オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ノー・エスケープ』

Quarries, 82min

監督:ニルス・テイラー 出演:ニコル・マリー・ジョンソン、キャリー・フィンクリー

★★

概要

女が男に襲われる話。

短評

とてもあっさりとしていて、特にこれと言った見所のないスリラー映画。「美女が男から残虐な仕打ちを受けてさえいればそれでいい」という悪趣味な需要だけで成立しているような一作なのだが、露骨に悪趣味な残虐描写があるわけでもなく、美女がそれ程美女というわけでもなく、襲われる女性たちの(特に掘り下げられない)背景描写も全く活きてこない。ないない尽くしである。

あらすじ

自然と触れ合うことで更生を目指すトレッキングツアーに参加したキャット(ニコル・マリー・ジョンソン)、レン(キャリー・フィンクリー)、マディソン(レイシャ・ヘンリー)、エイプリル(ニコール・デュポート)、ブリット(Rebecca McFadzien)、ジョイの6人のワケアリ女性たち。しかし、そんな彼女たちの前に“人間狩り”を楽しむ男の一団が出現する。

感想

美女が男に襲われる映画というのは、それだけで“男性的”な需要があるものである。「襲われる」という言葉は当然にそういう意味を含むものだと思われるし、「それならば」という期待も高まる。(男性)観客はスリルを楽しみつつ、心の底では「もっとやれ」と思っているのものである。しかし、本作に登場する男たちが観客にサービスすることはなく、“美女が男に襲われる映画”としての需要を満たしてくれることはなかった。

それでは、本作の人間狩り集団は一体何がしたいのか。それはよく分からない。彼らが男だろうが女だろうが見境なく襲う理由も、類人猿みたいに手を地面につけて走る男がいる理由も、特に明示されることはない。これはこれで“理不尽系”としての怖さがあって然るべきなのだが、困ったことに、恐怖を全く感じられないレベルで“弱い”のである。

“狩る”ことそのものを目的としているならば、ライフを持っているので遠くからの攻撃に徹すればよい。しかし、“狩る楽しみ”も目的に含まれているのか、中には対人格闘すべく接近する者のいる。ところが、こいつが女性と取っ組み合って普通に負けてしまうような雑魚なのである。ライフルを持って偉そうにリーダー面していた男もあっさりと敗北し、「えっ、これで終わり?」と誰もが思うはずの幕切れを映画は迎える。

対する女性チームも決して強いわけではないため(主催者のジーンが滑落して怪我する程度には素人集団)、この戦いは本当に盛り上がらない。キャーキャー叫びながら逃げていたかと思えば、仲間内の自滅で一人が死亡し、特の反撃の火蓋を切る切っ掛けもないままに反撃に転じる。したがって、戦いそのものが楽しくならないし、何の爽快感も味わうことはできない。

男たちの正体が不明な点については不条理の演出ということでよいのだろうが、主人公たる女性チームのことまでよく分からないというのはいかがなものか。キャットがDV被害者、レンがヤク中、マディソンとエイプリルがレズビアンカップルといったことが語られるものの、その設定がまるで展開に活きてこない。

その上、ジーンが遅刻してきたキャットを他のメンバーに紹介するシーンがあるのだが、「この人がキャットよ、皆よろしくね」と言うだけで、紹介される側の名前を教えてくれない。普通、「〇〇、この人がキャットよ。キャット、この人が〇〇」だろう。キャラクター描写が薄くて感情移入しづらいのだから、せめて顔と名前くらいは一致させた状態で映画を観させてほしい。

ノー・エスケープ

ノー・エスケープ

  • メディア: Prime Video