オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『男たちの挽歌』

英雄本色(A Better Tomorrow), 95min

監督:ジョン・ウー 出演:チョウ・ユンファティ・ロン

★★★

概要

香港黒社会から失墜した二人の復讐劇。

短評

超有名作品なので当然にタイトルは知っていて、内容も「こんな感じなのだろう」というイメージを持っていたが、実は未見だった一作。「きっと白い鳩が飛んで、チョウ・ユンファが二丁拳銃で無双するアクション映画に違いない」と思っていたら、鳩は飛ばないし、アクション映画としてよりもノワール映画としての性格が強い作品だった。前半は説明不足に思えたものの、時間が飛んだ辺りから自分の中で上手くピースがハマってきて、(アクション以外は)必要最低限の描写で魅せるノワール映画の美学が存分に発揮されていた。

あらすじ

香港の黒社会で活躍するマーク(チョウ・ユンファ)とホーの二人。ホーが台湾との取引中に裏切りに遭って逮捕され、彼の父親が殺されてしまう。それから三年後、出所したホーの弟キットは警察官となり、兄を恨んでいた。堅気に戻ろうと努力するホーだったが、彼らの後輩で権力者となったシンが放っておいてはくれず、キットまでもが巻き込まれてしまう。三年前に彼の敵を討って脚を負傷していたマークに説得され、ホーはシンに立ち向かうことを決める。

感想

三十郎氏はてっきりチョウ・ユンファが主役なのかと思っていたが、どちらかと言えばホー役ティ・ロンを中心とした物語である。その上、ホーとマークの関係よりも、ホーとキットの関係の方が重要となっている。なんだか色々と勘違いしていた。弟のために堅気に戻りたいのにマフィアの妨害を受けるホー。父の死因を作った(そして自身の昇進を阻む)兄を許せないキット。このすれ違いがなかなかに切なくて、『M:I-2』の印象から勝手に想像していたような、ド派手なアクションだけが売りの映画とはかけ離れていた。やはり何でも自分の目で確かめてみるものである。

とは言え、マークも決してちょい役というわけではない。友の敵を討ったために膝ボロとなり、かつての後輩に頭を下げる駐車場係に甘んじている。出所したホーと再会した彼の「見返してやろう!」「俺は三年も待った!」という言葉にどれ程の思いが込められていることか。この辺りから上手く作中世界に入り込めるようになり、最後にマークが撃ち殺されてしまう場面で感情の極みに達した(続編があることを知っていたので、まさか死ぬとは思わなかった)。

アクションについても勘違いがあった。確かにチョウ・ユンファは二丁拳銃をぶっ放すし、スローモーションを使った演出がジョン・ウー印ではあるものの、最終決戦に挑むマークは拳銃ではなくサブマシンガンを使用している。序盤の復讐シーンで彼が鉢植えに銃を隠す描写があるのだが、果たしてあれは必要だったのか。普通に持ち込めるのなら、そのまま全部持ち込んだのではダメだったのか。「これから事が起こるぞ」という予感の演出としては良かったが。

出所したホーが就職するタクシー会社の社長キンがいい人である。「前科者か~。そんなの雇う奴は物好きだよね~。まあ、俺は物好きだし、従業員は全員前科者なんだけど」と言って雇ってくれる。その上、ホーを狙ったシンの部下たちが会社を滅茶苦茶にした時にも「やり返したら奴らの思うつぼだぞ」と言って、憤るホーを諌めてくれる(それどころではないだろうに)。なんて出来た人なのだろうか。ホーは結局やり返すけど。

監督ジョン・ウーが台湾の刑事という割と目立つ役で出演していた。キットの恋人ジャッキー(エミリー・チュウ)が受けている音楽の審査員は、本作の製作総指揮を務めたツイ・ハークなのだとか。

ところで、三十郎氏は「挽歌」という単語が本作以外に使われている文脈を知らなかったのだが、中国で葬儀の際に歌われる楽曲の他、悲しみを表現をする音楽のことらしい。

男たちの挽歌(字幕版)

男たちの挽歌(字幕版)

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