オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『レヴェナント: 蘇えりし者』

The Revenant, 156min

監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 出演:レオナルド・ディカプリオトム・ハーディ

他:アカデミー賞監督賞(イニャリトゥ)、主演男優賞(ディカプリオ)、撮影賞(エマニュエル・ルベツキ

★★★★

概要

息子を殺した男に復讐する話。

短評

バードマン』の監督&撮影監督コンビによる映像美特化型の一作。シンプルな復讐譚をほぼマジックアワーの自然光のみで撮影しており、ある意味では究極のネイチャードキュメンタリー(的サバイバル映画)である。現在、三十郎氏はFHDのテレビで映画を観ているのだが、4K環境を導入した暁には真っ先に本作のUHD BDを購入しようと考えているくらいにはとにかく凄い。ストーリー自体は単調なはずなのだが、圧倒的な映像の力に思わず引き込まれる。厳しくも壮大で美しい自然と、その中で繰り広げられる滑稽なまでに泥臭い戦い。究極の対比と調和がそこにある。

あらすじ

毛皮ハンターの一団に先住民族アリカラ族が襲いかかる。多数の死傷者を出しながらも隊員たちはひとまず難を逃れるが、斥候に出たグラス(レオナルド・ディカプリオ)がグリズリーに襲われて瀕死の重傷を負い、ただでさえ厳しい環境に置かれている隊員たちの足が止まる。隊長は助かりそうもないグラスを看取って埋葬するようにグラスの息子ホークら三人に任せて歩を進めるのだが、業を煮やしたフィッツジェラルドトム・ハーディ)がグラスを殺そうとしている場面をホークが目撃。フィッツジェラルドはホークを殺害し、グラスを置き去りにする。

感想

グリズリーに襲われるシーンは本当に怖い。ファーストコンタクトの“加速感”からヤバい。完全に死ぬ。どう考えても死ぬ。グリズリーに“遊ばれて”全身に傷を負い、喉を切り裂かれ、もういよいよダメだ……となったグラスだったが、復讐心によって蘇り、壮絶な旅の果てに息子の仇を討つ。フィッツジェラルドに「もう楽になりたいだろ?その方が息子のためにもなるぞ」と言われ、同意した後に“事件”が起こるため、若干の八つ当たり感がなくもないのだが、復讐心だけで過酷な環境を生き延びる。きっと復讐の先には何も残らないであろう不毛な旅なのだが、それでもなおやり遂げるという執念の凄まじさを感じさせる一作である。

本作で念願のオスカーを受賞したディカプリオ。三十郎氏としては同年にノミネートされた『リリーのすべて』のエディ・レッドメインの方が上だったと思っているし(前年に『博士と彼女のセオリー』がなければそうなっただろう)、ディカプリオは『ウルフ・オブ・ウォールストリート』で受賞しておくべきだったと思っている。しかし、彼の披露した体当たりの演技についてはやはり圧巻であり、物語の核である“執念”に強い説得力を与えている。フガフガ言いながら匍匐前進し、白骨化した動物の骨にこびり付いた肉をしゃぶり、生魚と生肉を食らって生き延びる(後者で「うえっ」となるのがリアル)。土に埋もれ、極寒の川を流され、吹雪に襲われ、“惑星ホスごっこ”。猟銃用の火薬で喉の傷を塞ぐ場面なんかもあったりして、「よく死なないな……」と思わせられること数え切れず。唯一残念だったのは、砦に辿り着いた時のグラスの体が少々弛んでいることだろうか。ガリガリに痩せ衰えたら本当に死にそうな状況ではあったが。

イニャリトゥの監督賞はニ年連続、ルベツキの撮影賞は三年連続である。どうか早くこのコンビの新作を(結局VR作品は観られないのだろうか。配信があるなら環境整備するにやぶさかでない)。本作のようなタイプの作品の場合、“没入感”を重視しそうなものなのだが、意外にも“カメラの存在”を意識させるシーンが多い。最も分かりやすいのはグラスの白い息がかかってレンズが曇る場面と最後のカメラ目線なのだが、他にも、水滴や血飛沫がレンズについたり、ゴーストが写り込んでいたり、(デジタル世代の旗手らしく解像感を追求するために絞りまくって)光芒がトゲトゲになっていたりと、映像であることをかなり主張してくる。これにはどのような意図があるのだろう。

2010年代の映画を振り返った時、『バードマン』こそが個人的ベストであると認識するほどに同作を気に入っている三十郎氏は、本作に対する期待が限界突破していた。そこで、本作の劇場公開時には、当時は日本最大かつ唯一(だったはず)の4KレーザーIMAXを導入していた大阪の109シネマズまで足を運んだほどである。そのスクリーンは三十郎の視野からはみ出す程に大きく、本作に対する「すげえ……」という特別な感情を強めている。

さて、今年のアカデミー賞が明日発表である。三十郎氏はプライムビデオの配信作品である『サウンド・オブ・メタル』と『ボラット2』以外は一つも観ていないはずなので、超豪華ラインナップだった昨年よりも明らかに盛り上がりには欠けるのだが、果たしてどういう結果が出るのだろう。Netflix作品もノミネートされているようだし、そろそろ今年も一ヶ月だけ契約しようかな。

レヴェナント:蘇えりし者 (字幕版)

レヴェナント:蘇えりし者 (字幕版)

  • 発売日: 2016/07/27
  • メディア: Prime Video