オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『マリオネット 私が殺された日』

나를 기억해(Marionette), 101min

監督:イ・ハンウク 出演:イ・ユヨン、キム・ヒウォン

★★

概要

女子高生集団強姦動画販売事件。

短評

キム・ダミちゃんの商業映画デビュー作。冒頭に「実話を基にしたフィクションです」とのテロップが入る割にはエンタメに走り過ぎた感があり、「具体的な元ネタになっている事件はないんだろうな」と察するタイプの作品だった。色々と詰め込みたがるのが韓国映画の欠点かと思うが、これでは扱っているテーマの重さに対する真摯さを感じられず、狙った面白さというわけでもない悪趣味に終わってしまう。眼鏡っ娘美少女のキム・ダミちゃんは可愛かった。

あらすじ

2002年、女子高生のミナ(キム・ダミ)は恋人ジノの家で集団レイプされ、その動画を販売されてしまう。ミナが犯人に縛られていたことから“マリオネット事件”として大きく報道され、事件は韓国中の注目を集めることとなった。その後、ソリン(イ・ユヨン)と名前を変えて教師になった彼女は結婚を控えていたが、ある日、「マスター」と名乗る人物から彼女を辱める様子が収められた動画が届き、15年前と同じような脅迫を受けるようになる。

感想

マスターから脅迫を受け、更には教え子セジョン(オ・ハニ)までもが同様の被害に遭い、15年前の事件を担当したグクチョルを頼るソリン。ちなみに彼は刑事を退職しており、禁煙の店内で喫煙し、客と口論するネットカフェの店主となっている。セジョン事件については、いかにも怪しげな男子生徒ドンジンを「こいつが怪しいですよ」と映し出し、また、クラス中に一斉に秘蔵写真が配信されるため、彼が犯人であると予想される。この予想は外れるのだが、“予想を裏切るためだけの展開”といった趣があり、作品の“軽さ”を感じさせる一因となっていた。セジョンはあまり美人とは言えないが、クラスメイトの流出ものだと信じて使用した男子もいたことだろう。

“小オチ”では予想を裏切ってきたものの、“大オチ”の方は「もう少し上手くできなかったのか……」とガッカリするようなものが待っていた。映画の序盤に“IDとパスワードを書いた付箋を貼り付けられたPC”でエロサイトを見ている子供が登場し、その後、彼は特に音沙汰なしである。こいつが真犯人に決まっているではないか。全く驚きのない“衝撃の展開”である。ヒントがゼロではフェアじゃないかもしれないが、これは流石に分かりやすすぎる。なお、真相を知ったソリンが「怪物じゃなくてイタズラでよかった」と発言していたが、こいつは立派な怪物だよ!

胸クソ悪いテーマの割にはノリが軽くて胸クソ感の薄い一作ではあったが、一つだけ嫌な余韻を残した点がある。ソリンが疑っていたジノは事件後、社会に適応できずに自殺しており、彼がある種の被害者のような扱われ方をしているのである。我らがキム・ダミちゃんを陵辱した人間の風上にもおけぬ卑劣漢なのに、死んだら救われてしまうではないか。お前は永久に苦しめ。非公開捜査だったはずのマリオネット事件を記者にリークしたと白状したグクチョルが、「あなたはそれで気が楽になるでしょうね」と皮肉を言われただけで許されてしまうのも物足りない。彼が高校生に敗北し、パンツ一丁で置き去りにされる場面は笑えたが、本作を社会派映画にしたいのであれば、“あの状況”で“あの笑い”は不要のはずである。

恋人だと思っていた男が最低野郎で、酒と薬で眠らされた末に、パンスト・白ブリーフ軍団の仲間と共に犯されてしまうという気の毒な役のキム・ダミちゃん。許せん!のではあるものの、韓国映画的な凄惨な描写には欠けていた。彼女が女子高生の頃の制服はプリーツスカートなのだが、教師になると生徒たちはタイトスカートを履いている。韓国の制服の流行が変化したのか。それとも学校によって違うだけなのか。なんとなく後者のイメージが強いのだが。

韓国版Wikipediaのページにも元ネタについての記述は皆無だったので、何か具体的な事件があるわけではないのだろう。ただし、劇中に登場する“ソラネット(Soranet)”というアダルトサイトは実在したようである。これがかなり問題のあったサイトらしく、創設者も逮捕されている。具体的な元ネタはなくとも、似たような被害が存在することは容易に想像できる。だからこそ、本作のような単純なエンタメ化に対しては疑問符がつく。

マリオネット 私が殺された日(字幕版)

マリオネット 私が殺された日(字幕版)

  • 発売日: 2019/04/03
  • メディア: Prime Video