オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ファイナル・アワーズ』

These Final Hours, 86min

監督:ザック・ヒルディッチ 出演:ネイサン・フィリップス、アンガーリー・ライス

★★★

概要

人類滅亡までの12時間。

短評

隕石衝突によって人類滅亡まで12時間と差し迫った状況における人々の姿を描いたオーストラリア映画。(滅亡原因は異なるが)『渚にて』の翻案ものということになるのだろうか。絶望による暴徒化の様子は控えめに抑えてパニック映画になることを避け、人々が避けられぬ死をどうやって受け容れるのか(または受け容れられないのか)を静かに描き出していた。少々地味ではあるが、「自分ならどうするだろう」と考えてみる楽しみを与えてくれる一作である。

あらすじ

巨大隕石の衝突により人類滅亡まで12時間と迫る。浮気相手ゾーイ(ジェシカ・デ・ゴウ)との最後の一戦を終えたジェームズは、彼女に促されるままに恋人ヴィッキー(キャスリン・ベック)の待つパーティー会場へと向かう。その道中、ローズ(アンガーリー・ライス)という名の少女がロリコンに拉致されている場面を目撃し、彼女を救出した後に、置き去りにすることもできずにパーティー会場へと連れて行く。

感想

終末の迎え方は様々である。ジェームズのようにクスリで気を紛らわさなければやってられないとパーティーに行く者がいれば、既に気が狂って暴徒化している者もいる(街灯に吊るされている人の描写が良い)。ジェームズに成敗されるロリコンのように本懐を遂げてから死のうとする者、「家族を苦しませたくない」と悩む父親、助からない程度のシェルターで現実逃避する者、そして、既に死んでいる者。このどれもが十分な説得力を有しており、淡々とした雰囲気でありながらも、見応えのあるドラマが成立していた。

その中でも特に印象的だった人が二人。一人目は、「家族を苦しませたくない」と悩む父親。彼はジェームズと出会った時、「自分にはできないからどうか頼む」と言い出す。彼の気持ちも分からなくはないが、ジェームズだってそんなことはしたくないわけで、断られると「許すと言ってくれ」と頼むのが印象的だった。ジェームズにそんなことを言ってもらったところで何になるというのか。たとえ何にもならないとしても、そんなちっぽけな“救い”が必要なのである。この気持ちも分かる気がする。

二人目は、ジェームズと共に父親の元を目指すローズ。彼女の父は既に自決していたのだが、それならばとジェームズたちと最期の時を過ごすことはなく、“父と共に”それを迎えるのである。なんと心の強い少女だろうか。ジェームズが死体を見せないように配慮したのに、「自分の目で確かめないと」と言える彼女の逞しさである。その後に見せる彼女の涙が本作のハイライトと言って差し支えなかろう。(ジェームズをゾーイの元に向かわせるという作劇上の都合はあれど)“死に方を自分で選ぶ”という要素を彼女が最も強く持っていたように思う。

なお、ローズを演じるアンガーリー・ライスは、本作で劇場映画デビューしている。『ナイスガイズ!』の彼女も可愛かったが、本作の彼女もとっても可愛かった。残念だったな、ロリコン!お前らは苦しんで死ね!ジェームズのキャラクターは特に好きではないが、これだけはよくやったと思う。

「クスリやってファックしましょ」「(助からなそうな)シェルターで生き残りましょ」と死の恐怖に耐えられない恋人ヴィッキーを諦め、最後の一戦の後に妊娠を告げた浮気相手ゾーイを選ぶジェームズ。彼が彼女の元に辿り着いた時、「触るな!置き去りにしたくせに!」と痴話喧嘩していて笑った。そんな見苦しい二人を飲み込もうとする衝撃波は、ゾーイの言葉の通りに美しかった。なお、パーティー会場では雑におっぱいが放り出されているが、ゾーイの最後の一戦は“微妙に見えない”。

さて、自分が同じ状況に置かれたらどうするだろうか。「睡眠薬でも飲んで知らない内に死にたい」なんて考えてみたりするが、実際にどうするかは、その時になってみないと分からないだろう。

ファイナル・アワーズ(字幕版)