オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ランナウェイズ』

The Runaways, 106min

監督:フローリア・シジスモンディ 出演:ダコタ・ファニングクリステン・スチュワート

★★★

概要

元祖ガールズ・ロックバンドの結成からボーカルの脱退まで。

短評

ザ・ランナウェイズという女性ロックバンドの先駆者的存在の伝記映画。三十郎氏はこのバンドを知らなかったのだが、劇中には日本で熱烈歓迎を受けているシーンもあり、かなり人気があったようである。大まかな流れは“栄光と転落”の定番パターンであるものの、過激で反抗的という“コンセプト”が多分に商業主義的という裏側や、メンバー間の対立が“女の戦い”っぽい辺りが面白かった。また、日本の描写がヘンテコではないタイプの、よく特徴を捉えたもので苦笑いさせられた。

あらすじ

1975年、ロサンゼルス。まだ女性がロックすることに抵抗のあった時代。ジョーン・ジェット(クリステン・スチュワート)はパーティーで出会った音楽プロデューサーのキム・フォーリーに女性ロックバンドの結成を直談判して興味を持たれる。彼女はドラムのサンディ(ステラ・メイヴ)らを紹介されて活動を始めるが、キムは「華のあるボーカルが足りない」と言い、デヴィッド・ボウイのモノマネ少女シェリー・カーリー(ダコタ・ファニング)をスカウトする。下積み生活を経て、“ザ・ランナウェイズ”は大きな成功を収めるものの、次第にメンバー間の不和が高まっていく。

感想

バンド結成時のシェリーは15才。外出中に初潮を迎え、双子の姉マリー(ライリー・キーオ。似てない)に“パンツを借りる”という衝撃の場面で映画は幕を開ける。15才の少女だろうが、もっと小さな子供だろうが、分別あるはずの大人だろうが、ロックスターとして成功すればやることは決まっている。セックス、ドラッグ、ロックンロール。三点セットの揃い踏み。当然のように彼女は成功に溺れ、「このままじゃダメね」とバンドを抜けて終劇である。このバンド自体に興味を持っていなければ、特別に面白い話というわけではないだろう。

性別というロック業界への参入障壁が強調されてもおかしくない話ではあるものの、結成時以外にはそれ程問題となっていないように見受けられた。プロデューサーのキムは勝算があったからこそ彼女たちに投資したのであり、既に聴衆にウケる時代的な素地が揃っていたのだろう。成功以前の描写では、「ヤジと戦う練習をしておけ」とゴミを投げつけられながら演奏する場面が面白かった。

下積みツアー中のジョーンの「金が要る」発言に対するキムの「もうすぐ」には不安しかなかったが、彼はレコード会社との契約を勝ち取り、バンドはスター街道を駆け上がる。“ステージでノーブラで演奏する過激な反逆者”というイメージを当人たちは好きで演じていたのだろうが、キムにはキムで別の思惑があった。詰まるところは、性的消費である。そして、その最大の消費者が日本である。

日本ツアーの宣伝のためにシェリーは明らかに音楽目的ではないグラビア撮影に応じ(画像検索すると出てくるが、撮影者が篠山紀信というだけでお察しいただけるだろう)、他のメンバーが「あんた、何音楽と無関係なことやってんの?ラブレースじゃないんだよ」と反感を抱く。“華のあるボーカル”としてスカウトされたシェリーの人気が群を抜いていた事に対する嫉妬もあってメンバー間の不和が高まり(この辺りが女の戦い)、薬物問題で倒れたシェリーはバンドを去る。女性ロックバンドとしてやりたいことを達成するも、それを商業的に利用されたために本人たちの意図とは異なる形で受容される。ただし、これは単純にキムが悪いという問題ではなく、そうした矛盾にこそエンタメ業界の特質が詰まっていると言えるだろう。シェリーも決して“被害者”というわけではない。

グラビア撮影以外の日本描写では、インタビューで「日本料理は好きですか?」と質問するのがとっても日本だった。

ザ・ランナウェイズというバンドは知らなかったが、解散後にジョーンがカバーして大ヒットした『I Love Rock 'n Roll』は、皆一度は耳にしたことがあるだろう。聞き慣れたメロディでも誰の曲か知らなかったため、「おお、この曲の人だったのか!」となった。ザ・ランナウェイズの代表曲『Cherry Bomb(日本語表記は「チェリー・ボンブ」。本質を無視して表面的に消費するのも、外国人に自国を持ち上げさせる習慣も、明らかに間違ったカタカナ英語表記も、この頃から何も変わっていない)』は『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』のサントラに使用されているとのことだが、そうだったっけ?

ある種の反省を持ってシェリーはバンドを去ったことになっているが、その後も女優業に挑戦したり、姉マリーとレコードを出していたりして、エンタメ業界やスターダムという麻薬からは逃れられないようだった。

ランナウェイズ (字幕版)

ランナウェイズ (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 
Neon Angel: A Memoir of a Runaway

Neon Angel: A Memoir of a Runaway