オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ドント・イット』

A Dark Song, 99min

監督:リアム・ギャビン 出演:キャサリン・ウォーカー、スティーヴ・オーラム

★★★

概要

オカルトの儀式。

短評

二つのヒット作のタイトルを合体させて原題からかけ離れた(「イット」はピエロなのかフォローしてくるのか)、そして文法的に意味の通らない邦題を持つホラー映画。「〇〇してはいけない」というルールも、“それ”という要素もほぼなく、純度100%のハズレの予感しかない一作だが、意外に評価が高そうなのを不思議に思って観てみたら、これが意外と面白かった。多くの映画では“一部”でしかないオカルトの儀式を全面的に取り上げており、“ガチなのかフェイクなのか”という微妙なラインからの恐怖の感じさせ方が良かった。ワースト邦題の一つに挙げてもよいだろう。責任者はどこか。

あらすじ

その道の専門家ソロモンに依頼し、とある魔術の儀式に臨むソフィア(キャサリン・ウォーカー)。彼女は自身の不注意から一人息子ジャックを亡くしており、彼と話すことが目的だとソロモンには説明していたが、実は別の目的を持っていた。準備が整い、数ヶ月にも及ぶ“苦行と性交の儀式”が幕を開けるが、一向に何かが起こる気配はなく、ソフィアは苛立ちを募らせていく。

感想

本作で描かれているオカルト儀式は、“アブラメリン”というものである。日本語版Wikipediaに頁があるくらいなので、きっと“その筋”では有名なものなのだろう。毒キノコを食べて心身を浄化し、床に魔法陣を描き、絶食し、水責めされ……といった具合に“それっぽい”儀式が進行していく(アブラメリンの内容に忠実なのかは不明)。この過程をじっくりと見られること自体が物珍しくて楽しいのだが、専門家ソロモンの胡散臭さや三十郎氏がその手のものを全く信じていないこともあり、この時点では「どちらの方向性の映画なのか」という疑い半分で映画を観ることになる。

ソロモンが事前に「苦行と性交の儀式」と告知していた通り、オカルトというか“カルト”にありがちなエロ要素が挿入される。しかし、実際の行為を伴わないそれがソロモンの個人的な目的であったことが判明し、いよいよこのハゲデブに対する信頼が失われる(ソフィアは尿入りスープで復讐。人によってはご褒美か)。

ソフィアが「何も起きねえ!」と当たり散らす一方で、儀式には少しずつ成果らしきものが現れる。彼女が「病気が心配だからイヤ……」と言いながらも必死に飲み干したソロモンの血液が復活していたり、天井から何かが降り注いできたり。この焦れったいペース配分にホラー映画らしからぬ儀式のリアリティを感じられる。しかし、これらはソロモンの“演出”で、ソフィアが“声”を聞くようになるのも追い詰められた精神状態の影響であると疑って然るべきだろう。

そうした“疑いの目”を持ちながら儀式を様子を眺めていくわけだが、ソフィアが暗闇に浮かぶ“タバコの火”を目撃する場面には大いにゾッとさせられた。これも他と同じく“疑わしい奇跡”であったとしても、確かに“何かが起きている”という恐怖を感じる瞬間だった。オカルト全般に対する野次馬的な興味は持ちつつも、その信ぴょう性については一切評価していない三十郎氏が怖がれたのだから、それだけでも合格点をあげたい。

一人息子ジャックは儀式の犠牲となって殺されており、ソフィアの真の目的は“復讐”にあった。ソロモンの死をもって儀式は失敗し、諦めようとするソフィアだったが、儀式は完了するまで終わらない。その影響なのか、(白魔人的)悪魔的な連中に冥界的な異空間へと引きずり込まれてしまうソフィア。ここで彼女は自分が本当に必要としていたことを理解する。そのキリスト教的な意義付けについては知識不足でよく分からないが、話は綺麗にまとまったと思う(偽ジャックのさり気ない台詞も効いてくる)。宗教的な理解を抜きにしても、結論には納得できる。なお、ドーンッと現れる天使様の「ドヤァ!」なビジュアルには失笑した。

本作も盛大な邦題詐欺なのだが、『ドント・イット THE END』という本作とすら無関係な映画があるらしい。

ドント・イット(字幕版)

ドント・イット(字幕版)

  • 発売日: 2019/04/01
  • メディア: Prime Video