オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『我輩はカモである』

Duck Soup, 68min

監督:レオ・マッケリー 出演:マルクス兄弟グルーチョ、チコ、ハーポ、ゼッポ)

★★★

概要

フリードニアvsシルベニア。

短評

名前は聞いたことがあったが実際に観るのは初めてのマルクス兄弟のコメディ映画。何と言うか、意味不明だった。駄洒落、コント、ミュージカルの三本立てで、それらを怒涛の勢いで畳み掛けてくるので脳の処理が追いつかない。普通に笑えるシーンもあるのだが、何をしているのか分からずに「お、おぅ……」と呆然としている時間の方が長かったかと思う。たとえば『暴走!ターボ・バスターズ』のような(時代が時代だけに同作のような下品さはないが)、ナンセンスの極地がそこにある。よく分からなかったが、「くっだらねえ」と笑い飛ばせばそれでいいのか。

あらすじ

財政危機に喘ぐフリードニア共和国が富豪ディーズデール夫人に資金援助を依頼したところ、彼女の“お気に入り”ルーファス・T・ファイアフライグルーチョ)が首相に推挙され、ファイアフライ新政権が誕生。フリードニアの乗っ取りを画策する隣国シルベニアの大使が送り込んだチコリーニ(チコ)とピンキー(ハーポ)の二人のスパイは正体がバレてしまうも、両国は戦争へと突入する。

感想

驚異のナンセンスである。ストーリーには何かしらの風刺的な意図が込められているようにも思うが、基本的にはただひたすらにバカをやっているだけである。登場人物はファイアフライを筆頭に全員阿呆なので(ディーズデール夫人は比較的常識人のようだったが、ファイアフライを推挙する時点で阿呆である)、彼らがどんな阿呆をやろうとも、誰も止めてはくれない。その就任から勢いだけで突っ走ってきたファイアフライが(仕事は全くしていないが)、勢いだけで戦争へと突き進む。全てが勢いである。とにかくぶっ壊れている。考えるな、感じろ。

ファイアフライについては(時に第四の壁を越える)彼の“舌禍”が戦争を招くという物語上の一応の役割が与えられているものの、チコリーニとピンキー(特に後者)については「こいつら、何やってんの……?」感が相当に強く、その笑いが物語とはほぼ無関係である。何でもハサミとチョキチョキやってしまうピンキーのキャラクターは意味不明の一言であり、レモネード屋のハゲ親父がただただ気の毒だった。彼については笑えるというよりも、その精神異常者ぶりに引くところが大きかった。

ピンキーが(行動の意図が分からなすぎて意味不明ではあるが)チャップリンのような分かりやすい笑い(=動き)を披露する一方で、ファイアフライは言葉による笑いを連発する。その中には“皮肉”も含まれているものの、多くは“駄洒落”である。三十郎氏は、頭に浮かんだ親父ギャグがどんなにくだらないと理解していても口に出すのを抑えられなくなったという事実をもって、自身がおっさんの仲間入りを果たしてしまったと認識している。その一方で、つまらない親父ギャグを連発してドヤるには忍びない羞恥心が残っており、“おっさん完全体”との間に壁を感じている。言ってから後悔する、微妙なお年頃である。

ファイアフライに扮したチコリーニが“鏡に映った自分”を演じるシーン。二人が持っている帽子の色が異なるので、それでバレるのかと思いきや、いつの間にか同じ色にすり替わっていた。どんな意図の演出なのだろうか。

映画の冒頭で活カモが茹でられている。生きたカモの入ったお湯の下では火が燃え盛っているのだが、逃げないということは入浴の適温なのだろうか。それとも、言葉を喋らぬピンキーが体に描いた絵の中に犬の合成映像が含まれていたように、何らかの特撮を用いているのだろうか。

我輩はカモである [DVD]

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  • 発売日: 2012/05/09
  • メディア: DVD