オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『PROSPECT プロスペクト』

Prospect, 99min

監督:ジーク・アール 出演:ソフィー・サッチャーペドロ・パスカル

★★★

概要

とある惑星の鉱石採取作業。

短評

地味なSF映画SF映画としては明らかに低予算であることが伝わってくるスケール感だし、劇中の世界が現実の何かしらの隠喩になっているようなストーリーでもないように感じられた。ただし、細かい描写に“それらしさ”を演出するための工夫があり、それなりに楽しめる一作だった。“ただの森”でしかない舞台には粉塵が舞っており(これがストーリー上でも重要な役割を果たす)、「非地球的」とまでは言わないが、幻想的な雰囲気を漂わせている。

あらすじ

惑星“グリーン・ムーン”へと貴重な鉱石の採取にやってき父娘。しかし、父デイモンが同業者と対立して命を落としてしまう。娘(ソフィー・サッチャー)はその場から逃げ出し、惑星から脱出しようとするものの、ポッドが故障。彼女を追ってきたエズラペドロ・パスカル)とやむなく行動を共にすることとなる。

感想

あらすじには娘の名前が「シー」と紹介されているが、劇中ではこれが一応伏せられていて、彼女がエズラに対して心を開いたことの象徴として自分の名を名乗るシーンがある。つまりは、そういう話である。エズラは父の仇だが、実際に父を殺したのは彼の仲間で、父にも彼らの鉱石を横取りしようとしたという落ち度があった。「このおっさんは別にそれ程悪くないよね」と観客が感情移入しやすい要素を用意した上で、シーとエズラに擬似親子関係を築かせる話である。父親が身勝手で、娘の趣味もまるで理解してくれないというのは過剰な“下げ”だったかと思うが、話自体はシンプルである。

このシンプルな物語の舞台が地球外である必然性は特に感じられないし、また、設定を利用して何かを隠喩的に表現しているようにも思えない。したがって、“話”自体は“普通”としか言えないが、本作の魅力はそのディティールにあると言えよう。これは小説ではなく映画なのである。

生活感の漂うオンボロポッドの中でシーが書いている文字が謎の言語だったり、“オーレラック”と呼ばれる鉱石を地中の生物的な何かから特殊な過程を経て取り出したり。“非地球的”な、独特のディティールが積み重ねられていく。

グリーン・ムーンの大気は汚染されており、人間は防護服なしに活動することができない(その割には雑なテント内でヘルメットを脱げるが)。側にいる人とも通信機を利用して会話するのだが、その無線チャンネルに割り込んで音楽を流す攻撃があるのが面白かった。なお、劇中で流れる(特にシーが好んで聞いている)音楽が昭和歌謡的な何かなのだが、これは“非地球的”ということなのか。

他にも、“セイター”と呼ばれる怪しげな信仰集団がいたり、“箱詰め”なる謎の刑罰が存在したり、謎言語を話す女(シェイラ・ヴァンド)がいたりして、我々の住む世界とは異なる世界が舞台であることが伝わってくる。それは決して未知の映像体験ではないものの、“SF映画”であると認識するには十分なものである。鉱石買取のポイント制のように、設定がちゃんと作り込まれていそうな描写が垣間見えるのも高ポイントだった。

大筋としては“おっさんと美少女”による叙情的な物語なのだが、父と同業者の対立、シーを追ってきたエズラ、信仰集団による「娘を寄越せ」との要求、そして傭兵と対立と、興味を繋ぐためのスリリングな場面も多数ある。そのおかげで「地味で退屈」という印象を回避できていたように思う。

Prospect プロスペクト(字幕版)

Prospect プロスペクト(字幕版)

  • 発売日: 2019/09/06
  • メディア: Prime Video