オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アニマルズ 愛のケダモノ』

Hounds of Love, 108min

監督:ベン・ヤング 出演:エマ・ブース、アシュリー・カミングス

★★★

概要

女子高生誘拐監禁強姦事件。

短評

オーストラリアで発生した実在の事件をモデルとした一作(元ネタは『デヴィッド&キャサリン・バーニー事件』)。女子高生の誘拐監禁事件を扱うとなれば、普通は被害者の“女子高生”こそが主役のはずなのだが、なんと“犯人夫婦の妻”の方に強くフォーカスされているという奇妙な一作である。たとえば『ガール・イン・ザ・ボックス』でもそうだったように、犯罪者カップルの男が“新しくて若い女”を手に入れれば必然的に関係が崩壊するという過程を丁寧に描いており、フィクションを含めて数多く存在するこのジャンルの映画としては新鮮だった。

あらすじ

1986年12月。深夜に家を抜け出してパーティーへと向かう道中、車に乗った中年夫婦から「クサ買わない?」と声を掛けられた女子高生のヴィッキー(アシュリー・カミングス)。警戒を示しつつも彼らの車に乗り、「準備する間、一杯飲んで待ってて」との誘いに応じてしまった彼女は、薬を盛られてフラついたところを狙われて拘束されてしまう。誘拐の目的は身代金かと思われたが、ヴィッキーに盛る犯人夫婦の夫ジョンに対して妻エヴェリン(エマ・ブース)が嫉妬し、関係が綻びはじめる。

感想

人間関係の紹介が上手い。ヴィッキーの拘束に成功したところでジョンとエヴェリンが盛りだし、そのまま彼女の目の前で口淫を開始する。これはなかなかの変態カップルである……と思ったら、ジョンとエヴェリンの間には明らかな上下関係があることが示唆され、夫の支配下にあるエヴェリンには前夫との間に子供がいて、彼女に会えなくて精神的に参っていることも分かってくる。家の中では絶対君主として偉そうに振る舞うジョンだが、外に出れば借金取りに顔が上がらない情けない男で、一筋縄ではいかない歪んだ関係こそが本作の肝となるのである。

夫の支配を受けるエヴェリンは彼に精神的に依存しており、若い女に惹かれる夫に嫉妬しながらも、彼から「お前が一番だよ」「俺にはお前しかいない」と甘言を囁かれればコロッといってしまう“チョロい女”である。そうして「三人で楽しもうぜ」という誘いにも乗っかるわけだが、最終的には彼女がジョンを刺殺してヴィッキーは逃亡に成功するのであ。つまり、本作で描かれている“男からの解放”は、ヴィッキーというよりもエヴェリンのものなのである。これは新しいような気がする。その結末は、エヴェリンが「あ、こいつ、どうしようもないな……」と察してしまうものなのだが、彼女の“違和感”が慎重に描かれているため、説得力はあった。

エヴェリンの方が主役のためなのか、ヴィッキーが女子高生(役)のためなのか、前者はおっぱいから陰毛までバッチリ映るのに、後者は入浴や(ウンコを漏らす)強姦の場面でも“おっぱいなし”だった。彼女のムッチリとした体つきが非常に魅力的だったので、作品の趣旨からはズレるものの、正直に言って、見たかった。“北半球”やパンチラだけでは満足できない。

映画冒頭のスローモーションが印象的である。“ネットボール”という競技を練習中の女子高生たちの、胸を、脚を、じっくりねっとりと捉えており、これは正に“物色”と呼ぶに相応しいものだった。夫妻の危険性や異常性を示唆する描写ではあるものの、非常にフェティッシュであるため、それを無視すれば“響く”と思う。それ以外にもスロー物色のシーンがあるのだが、ここでは少女や幼女以外におっさんの弛んだ腹も映っている。意図が分からない。

ジョンが借金取りに追われていることからも分かるように、誘拐は本来身代金目的のはずなのだが、何故かヴィッキーは母親(スージー・ポーター)に「アデレードで元気でやってるから」と手紙を書くように強要され、そこに記された暗号を恋人が解読して居場所が発覚する。どうやって身代金を取るつもりだったのだろう。

『TEEN DORM PARTY』というタイトルのビデオがあった。また一つ賢くなった。

アニマルズ 愛のケダモノ(字幕版)

アニマルズ 愛のケダモノ(字幕版)

  • 発売日: 2019/04/01
  • メディア: Prime Video