オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ゴーストランドの惨劇』

Incident in a Ghostland, 90min

監督:パスカル・ロジェ 出演:クリスタル・リード、アナスタシア・フィリップス

★★★

概要

引っ越したら変態に襲われる話。

短評

パスカル・ロジェの名前から期待するほどグロテスクではなかったものの、それを予感させる絶望の演出が魅力的なホラー映画。本作が特徴としている話の転換については、過剰なほどの伏線が張られているために意外性はなかったのだが、そこから導かれる絶望に対して高い効果を与えていたように思う。

あらすじ

ポリーンと姉ヴェラ(テイラー・ヒックソン)と共に田舎の一軒家へと引っ越してきたラヴクラフト大好き少女のベス(エミリア・ジョーンズ)。しかし、その夜、道中で彼女たちを追い越したキャンディ屋のトラックに乗った二人組が家に現れ、一家は恐ろしい経験をすることになる。

感想

映画が始まったと思ったら、すぐに“めちゃくちゃ怪しい奴ら”が現れて、そいつらがミスリードでもなんでもなく襲ってくる。「あれっ?展開早くない?」と驚いたら、母ポリーンが敵を刺殺し、「母ちゃん、強っ!」と再び驚かされる。ここまでの話が“悪夢”でありかつ成長して作家になったベス(クリスタル・リード)の小説『ゴーストランドの惨劇』の内容であると判明し、ようやく本編が始まるわけだが、アクション映画のアバンのように“掴み”が上手く、また、物語の背景も過不足なく説明されていた。

作家になって実家を離れていたベスだが、件の事件の影響で精神崩壊したままのヴェラ(アナスタシア・フィリップス)から「助けてぇええ!戻ってきてぇええ!」と電話が掛かってきて帰省する。ヴェラのぶっ壊れぶりを見るのもなかなか怖いのだが、ベスが大人になってからの描写にいくつか気になる点が。彼女は少女時代にヴェラから妄想癖を指摘されていたのだが、その内容の通りのシーンがある。また、少女ベスが読んでいた新聞には「一家の両親を殺し、遺体と娘と暮らしていた殺人鬼」の記事が載っており、これはもうそういうことに決まっている。ヴェラの「戻ってきて」もそういうことである。

この“どんでん返し”には驚くべきなのかもしれないが、上述の通り伏線が周到過ぎるため、「やっぱりそう来たか」くらいのものである。ただし、展開が“やっぱり”であっても、“現実に引き戻される”ことは“逃げ道を防がれる”ことと同義であり、そこから先の絶望感は大変なものだった。真・本編の始まりである。

変態キャンディ屋は、魔女(=オカマ)と白痴ハゲデブ巨人の二人組。魔女がベスに奇妙なメイクを施してお人形と一緒に並べ、それをハゲデブが楽しむ。この時、ハゲデブはすぐにベスに手を出さず、先に“お人形遊び”を始めるのだが、「この後、同じ事が彼女に起こるのだ……」という恐怖の演出としては抜群だった。まだベスは被害を受けておらず、人形の指が焼かれているだけなのに、思わず「いやぁああああ!!」と顔を歪めてしまった。

姉妹の顔の“変形”によってその壮絶さを表現していたものの、暴行シーンの直接的な残虐性はそれ程でもなかった。これは少々物足りなく感じたが、ハゲデブとの体格差を活かした描写には絶望感があった。ベスが失禁する演出があるのだが、これは恐怖を引き立てるというよりも“ご褒美シーン”か。その水滴を楽しんだり、股の臭いを嗅ぐハゲデブのナチュラルな変態感である。

絶望を味わった後の展開については、『BEYOND BLOOD』で学んだ通りだった。やはりラスト・ガール・スタンディングなのだ。「スポーツやってなくても強いんだぞ」というのは、文化系の強がりが少々ダダ漏れている気もするが。

ゴーストランドの惨劇(字幕版)

ゴーストランドの惨劇(字幕版)

  • 発売日: 2020/02/05
  • メディア: Prime Video