オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』

The Mummy, 110min

監督:アレックス・カーツマン 出演:トム・クルーズソフィア・ブテラ

★★★

概要

ミイラが復活する話。

短評

ユニバーサル・ピクチャーズの社運を懸けたダーク・ユニバースの華々しい幕開けを飾るはずだった一作。様々な大人の事情が複雑に絡み合ったであろうことは想像に難くなく、「彼方立てれば此方が立たぬ」の状況に陥っている。“トム・クルーズの映画”としては“いつも通り”になり得たものの、それだと他の要素は余計でしかない。逆にホラー映画のユニバース構想を優先するのであれば、“トム・クルーズの映画”では単なる冒険映画にしかならない。エキゾチック美女の代表格であるソフィア・ブテラは良かったが、彼女を含めてあらゆる素材の持ち味を殺し合ってしまった印象である。

あらすじ

ロンドンの地下鉄トンネルの工事中に十字軍の墓所が発見される。時を同じくしてイラクでエジプトの遺跡が発掘され、ニック(トム・クルーズ)やジェニー(アナベル・ウォーリス)らが水銀に沈められていたミイラを搬出するものの、輸送途中にロンドン近郊で飛行機が墜落してしまう。そのミイラの正体は死神セトと契約したアマネット王女(ソフィア・ブテラ)であり、ジキル博士(ラッセル・クロウ)率いる“プロディジウム”が彼女の復活を阻もうとするのだった。

感想

大まかな話の流れは、「ニックが悪の化身のミイラを発掘し、彼が自己犠牲の精神と愛の力で世界を救う」というのもの。言ってしまえば、“いつものトム・クルーズ”である。敵が古代ロマン溢れるホラー・モンスターというだけで、根本的な部分は彼のヒーロー映画と捉えて問題ない。そう割り切ってしまえば、映像面のクオリティは極めて高いし、それなりに楽しめなくもない。

しかし、問題はユニバース構想である。ジキル博士が登場して「これだけじゃありませんよ。他作品と繋がってきますよ」としきりにアピールし、世界観の奥行きを感じさせようとするのだが、これが逆に単独作品としての可能性を狭める結果になっている。プロディジウム本部のあるロンドンを舞台としたためにアドベンチャー感は薄れ、説明の必要なことが多過ぎて台詞頼りに。ジキル博士が目立っているのにミイラの女王にどうして集中できようか。相互に作品の魅力を高めるためのユニバース構想が、逆に本作の質を落としてしまっている。全てが“ユニバースありき”なのである。

きっと本作の制作過程には色々と葛藤があったことだろう。ユニバーサルはMCUのブームを受けて自前のユニバース・コンテンツがどうしても欲しいため、ユニバース構想を前面に押し出したい。しかし、トム・クルーズが“部品”のような扱いを受け入れるわけがない。それなら彼を起用しなければよいが、スターの力なくしてユニバースを一から盛り上げることは非常に難しい。そんなジレンマを監督が背負った結果として本作が生まれ、トム・クルーズのせいでホラー映画のユニバースとしては失敗しているのに、トム・クルーズ的な要素だけが面白いという矛盾が発生している。こうした背景を想像するのも本作の楽しみ方の一つかと思う(当たっているのかは知る由もないが)。

ミイラ状態で蘇ったアマネット女王。彼女は人間の生気を吸い取って肉体を取り戻していく。ミイラ状態の彼女は非常に気味が悪いため、その“口づけ攻撃”は全くありがたくないものの、肉体が復活すれば美人である。どうせ殺されてしまうのならば、彼女がある程度復活してした後にしてほしい、というのが被害者の心境だろう。なお、ニックは完全復活を遂げた彼女の唇を奪って逆に生気を吸い取っており、ここでもトム・クルーズが“美味しいところ”を独り占めしていた(それでも彼はジェニーを選ぶわけだが、その愛の描写は流石に雑)。ニックがアマネットに操られてしまう設定については、もっと活かし方があったのではないかと思う。

本作の失敗を受けてユニバース構想は頓挫してしまったようだが、完全に別作品かつ単独作品として製作された『透明人間』は評判が良いらしい。なんと因果な話だろうか……。近い内に観てみようと思う。

ザ・マミー/呪われた砂漠の王女 (字幕版)

ザ・マミー/呪われた砂漠の王女 (字幕版)

  • 発売日: 2017/09/20
  • メディア: Prime Video