オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『サファリ』

Safari, 90min

監督:ウルリヒ・ザイドル 出演:ゲラルド・アイヒンガー、エヴァ・ホフマン

★★★★

概要

トロフィーハンティングの魅力。

短評

パラダイス三部作のウルリヒ・ザイドルが手掛けたドキュメンタリー映画。同シリーズと同じく、シンメトリーの構図を多用して精緻に作り込まれた画面の外観上のオシャレさの底に潜む意地悪さが微塵も隠れていない一作だった。淡々と映し出される狩猟や獲物の解体の様子、自己弁護に終始するハンターたちへのインタビュー。これらを見せられれば、誰だってトロフィーハンティングに対して嫌悪感を抱くことになろうが、きっと実際にやってみれば楽しいに違いない。その皮肉な事実から浮かび上がるのは、本作の批判の対象が“行為”ではなく“人間という生き物”だという最上級の意地悪さなのである。

あらすじ

アフリカのサファリには金を払って合法的に野生動物を狩る“トロフィーハンティング”という観光資源がある。ハンターたちが獲物を撃ち抜き、記念撮影し、感慨に浸る一方で、地元の黒人スタッフたちは淡々と“肉”を処理していく。本作は、その様子とハンターたちへのインタビューを収めたドキュメンタリーである。

感想

ハンターたちは「殺しは狩猟の小さな一部で自然なこと」「合法行為。地元の収入源としても必要」「苦しませたくないから綺麗に一撃で仕留めたい」といった自己弁護にもならない綺麗事を並べる一方で、「“殺す”ではなく“仕留める”と表現するべき」と言ってみたりと、どことなく後ろめたさが見え隠れする。どんな言葉を並べようと、“楽しみのために殺す”ことが倫理的に否定されるべきであることは、ハンターたちとて理解しているはずなのである。インタビュアーがどんな質問をしたのか明示されていないので、何らかの誘導があるものとは察せられるが、ハンターたちが“勝手に喋ってボロを出す”構図がなんとも皮肉だった。

殺した獲物に対して「頑張ったな、友よ」と語りかけるハンターが、岩で顔の向きを整えたり周囲の草を刈ったりして、嬉々として記念撮影に臨む。「苦しませたくないから一撃で仕留める」と言っていた男が、瀕死のキリンが失血死するのを何もせずに見守る(頭を撃って即死させれば剥製にできなくなるからだろう)。これら滑稽な姿を見れば、「合法なんだから釈明の必要なんてない」と開き直る男の方がむしろ清々しいとさえ思えてくる。

本作を観れば、トロフィーハンティングがとても“許し難い行為”に思えるに違いない。しかし、我々がテレビゲームやアクション映画を“代償行為”として利用していることからも分かる通り、ヒトが“狩り”に対する欲求を本能的なレベルで内包していることは否定し難い。それでは、“食べるため”ならば狩猟が許容されるのかと言えば、それは人間側の勝手な都合であって、“殺す”ことには何の違いもない。生きるためならば許されるのであれば、地元スタッフは観光客に殺させて生活費を稼ぎ、その肉を食べているのだから、トロフィーハンティングには何の問題もないことになるのである。

トロフィーハンティングの本質的な問題は、それが“ダメかどうか”ではないように思う。結局のところ、我々人間は、他の命を奪って生きる生き物なのだ。食肉だって言ってみれば“楽しみ”のためであって(現在は栄養的な理由もあるが、人工培養肉が完成すれば完全なる嗜好品となるだろう)、楽しみのために(間接的にではあるが)殺していることには何の違いもない。それはイヤだとヴィーガンを志す人もいるのだろうが、「いい人でいたい」と思うこと自体が人間の本質を否定する無駄な足掻きであるように三十郎氏には思われるのである。善いのか悪いのかを“規定”する人間自体が、所詮は“そういう生き物”なのに、そこに何か意味があるのかと。殺される動物に同情する一方で、それが自らを動物よりも“上の存在”に位置づけるための行為でしかない矛盾。

本作にはキリンの解体シーンが含まれている。非常にショッキングかつグロテスクな光景である。記念撮影を終えたハンターたちは、この“汚い作業”を地元スタッフに任せ、“美しい想い出”と共に去っていく。この差別的な構図には(明らかな“意図”があるのに「ここの黒人は良い奴らだよ」と語るハンターたちの不用心さたるや)、“屠畜”という作業から距離を置いて“商品”として食肉にありつく我々自身が重ねられ、トロフィーハンティングという異常に思える行為が我々と無関係ではなく、改めて人間という生き物の本質が浮き彫りにされるのだった。また、解体の映像に対しては「凄いもの見せられた」という感想を抱き、別の意味でも殺しを“楽しみ”のために享受してしまったことになる。人間も同じように“解体”できるのだろうな。

サファリ(2016)(字幕版)

サファリ(2016)(字幕版)

  • 発売日: 2018/10/10
  • メディア: Prime Video