Hellboy, 120min
監督:ニール・マーシャル 出演:デヴィッド・ハーバー、ミラ・ジョヴォヴィッチ
★★
概要
悪魔の子が魔女と戦う話。
短評
2019年のリブート版。設定の説明が親切だったのは良かったと思うが、基本的にはデル・トロ版の魅力を再確認しただけだった。MCUの大ヒットを受けて、それまでダーク路線だったDCEUが“明るくポップなヒーロー映画”路線を採用。これまたヒットしてしまったので、本作もその路線にあやかろうとしたように思われる。その結果、悪魔的なドロドロした部分が消え去ってしまい、ヘルボーイもダークヒーローでなくなってしまっている。取って付けたようなグロ描写が浮いていた。
あらすじ
超常現象調査防衛局(BRPD)のエージェントとして働くヘルボーイ。彼が巨人狩りに向かったイギリスで、かつて人類を絶滅に追いやる伝染病を流行らせようとするもアーサー王に退治された魔女ニムエ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)が復活を遂げようとしていた。ヘルボーイは、霊能力少女のアリス(サーシャ・レーン)やジャガー人間のダイミョウたちと共に敵に立ち向かう。
感想
イギリスのオシリス・クラブで自身の出生の秘密を知ったヘルボーイは、人間側で戦うことに疑問を抱き、巨人狩りに行ったらオシリス・クラブに裏切られ、おまけにニムエからも勧誘を受けと、ちょっとした『マン・オブ・スティール』的な展開を迎える。ただし、“明るくポップなヒーロー映画”でいつまでもウジウジと悩んでいるわけにもいかないため、“それはそれとして”、ニムエと戦ってくれるヘルボーイなのだった。文句を垂れつつもなんだかんだで戦うキャラクター性についてはデル・トロ版と共通していたかと思うが、それを物語の中心に据えたのは失敗だったように思う。
デル・トロ版の二作品には登場しなかった新キャラクターのアリスとダイミョウ。彼らも原作に登場するようなのだが、物語の進行には特に寄与しておらず、人種的多様性のノルマをこなしているだけのように見えた。その代わりに半魚人のエイブがいなくなってしまうのだから、これはちょっとしたネズミ版スター・ウォーズ的なダメ改変である(原作通りなのかもしれないが)。もっと異形の存在に活躍させろよ。
ニムエの見た目は普通の人間だし、魔女バーバ・ヤーガや猪妖精グルアガッハのビジュアルにも既視感しかない。戦いの舞台も平野や森、街中とオリジナリティを発揮するようなものはなく(『ゴールデン・アーミー』はセット造形が凄かった)、ここはデル・トロ版からの落差が特に目立った点である。ヘルボーイのビジュアルのインパクトについては、ロン・パールマンが偉大すぎて比べるのが気の毒である。
アクションシーンについて。CGゴリ押しではあるものの、映像の質自体は及第点に達していたように思う。特に巨人戦のワンショット(風)撮影のシーンは楽しかった。ただし、ジャガー化したダイミョウの動きに“動物的”なものが感じられなかったり、彼とアリスの活躍が、これまた取って付けたようなものだったりして、こだわりの欠如が顕著である。
人間を食らう巨人が豪快に倒され、バーバ・ヤーガは人肉料理を供し、ニムエは使い捨てのグルアガッハを縮めて潰す。他にもグロテスクな描写は多いのだが、全体の雰囲気と今ひとつマッチしていない。ダークな世界観を表現するためのグロ描写が、それ単体として浮いてしまっていて、「(明るくてポップだけど)ダークヒーローの物語なのです」という言い訳にすら感じられた。『ザ・マミー』のように商業的な理由とのせめぎ合いの結果なのか。
色々と続編を匂わせる描写だけは沢山あるのだが、コケたのでないだろう。なくてよい。