オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ザ・ホスト 美しき侵略者』

The Host, 125min

監督:アンドリュー・ニコル 出演:シアーシャ・ローナン、ジェイク・アベル

★★

概要

寄生型エイリアンが人間と生活する話。

短評

今でこそ出演作が軒並みオスカーにノミネートされるような“演技派”としての立ち位置を不動のものとしているシアーシャ・ローナンだが、彼女にもヤングアダルト小説の安っぽい映画化作品でキャリアを浪費していた時期があることが分かる。「主人公の女を複数の男とイチャつかせるためだけに適当にSFっぽい設定をこしらえてみました」というのがありありと伝わってくる一作だった(原作者が『トワイライト』シリーズと同じだと知れば納得だろう)。シアーシャにとっても監督のアンドリュー・ニコルにとっても、キャリアの汚点と呼ぶべき駄作と切り捨てて差し支えない。

あらすじ

地球から争いや飢餓が消えたが、それは人類の功績ではなかった。“ソウル”と呼ばれる寄生型のエイリアンが地球を侵略し、ほとんどの人間たちは彼らに肉体を乗っ取られたのだった。レジスタンスとして戦うメラニーシアーシャ・ローナン)の身体にもワンダラーのソウルが埋め込まれるが、肉体に残存するメラニーの意思が激しい抵抗を見せる。

感想

自分の肉体を乗っ取ったワンダラーに激しく語りかけてくるメラニー。ちょっとした統合失調症的描写である。物語の大まかな流れは、宇宙人が地球人との交流を経て「地球って素敵なところね」と考えを改める紋切り型。しかし、ワンダラーの思考に“宇宙人的”なところが全くないため(これは他のソウルも同じ)、メラニーに影響を受けて同胞を裏切ったり、地球人と仲間になっていく“未知との遭遇”には何の示唆的な要素も感じられない。また、結論ありきで話が進むため、展開には何の説得力もない。

たとえ監督にアンドリュー・ニコルを招聘しようとも、SF要素が所詮は“それっぽい舞台設定”であることは隠しきれていない。描きたいのは男女のアレコレなのである。メラニーにはジャレドという恋人がいて、ワンダラーを上手く彼らレジスタンスのアジトへと誘導する。そこで“ワンダ”と人間っぽく改名されたワンダラーがイアンという別の男と恋に落ち、奇妙な四角関係が繰り広げられるのである。「イアンとキスするな!」と喚くメラニーメラニーの声が聞こえなくなったので復活させるためにイアン、ジャレドと順番にキスしまくるワンダ。一体の何の三文芝居を見せられているのかと思った。

ただし、明らかに甘ったるいラブストーリーが本質ではあるものの、SF映画監督として名高いアンドリュー・ニコルがそれに満足しなかったのか、そのラブストーリーすらも中途半端というのが本作の残念極まるところだろう。そこに残されたのは、シアーシャ・ローナンが可愛いという本作である必要が全くない事実だけである(ダイアン・クルーガーと監督の妻でちょい役のレイチェル・ロバーツも美人だった)。しかし、ブラジャーをつけたままの“大胆なラブシーン”のようなヌルい演技を見せられても残念なだけである。

最後はワンダが「人間を乗っ取るなんてできないわ」と自己犠牲を申し出るも、仲良くなった地球人たちが「君が必要なんだ」と彼女を救うテンプレ展開。ワンダにはメラニー以外の肉体が必要となるわけだが、ここで「ソウル抜いても意識が戻らなかった人(エミリー・ブラウニング)を再利用するのはOKだよね」という雑な論理が“いい話”扱いされている結末には違和感しかなかった。

若くして有名になりながらも“ショボいティーン向け映画”でキャリアを浪費している女優と言えば、クロエ・グレース・モレッツが思い浮かぶ。せっかく“作品を選べる立場”になったはずなのに俳優としての価値を下げるような作品にばかり出てしまうのは、やはりギャラが良いからなのだろうか。果たして、彼女はシアーシャのように脱皮できるのか。

ザ・ホスト 美しき侵略者(字幕版)

ザ・ホスト 美しき侵略者(字幕版)

  • 発売日: 2014/12/03
  • メディア: Prime Video
 
ザ・ホスト 1 寄生

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