オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『死体語り』

Morto Não Fala(The Nightshifter), 110min

監督:デニソン・ラマーリョ 出演:ダニエル・デ・オリヴェイラ、ファビウラ・ナシメント

★★★

概要

死体と会話できる男。

短評

ブラジル製ホラー映画。死体と会話できる特殊能力持ちの男を主人公とした一作なのだが、この能力が導入部以外で活かされることはほとんどなく、「やってはいけないことをしたから悪霊に呪われる」というテンプレ通りの展開となっている。普通に考えればこれは不満要素のはずなのだが、特殊能力を“前提”として扱ってしまうことで、“そういう世界”なのだという認識の獲得に寄与していたように思う。物語全体の流れも、普通に考えれば阿呆な話でしかないものの、導入部の成功によって雰囲気の勝利を達成していた。

あらすじ

ブラジルの遺体安置所で働くステニオには秘密の能力があった。なんと彼は死体と会話ができるのである。ある夜、とある死体から「妻オデッテ(ファビウラ・ナシメント)が浮気してるぞ」と聞かされたステニオは、同時期に搬入されてきたギャングの兄に、弟の死を招いた密告者が間男だと告げて殺害させることを計画する。しかし、死者の秘密を漏らすことは硬く禁じられており、その禁を破ったステニオ一家は恐ろしい事態に見舞われるのだった。

感想

死体の話が気になって妻を尾行してみると“やっぱり”だったので、計画を実行に移すステニオ。ギャングの兄ジョナスは弟しか知らないはずの秘密をステニオが知っていたため、まんまと信用させられてしまう。ジョナスが間男の首を切り裂いたところまでは計画通りだったが、その場にいたオデッテが騒いだために(アーセナルのウィリアン似の)手下が彼女を射殺。安置所で対面を果たしたステニオは「やーい。天罰だぞ」と死んだ妻に告げるものの、これにオデッテが激昂。そう、本作の悪霊の正体は彼女である。つまり、霊界を巻き込んだ壮大な夫婦喧嘩である。なんて傍迷惑な!

夫婦喧嘩の犠牲者となるのは子供だと相場が決まっている。悪霊オデッテは「子供たちを連れてってやる!」と夫を脅すわけだが、いくら夫のことが憎く、それが効果的とは言え、自分の子供に対する愛情や哀れみはないのか。それにしても、ステニオが秘密を漏らしたのはギャング弟だと言うのに、どうして悪霊化したのは妻の方なのだろう。ルールを破った者に罰を与えるのにその方が有効だからなのか。妻はギャングよりも怖い!

二人の子供たち以外で夫婦喧嘩に巻き込まれてしまう間男の娘ララ(ビアンカ・コンパラート)。彼女がオデッテに代わって子供たちの面倒を見ていてくれたことから、オデッテは「彼女を殺してお前の本性を子供たちに見せろ」と言い出す。めちゃくちゃである。オデッテを殺したギャングたちも怪死を遂げており、ルール破りのステニオとは無関係に暴れまわる最凶の悪霊オデッテであった。生前の彼女はエロエロ熟女といた趣だったが、一度死んだララに憑依してステニオと交わろうとする。この時、てっきり“噛み切られてギャーッ!”になるものと思ったのだが、それはなかった。ステニオがララの服を脱がせようとして拒んだ辺りに彼女のプライドが透けて見えた。若い美人のおっぱいを見せろよ。夫にいい思いをさせるのは嫌なのだろうが、観客にはサービスを。

死体が喋るシーンの表現が良かった。遺体役の役者にそのまま演技をさせるのではなく、CGで人為的に表情を動かして会話させている。ちょうど不気味の谷の効果なのか、これがなんとも不気味なのである。

解剖のシーンが多くグロテスクで、悪霊ものには珍しい類のホラー映画の楽しみを提供してくれている。怪死を遂げたギャングたちは、死体が発見された屋外のその場で検死されているのだが、果たして、そんなことがあるのだろうか。グロテスクな描写以外にも、ステニオだけに見えている“凧糸”の張り巡らされた部屋の雰囲気も良かった。ブラジルではワイヤーのように切れ味鋭い凧糸を使用するらしい。恐ろしい国である。

死体語り(字幕版)

死体語り(字幕版)

  • 発売日: 2020/04/08
  • メディア: Prime Video