オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ザ・ハッスル』

The Hutsle, 93min

監督:クリス・アディソン 出演:アン・ハサウェイレベル・ウィルソン

★★

概要

二人の女詐欺師。

短評

残念ながらクスリとも笑えなかったコメディ映画。主演の二人は豪華なのだが、彼女たちのキャラクターと演技だけに笑いが依存してしまっており、演出で笑わせられていなかった。その上、レベル・ウィルソンは醜くて下品なだけ、アン・ハサウェイは酷い猿芝居と、ただ不快なだけで何の相乗効果も上げられていない。コメディというジャンルには“お約束の展開”がつきものだが、詐欺を扱った映画なのに全く観客を騙すことなく分かりきった結末に進んでいくだけなのもいかがなものかと思う。日本におけるアン・ハサウェイはネームバリューは高いと思うのだが、劇場未公開なのも納得だった。

あらすじ

南仏へ向かう列車の中で出会ったジェセフィーヌアン・ハサウェイ)とペニー(レベル・ウィルソン)の二人の詐欺師。ジョセフィーヌは自分の縄張りへのペニーの侵入を妨害しようとするものの、その企みが露見し、ペニーから弟子入りを申し込まれる。二人でいくつかの結婚詐欺を成功させたものの報酬の配分で対立し、50万ドルを賭けてトーマスというアプリ開発者の若者を騙す詐欺対決の火蓋が切って落とされる。

感想

本作は『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』という作品のリメイクなのだとか。三十郎氏は同作を観ていないが、“詐欺映画”というのは最後に“あっと驚く結末”が待っているものと相場が決まっており、それは「詐欺師が詐欺られる」という展開以外に考えられない。W主演ではなくどちらか片方が主役のタイプの作品であれば、「標的もグルでした」という展開もありうるのだろうが、本作はそれとは矛盾する描写が散見されるため、実質的に一択の予想である。

“本編”である二人の詐欺対決が約半分、本編開始までの“導入部”が約半分といった構成。本編の方は結末が分かりきっているため、コメディとしての楽しさがより強く求められる。しかし、主演二人がサムい笑いを繰り出すだけの陳腐なコントでしかない前半で三十郎氏のこころはすっかり冷めきっており、“詐欺”という要素が全く感じられない後半にも一切の盛り上がりを感じることはなかった。トーマスを騙し、童貞を奪おうとする過程で、二人が彼を“奪い合う”だけでなく互いに騙し合うような展開があれば、一本調子な話に少しは変化をつけられたのではないかと思う。

レベル・ウィルソンは“いつものキャラクター”と“いつもの演技”である。彼女が笑えないのは、その“いつもの”に騙される人がいるとは思えない、詐欺師という設定との矛盾に原因があるかと思う(“ツッコミ待ち”みたない状態が長すぎる編集の犠牲者でもあると思う)。対するアン・ハサウェイも、ウィルソンとは対極の意味でいかにもコメディエンヌらしい大げさな演技を披露しており、同じく優秀な詐欺師だとは思えない。胡散臭さと上手さのバランスは取れなかったのか。“詐欺”という要素をほぼ放棄したコメディなのは理解できるとしても、ストーリーを成立させる上での最低水準にすら達しないままにコントをしており、その薄ら寒さばかりが鼻についた。

本作の数少ない面白い点は、その分かりきった結末のメタなレベルでの皮肉だろう。オリジナル版でも同じ展開なのかは知らないが、せっかく“現代的”に主演の二人を女性キャストに変更し、「か弱い女を演じてヒーロー願望の阿呆な男を騙す」とフェミ的な台詞を言わせていたりするのに、最後はその二人が“男”に騙される。オリジナル版では男女逆で同じ展開だったとすると、これはかなりの皮肉だろう。

ザ・ハッスル

ザ・ハッスル

  • 発売日: 2020/05/06
  • メディア: Prime Video