オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ゾンビの怒り』

La rebelión de las muertas(Vengeance of the Zombies), 88min

監督:レオン・クリモフスキー 出演:ポール・ナッシー、ロミー

★★

概要

インド人がゾンビを生み出す話。

短評

ポール・ナッシーが一人三役を演じたゾンビ映画。スペインのホラー映画界では超大御所らしく、三十郎氏ににとっては『黒騎士のえじき』『モンスターパニック 怪奇作戦』に続く三作目の出演作となるものの、いまいち彼の魅力が分からないままである。ホラー映画のはずなのにBGMにフュージョン・ジャズを使っていて怖さ皆無だし、単純なストーリーの割には(集中できなくて)話について行きづらい。笑えばいいのだろうか。特殊メイクの出来が良かったり、本家たるブードゥー的なゾンビについての認識が逆に新鮮だったりはしたが……。

あらすじ

グロリア・アーヴィングという女性の死体が何者かによって蘇生させられ、遺体を荒らそうとしていた泥棒を殺害する。グロリアの死にショックを受けた従姉妹エルヴァイラは、インドからやって来たグルのクリシュナ(ポール・ナッシー)の儀式に魅入られ、彼の屋敷を訪れるのだが、そこに待っていたのはブードゥーの秘術で復活させられたゾンビたちだった。

感想

どうしてハイチの土着宗教であるブードゥーの秘術をインドはベナレス(現ヴァラナシ)出身のクリシュナたちが知っているのか不思議に思うところではあるが、これはひとまず(そして永遠に)脇に置いておこう。この謎設定のおかげで二つの事実に気付くことができた。

一つ目は、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』以降のゾンビ映画で確立されてきたゾンビのイメージが、本来のブードゥー的なそれとはかけ離れているという点。一般に「ゾンビ」と言えば、肉を食らうために人を襲い、感染によって数を増やしていくイメージがある。しかし、ブードゥーにおけるゾンビとは、儀式によって誕生するものであり、生み出した主人に使役する存在なのである。そう言えばそうだった。知っていたはずなのに忘れていたことを思い出させてくれた。

二つ目は、スペイン人のポール・ナッシーがインド人を演じてもそれ程違和感がないということ。インド人は肌の色以外の顔の作りは白人に似ているのである(ハイチの黒人を演じなかった理由はこれか)。「エルヴァイラにクリシュナを寝取られた!」と痴話喧嘩を始めるカーラ役のミルタ・ミラー(アルゼンチン人)も“それなりにインド人”だった。彼女の全身金粉メイクはインパクトがあった。

エルヴァイラとクリシュナの話が進む一方で、仮面の殺人鬼の暗躍が描かれる(ここがBGMのせいで怪盗映画みたいになっている。交合中に殺されるカップルがいるのだが、上に乗った男が刺された後に、どうして女は自分が殺される順番を待ったのか)。“仮面”ということは(毎回違う仮面を使う謎のこだわり)、犯人は“容疑者”たるクリシュナでないことを意味している。いかにも怪しいクリシュナの背後には彼の兄カンタカ(ポール・ナッシー)がいて、ゾンビを利用してアーヴィング家に復讐を遂げようとしていたのである。ところが、この“復讐”の動機が最高に酷い。彼はベナレスで恋に落ちた娘をレイプして死なせてしまい、その報復で焼き討ちに遭っていたのだが、自分に原因があることは無視して復讐しているというわけである。あまりに理不尽かつめちゃくちゃな理由に笑ってしまった。

まるで怖くはないのだが、カンタカの火傷痕の特殊メイクや“首チョンパ”されたスーザンの人形などはよく出来ていた。ゾンビは顔色が悪いだけで、ゾンビ化していないはずのエルヴァイラまでファンデーションの色のせいでゾンビに見えるという欠点があった。ショボいのか凄いのか分からなくなってしまうが、“鶏の断頭”シーンには本物を使っていて、「この映画のために動物を傷つけていません」に慣れきった三十郎氏には割とショッキングな描写だった。

ゾンビの怒り

ゾンビの怒り

  • 発売日: 2021/02/25
  • メディア: Prime Video