オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『親しい隣人』

Unter Nachbarn, 92min

監督:ステファン・リック 出演:マキシム・メーメット、チャーリー・ヒュブナー

★★★

概要

隣人と飲んだ帰りにひき逃げする話。

短評

隣人がクレイジーサイコホモっぽいドイツ映画。思わず苦笑いしてしまうようなツッコみどころはあるものの、プライムビデオが仕入れてくる“どこで見つけてきたのか分からない映画”の内、ヨーロッパ映画ならばハズレが少ないパターンに漏れなかった。そこまでスリルがあるわけではないが、色々と板挟みな面白い状況づくりには成功している。もう少しブラック・コメディっぽく演出してみてもよかったかもしれない。

あらすじ

新居に引っ越してきた記者のデイビッド。工具を借りにいったら家具の組み立てまで手伝ってくれた隣人ロバートと親しくなり、二人は終末の夜にバーへと飲みに行く。しかし、その帰り道、デイビッドがバーで知り合った女ジャニー(カタリーナ・ヘイヤー)を轢いてしまい、看護師のロバートが「もう手遅れ」だと言うので、二人はその場から逃亡する。

感想

逃げたところまではよかったが(よくはないが)、翌日、デイビッドが事故の記事の担当に指名され、ジャニーの姉ヴァネッサ(ペトラ・シュミット=シャラー)と知り合う。彼は事故のことを忘れてしまいたい一方で、(男なので)美人の魅力に抗うこと叶わず親切にしてしまい、やがて関係を持つ。その一方、デイビッドに気付かれぬよう証拠隠滅を図るロバートは、“初めて友達のできたぼっち”そのものであり、デイビッドとヴァネッサの関係に嫉妬する。ここに奇妙な三角関係が成立し、それぞれに「お前ら、何やってんだ……」と言いたくなるような滑稽な行動を見せてくれる。

陽キャに話し掛けられて舞い上がってしまった陰キャ──これがロバートを言い表すにはピッタリの表現かと思うが、その例に漏れず、彼は“友人”を“親友”なのだと思い込む。そうすると行動がどうしても“愛情”っぽくなる。“友達思い”の範疇を超えてしまう。女が同じことをすると「クレイジーサイコレズ」と呼ばれ、一部界隈では大変に喜ばれるのだが、男──それも巨漢で口下手なぼっちの場合、気持ち悪さばかりが前面に出てしまい、“サイコ”の部分だけが強調される結果となる。

かくして誕生したクレイジーサイコホモだが、「サイコパス」と呼ぶには計算高さが弱い。事故現場で即座に逃げることを決め、事故車両を湖に沈め、アリバイ用のストーリーを用意する。終盤の行動から見てもロバートの社会病質性は否定すべくもないと思うが、そのどれもがかなり杜撰である。彼がせっかく用意した偽の行動歴はあっさりとヴァネッサに見破られるのだが、彼女が少し調べれば分かるようなことをどうして警察は見逃しているのか。クライマックスの現場にロバートがいた理由も不明なのに、警察は彼を褒めている場合ではない。ちゃんと仕事しろ。

したがって、“恐怖の隣人”的な魅力だけで映画が成立しているわけではない。そもそも事故を起こしたのはデイビッドであり、ヴァネッサとの間で板挟みになっているのも彼が性欲に屈したからである。つまり、自業自得である。「お前は加害者のくせに何を被害者ぶっているんだ」と言いたくなるような状況なのに、ロバートが気持ち悪いので少し同情してしまう。しかし、完全に同情できるわけでもないため、ロバートに対して「もっとやれ」という気にもなる。一応はスリラー映画のはずだが、このブラック・コメディのような意地悪な状況設定が物語のミソだったかと思う。

ロバートに「全部バレるぞ」と注意され、急にヴァネッサに冷たくなるも、「あなたが好きなの」と言われてあっさり翻意するデイビッド。しかし、ロバートに「俺に借りがあるよね?」と言われ、やっぱり彼女と別れようとするデイビッド。どれだけ意志の弱い男なのだ。そもそも彼が事故の際に通報していればこんなことにはなっておらず、全てはこの主体性の欠如に原因があると言えるのかもしれない。

ヴァネッサ役のペトラ・シュミット=シャラーが『アンノウン』の美人入管職員だった(美人をメモしておくとこういう時に役に立つ)。彼女は「明日、妹の葬儀なの」とデイビッドの家を訪ね、交わるのだが、チラリとだけおっぱいが見えている。どうせ見せるのなら(“どうせ脱ぐのなら”とは意味が違う)、もっとしっかりと見せてくれればよかったのに。

ロバートは自分が看護師だと言うが、デイビッドが働いている日中も甲斐甲斐しく料理をしていたりするし、働いている様子は見られない。

親しい隣人

親しい隣人

  • 発売日: 2021/02/13
  • メディア: Prime Video