オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『驚異の透明人間』

The Amazing Transparent Man, 57min

監督:エドガー・G・ウルマー 出演:マーゲリット・チャップマン、ダグラス・ケネディ

★★

概要

透明人間が核物質を盗む話。

短評

B級SF映画。間違いなく透明人間の登場する映画ではあるのだが、その“申し訳程度感”が凄かった。同じくエドガー・G・ウルマー作品の『宇宙のデッドライン』に見られた“あるのかないのか分からないテーマ”は本作にも共通していて、その点を強く意識していることは分かったものの、割とこじつけ感が強かったように思う。そつなく作られている印象ではあったが、これと言った見所もない。

あらすじ

刑務所から脱獄した金庫破りのファウストに対し、脱獄を手引したクレナー少佐が核物質を盗み出すように要請する。しかし、核物質は政府により厳重に管理されており、その警備を突破するため、ファウストはウロフ博士によって“透明人間化”されるのだった。

感想

『宇宙のデッドライン』でのタイムトラベルの理屈もいい加減なものだったが、本作の透明人間化の理屈も「あれやこれやの放射線をミックスした光線を照射すれば透明になる」というレベルのものである。配合を変えたか何かした光線を照射すれば元に戻るのだが、何もしなくても戻ったり透明になったりする。流石に説得力のあるワクワク感は存在しない。

“透明”の表現は二種類。一つは、人のいない場所で物がひとりでに動くというもの。1960年公開の本作に30年弱先行して『透明人間』が制作されているわけで、特に驚きを感じるわけではないが、基本的なところは抑えていたように思う。ただし、それを活かした大胆な表現は見られなかった。

もう一つは、透明人間に襲われる人。これは完全に“一人芝居”である。透明化されたファウストは明らかに“声”だけしか存在しておらず、こちらは苦笑いレベルのチープなものだった。

透明の表現方法が手抜きに感じられる一方で、なぜか銃撃戦には気合が入っていたりする。映画全体としても(客寄せのためにSF要素を入れた)ノワール映画といった趣があった。ウルマー監督の代表作『恐怖のまわり道』はノワール映画のようなので、本当はそちらの路線でいきたい人だったのかもしれない。

一応透明化して核物質を盗み出した後は、透明能力を使って白昼堂々銀行強盗をし、内輪揉めをして、最後は核爆発が起きて本当に“透明”になる。この雑な爆発オチには思わず笑ってしまったが、「テクノロジーの安易な利用は危険」というメッセージだけは、(たとえ上手く話に盛り込めていなくとも)それを伝えようとする強い意図が感じられた。

驚異の透明人間(字幕版)

驚異の透明人間(字幕版)

  • 発売日: 2021/02/08
  • メディア: Prime Video