オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『宇宙のデッドライン』

Beyond the Time Barrier, 74min

監督:エドガー・G・ウルマー 出演:ロバート・クラーク、ダーレン・トンプキンス

★★

概要

1960年から2024年にタイムトラベルする話。

短評

H・G・ウェルズの『タイム・マシン』を映画化した『タイム・マシン 80万年後の世界へ』と同じ1960年に公開されたタイムトラベル映画。同作の制作を聞きつけて便乗したのかは不明だが、後のSF映画に先行するようなアイディアが見られてたりして、B級映画にしてはそこまで悪くなかったかと思う。ただし、“未来”の描写はやはりショボく、あるのかないのか分からないテーマの掘り下げも浅い。

あらすじ

1960年、サンズ空軍基地から宇宙へと飛び立つ飛行実験に参加したパイロットのアリソン少佐。彼は順調に飛行を続け、速度と高度を上げていったものの、宇宙空間で異常が発生。地上と連絡の取れなくなった彼が基地へと帰還すると、そこには誰もおらず、周囲は荒れ果てていた。周辺を捜索中に少佐を捕らえた人間たちが言うには、そこは2024年の地球なのだった。

感想

(今から3年後の)未来人たちは地下要塞で生活しており、大半が聾唖かつ生殖能力を喪失している。その原因として「放射能」と言葉が登場するので、冷戦的な事情が反映されているのかと思ったが、どうやら地上の核戦争ではなく宇宙から降り注いだ“放射能塵”が引き起こした感染症が原因であるらしい。冷戦というのは、核の危機かつ宇宙開発の時代でもあるため、色々とゴチャ混ぜになったのではないだろうか。当時の恐怖や関心の対象が何となく見え隠れしている。少佐が未来へと飛ぶ理屈なんかは素人にも分かるいい加減なものなのだが、宇宙や放射能がそれだけ“未知の存在”だったということだろう。

地下要塞で生活している未来人の他に、要塞の外には感染症の影響でミュータント(喋れるハゲ)化した人々が跋扈している。彼らを避けるために未来人は地下要塞に引きこもっているのである。なんとなく『地球最後の男(1964年。原作1954年)』を思わせる構図ではないだろうか。「荒廃した世界がどこかと思えば、そこは未来の地球でした」という展開は『猿の惑星(1968年。原作1963年)』、未来人が「感染症とかどうでもいいから俺だけ好きな時代に戻るぜ」と言い出すのは『マトリックス』のサイファーみたいである。

他にも、OPクレジットの流れ方がスター・ウォーズのようだったが、同作は『フラッシュ・ゴードン』へのオマージュでオープニング・スクロールを採用したそうである(『SF映画術』に載っていた)。果たして、本作は『フラッシュ・ゴードン』に影響を与えたのか。今観ても面白い映画ではなかったかと思うが、アイディアには光るものがあった。

地下要塞で唯一の生殖能力者であるトリエンヌ。少佐は彼女との子作りを求められかけるも、そんな嬉し恥ずかしの展開にはならなかった。少しだけ設定を変えればハーレムものなのに。そちらの形でなら是非とも人類の命運を託されてみたいのに。B級映画がエロで客を釣れない時代だったのか……。

低予算ということもあって、あまり“未来”を感じられない一作ではあったが、三角形を多用した地下要塞のデザインは良かった。

宇宙のデッドライン(字幕版)

宇宙のデッドライン(字幕版)

  • 発売日: 2021/02/01
  • メディア: Prime Video