オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『乙女たちの秘めごと』

Le semeur(The Sower), 98min

監督:マリーヌ・フランセン 出演:ポリーヌ・ビュルレ、アルバン・ルノワール

★★★

概要

女だけの村に一人の男が来る話。

短評

フランス版『ビガイルド』(女性視点なので『白い肌の異常な夜』でなくてもよいだろう)。薄暗い部屋での行為時にちょろっと出てくるだけなので、おっぱい目的の映画としては期待はずれだったが、内容の充実度が空振りの虚しさを上回っていた。『ビガイルド』も気に入ったし、きっと三十郎氏はこのモチーフが好きなのだと思う。この設定だと“女の戦い”が泥沼展開を迎えそうなところだが、美しい映像に相応しく、ドロドロの中の透き通った瑞々しさを捉えた恋愛映画に仕上がっていた。たまにこういう当たりがあるから、おっぱい目的の映画はやめられないぜ!

あらすじ

1851年、ナポレオンによる第二共和政への弾圧が始まり、とある村の共和派の男たちが皆逮捕されてしまう。村には女と子供だけが残され、先の見えない日々や男手なしの収穫作業に疲弊していたが、そこに一人の男が現れる。ジャンと名乗るも素性の知れぬ男に対して村人たちは疑念の目を向けるものの、やはり男の労働力は頼もしく、彼は村人たちの信頼を集めていく。ジャンの世話役を任されて親密となったビオレット(ポリーヌ・ビュルレ)は、彼と関係を持つようになるが、村の娘たちの間で一つの約束が取り交わされていた。

感想

その約束とは、「男を共有する」というもの。ジャンの出現前に、女たちが「もう世界に男なんて存在しないんじゃないかしら」「もし男が一人だけいたらどうする?」「皆したいんだし、共有しちゃいましょ」というガールズトークをしていて、それが現実化するというわけである。ただし、「約束したでしょ。私にもヤラせなさいよ」という話はあるものの、「ジャンは私だけのものよ!」と争うようなことはない。最初に交わったビオレットがジャンを真剣に愛してしまっていて、約束を守ることで苦しむ彼女の心中が物語の中心となっている。

対して、ウラヤマ死刑な桃色男のジャン。最初にビオレットに手を出した時は、「女たちが自分を必要としていると認識したところで本懐を遂げる姑息な桃色野郎」だと思った。ビオレットに約束の話をされて一度は村を去りかけるも、ある女の「戻ってくるわよ」の予想通りに戻ってきて「決めた。皆と寝ると伝えてくれ」なんて言うものだから、「ハーレム願望に抗えない助平男」なのだと思った。その後、約束通りにそこかしこで女たちと交わるジャン。彼の意図がよく見えてこないものだから、てっきりジョニーに身も心も委ねた欲望に忠実な(もしくはビオレットと交わった時点で他ともヤル気満々の狙いを持った)男なのだとばかり思っていたが、どうも様子が違うらしい。

彼は人を殺して潜伏中であるため、隠れ家を必要としている。人里離れていて、村人たちが自分を必要としている村は理想的である。そんなわけで村を離れたくない。「おまけにハーレムのサービス付き」と言いたいところだが、一応は彼の方もビオレットに惹かれているらしい。三十郎氏からすれば羨ましすぎて気の毒に思うことなど一つもないが、彼がビオレット以外の女たちと寝るのは、あくまで“仕方なく”なのである。そんな彼の事情と、ビオレットの心情を併せて考えれば、桃色一色そうな割には切ない物語なのである。

やがてビオレットが妊娠するも(ここでジャンが「一緒に逃げよう」と言うため、女を抱ければ誰でもいいわけではないことが分かる。プレイボーイなら平気でウソをつくだろうが)、村の男たちが帰還する。ジャンは女たちからすら白い目を向けられるようになり、通報されるのではないかと心配して村を去る。原題の『Le semeur(The Sower)』とは「種を蒔く人」の意であり、彼は正に種を蒔いていったのだった。彼がビオレットに残した手紙には「手紙書くよ。いつか再会しよう」と書いてある。精子スプレッダーは無責任だ。

「ビオレットも可愛いけど、色白黒髪乙女のジョゼフィーヌが一番かな~」なんて考えていたら、なんと『ヴィオレッタ』のアナマリア・ヴァルトロメイだった。どおりで可愛いはずである。あの美幼女がこんな美少女に成長するのか。約束組の一人である彼女が交わるシーンは残念ながらないものの、川で遊んだ後に服からボディラインが透けている場面がある。結婚の直前に婚約者を連行されたローズ(イリアーナ・ザベート)は、レア・セドゥになり損ねたような顔だった。なお、彼女がウェデングドレスを燃やしながら泣き崩れているシーンが本作のベストショットである。

女たちがジャンを求めて盛り出すと、ビオレットは幼い弟と戯れる女に対して「やめて!」と強硬な態度をとる。きっと女が皆男根を求めているようにしか見えなくなったのだろう。男が他の男を見る時の「こいつ、ヤリたいだけだろ」という冷めた視線のヒステリー版である。他にも、ビオレットからジャンへの、ジャンから村人たちへの、といった視線の変化が上手く取り入れられていた。

乙女たちの秘めごと(字幕版)

乙女たちの秘めごと(字幕版)

  • 発売日: 2018/11/07
  • メディア: Prime Video