オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ファイティング・ファミリー』

Fighting with My Family, 108min

監督:スティーヴン・マーチャント 出演:フローレンス・ピュー、ドゥエイン・ジョンソン

★★★

概要

イギリス人女レスラーがWWEに挑戦する話。

短評

イギリス人プロレスラー、サラヤ・ジェイド・べヴィスの伝記映画。ロック様ことドゥエイン・ジョンソンが本人役で出演している。ストーリー的にはテンプレのようなスポ根ものなのだが、ニック・フロストの添えてくれる笑いやスターになれない日陰者の活躍といった要素もあり、及第点以上の仕上がりになっていたように思う。ただし、スターがスターたる理由の部分には飛躍があったり、プロレスという競技の性質を理由にノリきれないところもあった。

あらすじ

父リッキー(ニック・フロスト)、母ジュリア(レナ・ヘディ)、兄ザックと共に(もう一人の兄ロイは服役中)、英東部ノリッジで弱小プロレス団体WAWを営むサラヤ(フローレンス・ピュー)。父がWWEに送ったビデオがスカウトの目に留まり、ザックと共にトライアウトを受けることになる。その結果、ザックは落選したものの、サラヤは見事に合格。家族の期待を一身に背負ってフロリダへと飛び、WWE傘下の育成団体NXTでのトレーニングに挑むサラヤだったが、厳しい現実の壁が立ちはだかる。

感想

サラヤの同期カーステン(アクィーラ・ゾール)、ジェリー・リン(キム・マトゥーラ)、マディソン(エリー・ゴンザルヴェス)。いずれもモデルやチア出身のセクシー美女軍団である。イギリスからやって来たオジー・オズボーンみたいな変人のサラヤは疎外感を感じ、「素人どもめ」「イジめられてる」と被害妄想に余念がないのだが、彼女たちにも理由があって本気でプロレスに取り組んでいることを知る。昨日の敵が今日の仲間となるアツい展開である。そんな苦悩や厳しいトレーニングを乗り越えてリングデビューを果たし、デビュー戦でタイトルを掴むというのが本作の大筋なのだが、ここでいくつかの疑問が残る。

13才でプロレスデビューを果たし、以来、弱小団体とは言え、プロレスと共に人生を歩んできたサラヤにはその自負があるわけだが、彼女のアスリート能力は相当に低い。トレーニングでは美女軍団に遅れを取って弱音を吐き、マイクアピールで煽られれば何も言い返せずに立ち尽くし(アメリカではイギリス人をハリー・ポッターのネタでイジるのが定番らしい)、「もうイギリスに帰る!」と心が折れる。そんなサラヤが「やっぱり頑張る」と改心すると、ロック様から直々にデビューを申し渡されるのだが(この美味しい役は創作らしい)、このポンコツレスラーが改心後たったの6週間でプロの水準に達することができるとはとても思えない。

プロレスという競技は、リングの上で見せるパフォーマンスがどんなに凄かろうと、勝敗については事前に興行側が決めているものである。したがって、サラヤがデビュー戦で勝利を収めてタイトルを掴もうとも、その過程に飛躍があるだけに“感動の勝利”とは思えない。彼女が頑張ったから勝利したのではなく、彼女のような背景を持つ者を王者にすればウケるという主催者の意図だけが透けて見えてしまう。コーチ(ヴィンス・ヴォーン)はサラヤを選んだ理由を「輝き」の一言で説明していたが、他の美女軍団と比べて何が優れているのかという点が“背景”だけに依拠しており、今ひとつ感動できなかった。

彼女が成長したからリングに立ったのであれば、試合前に煽られてフリーズする癖がそのままなのはいかがなものか。ファンの心を掴むために重要な要素だからこそ特訓してきたはずなのに、何も成長していないではないか。

サラヤの苦悩が中心の物語となっているため、プロレスの描写は控えめである。美女軍団に馴染めず悩んだ彼女はブロンドヘアや日焼けスプレーの組み合わせでイメチェンするのだが、最後は自分らしくオジー・オズボーンスタイルでリングに立つ。なお、本人のインスタを見る限り、現在はいかにもなインフルエンサー風になっている。

せっかくトライアウトに合格したのに甘ったれてばかりの妹を前に、少々グレてしまう兄のザック。どんなにコーチに売り込んでも「輝きがないから」とボツを食らう気の毒な青年だったが、彼のような日陰者の活躍の道が示されている点は良かった。ザックはレスリングジムのコーチとして地域のはみ出し者な子供たちを指導し、視覚障害者をプロレスラーにしたというエピローグがある。これはこれで凄いことだと思う。ザックとデキ婚したコートニー(ハナー・レイ)が可愛かった。

EDロールで本人たちの映像が流れるのだが(このドキュメンタリーを原作としているらしい)、父リッキーがノリッジ在住のくせにアーセナルのシャツを着ている。出身はロンドンなのか。

少女時代のサラヤを演じるトリ・エレン・ロスアビゲイル・ブレスリンに似ていると思ったのだが、劇中以外だと全然だった。ちなみに「ペイジ」を名乗る前のサラヤは「ブリタニー」というリングネームで活動していて、母ジュリアのリングネームが「サラヤ」である。

ファイティング・ファミリー (字幕版)

ファイティング・ファミリー (字幕版)

  • 発売日: 2020/04/15
  • メディア: Prime Video