オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『拳精』

拳精(Spiritual Kung-Fu), 98min

監督:ロー・ウェイ 出演:ジャッキー・チェン、ジェームス・ティエン

★★★

概要

宇宙から飛来した妖精にカンフーを習う話。

短評

白塗りフェイスに全身白タイツ、そして頭には赤毛のカツラという気色悪い出で立ちの妖精が登場するカンフー映画。コメディ主体のカンフー映画は、笑いとアクションの融合が今ひとつ上手くいっていない印象があったが、本作はバカバカしさが突き抜けていて楽しかった。昭和ゴジラシリーズの宇宙人関連の演出を想起させるような安っぽさが逆にクセになる。少林寺内部の裏切りといったシリアス展開とキモい妖精の組み合わせはバランスが悪かったが、飛び道具的変わり種が新鮮な一作だった。ちなみに、ジャッキーは本作を毛嫌いしているらしい。

あらすじ

少林寺の問題児イーロン(ジャッキー・チェン)。彼が夜警の仕事に見事失敗し、禁じられていた“七殺拳”の経典が盗み出されてしまう。七殺拳に対抗できる“五獣拳”の経典は100年前に紛失していたが、五獣拳の妖精たちが出現し、イーロンは彼らから武術を学ぶ。

感想

悪役が「五獣拳の経典が空から降ってこない限りは大丈夫」と言った直後のカットで宇宙の映像が挿入され、本当に“降ってくる”。それ以前のシーンでもジャッキーが情けない姿を披露して笑わせようとしていたが、くだらなさの質が大きく異なる。その上、出てくる妖精が白塗りオバケという安っぽさ。ただ阿呆なことをやっているだけではない。本気で阿呆なことをやっている清々しさがあった。このチープなノリがシリーズ的に続けば、恐らく次の作品で飽きてしまうのだろうが、一作だけであれば、それはむしろ衝撃的ですらある。

妖精たち(「妖精」と呼ぶには抵抗のあるビジュアルだが)が少林寺の面々に「お化け!」と怖れられ、彼らを弄ぶ様子はホラーコメディのそれである。特撮のチープ感とキモいビジュアルの相乗効果が良かった。仲間たちが遊ばれてしまう一方で、イーロンだけが果敢に“小便攻撃”で彼らを手なづけ、五獣拳の師匠になってもらう。イーロンが机に脚を乗せて寝ていると妖精たちが机を持ち去ってしまう場面があるのだが、彼の脚は上がったままである。腹筋強化睡眠法!

七殺拳の経典を盗んだ敵が武林の掌握を画策し、少林寺内では裏切り者による暗殺が発生するというシリアス展開。当然イーロンが敵を倒すために五獣拳を習得する展開となるはずなのだが、終盤に至るまではどこ吹く風で、彼は初めて見たという女の尻を触るために拳の向上を目指す(このための特訓中、妖精たちはだらしないおっさんたちのような格好で眺めているだけ)。何やってんだ、こいつ……。彼はリターンマッチを制して“お尻ペンペン”していたが、初めての尻ならもっと感触を楽しむべきでは?

山を下るための試験に合格し(初めは一対一。次に一対複数。竹の棒やトンファーを使った動きに加えて、相手の陣形編成も見事だった)、七殺拳の使い手に挑むイーロン。この辺りでようやく真面目なカンフー映画になるのかと思ったら、再び妖精たちが出現し、邪魔とも協力ともつかぬ絶妙な合体攻撃を見せてくれる。一応はカンフー映画らしさを披露しつつも、バカバカしさを最後まで忘れない点がよかった。妖精の手を借りてイーロンが高くジャンプしたりする演出は見事。

少林寺総長の目が怖かった。なお、この総長は裏切り者を前にして「僧は俗人と争えぬ」と戦いから逃げている。

拳精 (字幕版)

拳精 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video