オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『EMMA/エマ デッド・オア・キル』

Jagveld(Hunting Emma), 103min

監督:バイロンデイビス 出演:リーンディ・ランド、ニールス・ファン・ヤースレヴ

★★

概要

本当は怖い女教師。

短評

南アフリカ製のレイプ(未遂)・アンド・リベンジ feat. “最強のおっさん”映画(主人公はおっさんではないが)。序盤はひたすらに退屈なのだが、一つの言葉で状況がガラリと一変する。この瞬間は最高にワクワクしたものの、その後は高まった期待に応えてくれる活躍が見られず、徐々にトーンダウンしていくままに終劇となってしまった。主演女優のアクション能力が決して高くないという事情はあろうが、それはスタントダブルを使えばよいだけの話である。どうしてもっと振り切った演出にしなかったのだろうかというもったいなさが残る。

あらすじ

休暇中に父の家を訪ねるべく荒野をドライブ中の女教師エマ(リーンディ・ランド)。しかし、車が故障して立ち往生してしまい、助けを求めて周囲を捜索していたところ、警察官が男たちに殺されている場面に遭遇してしまう。姿を見られたエマも捕まってしまい、男たちに陵辱されかかるも、実は生きていた警察官が逃亡した混乱に乗じて自身も脱出を果たす。追ってくる男たちからの決死の逃走を図るエマだったが、彼女にはある秘密があった。

感想

エマは狂信的なまでの非暴力主義者である。それは“彼氏が他人とケンカしたので別れる”ほどまでに徹底されている。彼女がそこまで暴力を嫌悪するのは、実は幼少時に元特殊部隊の父親からサバイバル&格闘スキルを仕込まれていたから。「ナメてた女が実はヤバかった」という最強のおっさん映画的な状況の完成である。この“オチ”に至るまでは、強盗団と警察官の傍流たるやり取りは冗長だし、レイプシーンでおっぱいが見られるわけでもなく、かなり退屈である。

しかし、逃走中に再び捕まってしまい、「今度こそ」とレイプされかけているエマが放つ一言──「あなたを傷つけたくない」──でそれまでの全てがひっくり返る。この瞬間の興奮がとにかく凄い。「この瞬間のためだけに本作を観る価値がある」「ここまでの評価を覆して称賛するにやぶさかでない」とまで思ったのだが、残念ながらその先はトーンダウン。最強の女教師であるはずのエマが全く最強ではなく、強盗団が自ら負けにいっているとしかおもえない出来レースが繰り広げられるのである。

高台から下にいる男に投石し、見事頭に命中させるエマ。「これは勝ったな」と先に進もうとすると、死んでいなかった男に脚を掴まれる。エマは男が落とした銃を拾って殺すのだが、どうして男は銃を拾わないのか。これは頭がボンヤリとしていたから仕方ないという言い訳が可能であるにしても、他の男も銃を捨てて素手での戦いを挑んだ末に鈍器で殴り殺されていたり、わざわざ相手の土俵に立って早撃ち対決に負けていたりと、かなり不可解な行動が目立った。走行中の車の中にいるドライバーを撃ち抜く狙撃能力があるはずなのに、どうしてこんなにも(頭が)弱いのか。

阿呆なのは強盗団だけではない。エマは非暴力主義者として戦いから長らく遠ざかっていたブランクがあるため、彼女の体が覚えていたスキルと敵の凡ミスで辛くも勝利を得たということにしておこう。しかし、ただ“あまり強くない”というだけではなく、高台にいる相手を開けた低地から堂々と双眼鏡で偵察して見つかっている場面もあり、根本的に頭が弱いのではないかと思わせられた。格闘シーンに迫力がないのも残念なのだが、それ以前の問題として復讐モードに入ってからの行動が「ナメてた女が実はヤバかった」という設定と矛盾していて、まるで爽快感を得られなかった。

「あなたを傷つけたくない」の次に気に入ったのは、暴力に目覚めたエマが元カレに復縁メールを送り、彼女の「男の世界が分かった」に対して「そうなんだ……」と返ってくる場面。元カレは明らかに戸惑っている。エマが「愛してる」と送った後の返信まで見たかった。ラグがあったということは……。

パッケージには“セクシーで格好いい女アサシン”みたいな女性が映っているが、こんな衣装を着ている場面は一瞬もない。

南アフリカ公用語は英語だと思っていたのだが、なんと9言語もあるらしい。本作ではアフリカーンス語が話されている。

エマ デッド・オア・キル(字幕版)

エマ デッド・オア・キル(字幕版)

  • 発売日: 2019/07/01
  • メディア: Prime Video