オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『人類滅亡計画書』

인류멸망보고서(Doomsday Book), 113min

監督:イム・ピルソン、キム・ジウン 出演:リュ・スンボム、キム・ガンウ

★★★

概要

ゾンビ、ロボット、隕石の韓国製SFオムニバス三篇。

短評

韓国製のSF映画。『パラサイト』以降、三十郎氏も韓国映画をちょくちょくと観るようになったのだが、どうも“血みどろ”な映画にばかり偏っているような気がする。パッと思いつくのは『グエムル』くらいのものだが、韓国映画界ではSFというジャンルがどの程度発展しているのだろう。全三篇の内、ゾンビの話は感染症の流行に関連した社会風刺、ロボットの話はSFらしい問いかけ、そして隕石の話は「なんだかよく分からない」という印象で、いずれもSF映画らしい映像面での魅力には乏しかったものの、二篇目は非常に面白かった。

あらすじ

素晴らしい新世界(멋진 신세계/A Barave New World)』

長期熟成された生ゴミが未知の進化を遂げ、その生ゴミを原料とする餌を牛が食べ、その牛を食べた人間たちがゾンビ化する。

『天上の被造物(천상의 피조물/The Heavenly Creature)』

チョンサン寺で働くアンドロイドのRU4──“インミョン”が、悟りの境地に達する。僧侶たちはインミョンを崇めるが、RU4を製造したUR社は誤作動と断じ、人間の命令を聞かなくなったロボットを排除しようとする。

『ハッピー・バースデイ(해피 버스데이/Happy Birthday)』

小惑星の衝突まで残り12時間と迫る。地球に接近した小惑星は“ビリヤードの8ボール”の形状をしており、それは少女ミソンがネットで注文したものだった。

感想

一篇目の『素晴らしい新世界』。これは明らかにMERS流行時の混乱を揶揄したものだろうと思ったのだが、本作の公開は2012年で、MERSの流行は2015年だった。というわけで、とんだ見当違いはあったものの、基本的に言わんとするところは同じだろう。原因不明の病気の流行は「北の陰謀だ」との流言飛語を生み出し、テレビ番組では感染症とは無関係な政治論争に終始する(市民団体代表役でポン・ジュノが出演。不良“高校生”役でマ・ドンソクも出演している)。我々もこの1年間で何度となく見てきた光景である。隠喩の割にはあまりに直截だったが、ゾンビ発生の原因となった生ゴミが“リンゴ”という聖書オチがキリスト教国の韓国らしかったか。ブサイクな主人公と美人なヒロイン(コ・ジュンヒ)のキスシーンがやたらとクローズアップで捉えられており、妙に生々しかった。ゾンビメイクのクオリティは高い。

二篇目の『天上の被造物』。この作品だけ監督が異なっており(キム・ジウンが担当)、他と比べて明らかにSFとしてのレベルが高い。「悟りを開いた」というアンドロイドを前にして対立する僧侶と製造会社。二つの点で非常に興味深い、SFらしいSFだった。一つ目は、人間は「知性」こそが自らを定義する要素だとしてきたが、より高度な思考能力を持つAIの出現により、その定義が脅かされているというもの。SFでAIを扱う場合、よく「暴走」というキーワードが出てくるものの、我々が真に恐れているのは、自らの存立基盤の危うさなのかもしれない。

ニつ目は、悟りを開いたアンドロイドが導き出した結論。僧侶たちが「我々を導いてくれるに違いない」とインミョンを守ろうとする一方で、製造会社は「人間の命令を聞かないロボットは危険」と破壊を命じる(後者が一般的な“AIの暴走”のイメージだろう)。その主張の是非はともかくとして、彼らは“対立”している。これを見たインミョンが「争うことはおやめない」と言い、自ら機能停止するのである。つまり、彼は自ら“命を絶つ”ことで悟りを体現してみせたことになる。後に残されるのは、“知的”にも“精神的”にも「人間がAIが負けた」という残酷な事実のみである。

三篇目の『ハッピー・バースデイ』。一篇目と同じ監督(イム・ピルソン)が担当しており、同じくコミカルな雰囲気の一話である。ただし、一篇目が分かりやす過ぎる程の社会風刺だったのに対し、こちらが意図するところはよく分からなかった。“人間には理解できない現象”を扱っているようだが、何かキリスト教的な解釈が可能なのだろうか。「ネットで注文したやつだ……」の出オチ的なところがありはしたものの、「返品できるかな?」と自転車で自家発電しながらPCを操作する演出だったり、絶望した女子アナ(イ・ヨンウン)が不倫を告白する演出は楽しかった。ちなみに、サムネに写っているペ・ドゥナは、人類滅亡の戦犯である少女の成長後の姿であり、純然たる“ちょい役”である。てっきり彼女が宇宙に行く話なのかと思った。

人類滅亡計画書(字幕版)

人類滅亡計画書(字幕版)

  • 発売日: 2014/01/11
  • メディア: Prime Video