢明な判断だったかと思う。イカツイ表情のプロフェッショナルなサムだが、運転時の姿勢に余裕がない辺りにアクションスターとの違いを感じた。難しい場面はスタントマンが演じているだろうし、これも何か狙いのある演技なのだろうか。

ケースを強奪した裏切り者のグレゴール(ステラン・スカルスガルド)は、ロシア人にそれを売ろうとする。相手はフィギュアスケーターカタリナ・ヴィット。本物の金メダリスト)のパトロンである。彼がフィギュアスケーターがリンクに出る前に口にキスをしていて、以前読んだ『怖い絵』という本に「バレリーナは上級専用娼婦」と書いてあったことを思い出した。フィギュアの世界もそうなのか。それとも、単に文化の問題なのか。

スパイの必須アイテム盗撮用カメラ。サムはライカユーザーで、グレゴールはニコンユーザーだった。

RONIN (字幕版)

RONIN (字幕版)

  • 発売日: 2015/10/14
  • メディア: Prime Video