オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ダブルデート 美しき罠』

Double Date, 89min

監督:ベンジャミン・バーフット 出演:ダニー・モーガンジョージア・グルーム

★★★

概要

童貞が美人と運良く寝られるなんて都合のいい話は存在しない。

短評

コメディとスリラーの割合が9:1くらいのイギリス映画。シンプルなはずの構造に対して尺稼ぎが酷い印象ではあるものの、その尺を稼いでいるだけの描写にも笑える部分はあり、それなりに楽しめた。情けない中年童貞、血みどろの美女(美人レベルはそれほどでもないと思う。ここは残念)、謎のオカルト要素。それぞれに低レベルなところはあるものの、楽しい要素の詰まったB級映画だと思う。

あらすじ

30才の誕生日を目前に控え、未だ童貞に甘んじているジム。彼がバーで親友のアレックスと脱童貞作戦を練っていると、目の前に二人組の美女が現れる。アレックスの指示を受け、キティ(ケリー・ウェナム)とルル(ジョージア・グルーム)の姉妹とのデートの約束を奇跡的に取り付けたジムだったが、彼女たちは“男食い”と呼ばれる恐怖の殺人鬼だった。

感想

「童貞が美人とアレできちゃうと思ったら……」という転換が物語の中核のはずなのだが、ここに辿り着くまでが相当に長い。映画冒頭にジムたちとは別の男二人組が襲われる描写が挿入されており、これだと転換時の意外性が薄れてしまうのではないかと危惧したのだが、どうやらそこは大して重要ではないらしい。魔法修得まで後1日と迫った童貞ジムがポンコツなのは当然だが、シリアルキラーの姉妹もまた同様にポンコツであり、「スリラー映画だったはずが……」というグダグダぶりを楽しむコメディ映画なのである。

「私はまだセクシーなの!セックスしたい?」と酔い潰れる未亡人に対して紳士ぶったがために事を成し遂げられないジム。童貞とはこういうものである(しかし、卒業しても精神的童貞はこういうものである)。美人姉妹とのデートを控え、「からかわれているだけだ。やっぱり行かない」と言い出したり、アレックスと服装や持ち物のチェックをしてみたりと(ジムがコンドームを確認するのに対し、姉妹はクロロホルムやナイフ)、彼の“10代から二十歳くらいまでの童貞っぽさ”が微笑ましかった。彼は非常に情けないが、「分かるよ、その気持ち」と温かい目で見守りたくなる。

クラブでルルと会話している時に母からメールが届き、「食事の約束をしてたんだった。行かなきゃ」と言い出すジム。ここは「そんなんだから童貞なんだよ!」とツッコみたくなったが、彼のファミリーが相当にヘンテコで笑った。“ジムTシャツ”を着た両親と姉に出迎えられて家の中に入ると、そこには“ジム・ケーキ”が。その後、家族四人で“ターナー家のラップ”をルルに披露する。完全に変人一家である。目の前のデート相手を置き去りにして家に帰ろうとする童貞的行動をとるジムにルルがついて来るという不自然さ以外は完全に尺稼ぎのためのシーンでしかないのだが、この奇妙な一家は好きである。

その後、ようやく姉妹の家に行ってジムたちが襲われるのかと思いきや、途中で事故を起こしてアレックスの父の家に立ち寄り、再度尺稼ぎをしてくる(これはターナー家ほどは面白くない)。そうしてやっとのことで“本編”が始まるわけだが、鍛え抜いた身体と格闘及び殺人術を身につけているかと思われたキティが意外に弱く、アレックスとグダグダな戦いを繰り広げる。そう、彼女は単なる気狂いなのである。

姉妹の目的は、「男たちを生贄に捧げて死んだ父親を復活させる」というもの。その最後の鍵が“童貞の血”であり、童貞専用マッチングアプリに登録していたジムが目をつけられたのだった。妹ルルから「父さんが死んでからおかしくなった」と評される姉キティによる謎のオカルト的儀式が成功するはずがないと思っていたら……、これが何と成功する。ミイラ的容貌と化した父親が本当に生き返る。意外すぎて笑ってしまった。また、このミイラが完全に“マスクを被っているだけ”であり、その安っぽさは噴飯ものである。彼の顔が吹っ飛ぶ演出も最高に笑える。

イカれた姉と比べて良心の残っていたルル。ジムは彼女と心が通じ合うが、殺人鬼の彼女は駆けつけた警察に逮捕されてしまう。その様子を見ながら「童貞卒業を急がない」と清々しい表情で語るジム。ちょっと待て。彼女は一生檻の中だぞ。暢気に待っていたら、お前はずっと童貞だぞ。

ダブルデート 美しき罠

ダブルデート 美しき罠

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