オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『チャイニーズ・フェアリー・ストーリー』

畫壁(画壁/Mural), 125min

監督:ゴードン・チャン 出演:ドン・チャオ、スン・リー

★★

概要

二次元ハーレム世界に迷い込む話。

短評

聊斎志異』の『画壁』を原作とする一作。二次元世界の美女と戯れたいのは日本のアニオタだけではないのだな。邦題は『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』との邦題詐欺を狙ったものなのだろうが、原作が同じ作品であれば許容範囲内だろう。同作と同じくロマンスを中心としながらも様々なジャンルミックス的な要素を持つ一作となっている。ただし、決して質の高くないCGは思わず笑ってしまうようなカオスを形成しておらず、魅力に転化しないタイプのチープさがダイレクトに出てしまっていた。また、直球で悲恋を描いているはずのストーリーについては、“斜に構えていれば笑える”という代物だった。

あらすじ

山賊の孟を追って古寺へとやって来た書生の朱と従者の後夏。朱が寺の壁画を眺めていると、そこに描かれた美女が絵から抜け出して実体化するのを目撃する。彼女を追って寺の奥へと進むと、女性しかいない男子禁制の寺院へと辿り着く。そこはなんと姑姑の支配する天上界であった。一度は外界へと戻った朱だったが、件の美女・牡丹(ジェン・シュアン)のことが気になり、孟と後夏を伴って天上界へと舞い戻る。

感想

日本ならAKBグループで映画化できそうな内容だと思った。天上界に戻った朱たちは意外にも姑姑に歓待され、「好きな女を選んでいいわよ」と告げられるのである。これは“種”を入手する目的と、その後に殺す予定があるのだが、なかなかのハーレム展開と言えるだろう。「AKBグループで」という評したように、正直に言って美女たちの顔の見分けがつきにくいという難点はあるものの、「こいつは気に入らなかったから別の嫁と交換!」「一夫多妻制がいい!」と孟はハーレムを最大限に満喫し、女たちも満更でもない様子。正妻(=センター)の座を掛けたハーレムアニメのようであった。

孟がハーレムを楽しむ一方で、朱は姿の見えない牡丹が気になる。実は彼は彼女をトラブルに巻き込んでしまったから戻ってきたのである。朱は牡丹と仲の良い翠竹(ローラ・シェイ)と、後夏は孟に捨てられた丁香(モニカ・モク)と偽装結婚し、牡丹の行方を探るのである。こう書くと牡丹が“正ヒロイン”のようだが、実は別にいる。芍薬スン・リー)である。

彼女は“揺れる中間管理職”であり、朱への思いと姑姑への忠誠の間で、また、朱のために牡丹を助けることで自分から朱を遠ざけてしまうというジレンマに苦悩する。それでも朱のために行動するというジレンマ。そして、自分の気持ちを素直に表現できないツンデレ。正にハーレムものの正ヒロインキャラだった。その健気さには白々しさを感じるものの、これがヒロインのヒロインたる所以なのである。なお、中盤までは孟だけがハーレムを堪能していたかに思われたが、気付けば多くの女たちが朱に惹かれており、きっちりとハーレムものになっていた。

牡丹を救出にいくシーンはロールプレイングゲームのようなのだが、CGの質感はかなりチープである。また、動きがもっさりとしていた。対人戦の場面でも“仙女”たる華奢な美女たちの魔法戦には迫力がなく、山賊の孟や寺院唯一の男である眉なし戦士の動きにもキレはなかった。これが作品を各ジャンルに全力投球のカオスとし得なかった大きな要因かと思う。普通にショボくて退屈である。

「Men must die!」を唱える姑姑。彼女は仙女たちを救うために“苦しみのない世界”を作り上げたのだが、その姿はかつて男にこっぴどく捨てられて先鋭化した中年オンナのそれであり、坊主に「誰と戦ってんだ?」と“シャドーボクシング”を諌められるシーンは大爆笑だった。これで彼女が改心して大団円を迎える感動の展開なのだが、三十郎氏にはコントにしか思えない。こういう時、作品の意図通りに観た上で「つまらない」と評価すべきなのか。それとも、そのバカらしさを笑ったことを「楽しかった」と評価すべきなのか。迷う。

「AKBグループで」と評した理由がもう一つある。終盤に仙女たちが陣列を整えて姑姑に立ち向かう場面があるのだが、“センター”の芍薬や“選抜メンバー”を除いた後方のメンバーたちはそれほど美人というわけではなく、格差と序列を感じさせた。

本作は真っ当なロマンスを軸として健全な描写ばかりだったが、この内容だと、原作の方はもっと桃色だったりするのだろうか。