オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『禁断の惑星』

Forbidden Planet, 98min

監督:フレッド・M・ウィルコックス 出演:ウォルター・ピジョンアン・フランシス

★★★

概要

惑星アルテア4の見えない怪物。

短評

SF映画の古典とされる一作。本作に登場するロボットのロビーというのが、後続の作品に大きな影響を与えたそうである。映像的には現代の観客を満足させられるものではないし、話も少々盛り上がりに欠けはするものの、“宇宙を舞台とすることで人間の本質を浮かび上がらせる”という試みには光るものがあった。それほど胸躍るわけではないが、観ておいて損のない一作だろう。

あらすじ

ハイパードライブの開発により光速航行が可能となり、宇宙移民が始まった2200年代。アダムス船長率いるC-57-Dは、連絡の取れなくなった移民団の調査のためアルテア4を訪れる。そこには移民団の生き残りであるモービアス博士、娘のアルタ(アン・フランシス)、ロボットのロビーがいたが、博士は「引き返せ」と強く警告する。警告を無視してアルテア4に降り立ったアダムスたちだったが、そこには見えない怪物が待ち受けていた。

感想

博士曰く、「アルテア4には人類の知性を遥かに凌駕するクレルという生命体がいたが、2000世紀前に忽然と姿を消した」「私は彼らの残した施設やデータを利用して生活している」とのこと。クレル人絶滅の謎と見えない怪物が最後に繋がる、ある種のミステリーとなっている。「イド」と呼ばれる怪物の正体は“潜在意識の具現化”であり、これはクレル人が開発した装置によって出現したもの。高い知性により争いをなくしたクレル人も、その奥底には“獣”が眠っているという“どうしようもなさ”は、我々人類にも共通している。これは現代においても十分に示唆的な結末だったように思う。

アルテア4の風景は明らかに“絵”であり、あまりクオリティが高いとは言いづらいのだが、7800階層に及ぶという施設の“奥行き”の錯視は上手くいっていた。それを俯瞰で捉えた映像は『スター・ウォーズ』のデス・スター内部を想起させ、他の部分でも同作への大きな影響が窺える。たとえば、OPクレジットの黄文字にはじまり、ロビーはC-3POR2-D2を一台で兼ねたロボットという感じ、3Dイメージはホログラム、複数層になっている扉が閉まる演出や、それを“熱”を利用して破る描写はEP1におけるクワイ=ガン・ジンの通商連合内での行動そのものだった。宇宙で正体不明の怪物に襲われるという設定そのものもそうだが、恐らくは三十郎氏の理解以上に後続作品に影響を与えた一作なのだろう。怪物との対決シーンは、時代を考慮すれば及第点といったところか。

地球人のことを知らずに育ち、「エロい格好しやがって!」「こっちは平均24.6才の男を18人も抱えてるんだぞ」とアダムスに怒られるヒロインのアルタが美人だった。彼女が“裸”で泳ぐシーンがあるのだが、肌色の水着が見えないようにもう少し工夫できなかったのか。見せられないのなら観客の想像力をかき立てろ!彼女を巡る男たちの戦いが白熱することはなかったが、一応は人間の“本能”という意味での結末に対する伏線的存在だったと受け取ってよいのか。あるいは、映画界の“ノルマ”としての登場だったか。

博士が「地球時代の私のIQは183」、船医オストローが「私だって161なのに」と謎のマウントバトルを繰り広げ、続くアダムスには「船長は大きな声が出せればいいから」と99パーセント嫌味でしかない慰めの言葉を掛けるシーンが笑えた。この知性の測定装置もチャチではあるが、レトローフューチャー的な味はある。

禁断の惑星 (字幕版)

禁断の惑星 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video