オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『狼チャイルド』

As Boas Maneiras(Good Manners), 135min

監督: マルコ・ドゥトラ、ジュリアナ・ロハス 出演: イザベル・ズア、マルジョリエ・エスチアーノ

★★★

概要

オオカミ少年が産まれる話。

短評

現代のおとぎ話的なブラジル映画。(邦題が盛大にネタバレしているものの)不穏な空気感が面白い不思議系映画な前半と、悲しい結末しか見えないリアル系ファンタジーな後半とで雰囲気がガラッと変化する。話としては面白いものの、二部構成の甲斐もなく135分は長尺過ぎて、後半の大部分は集中力を欠いてしまった。100分にまとめればよかったのに。レズビアンの妊婦プレイ(しかも白人×黒人)というマニアックな光景が見られるものの、特に眼福というわけではなかった。

あらすじ

出産を控えたアナ(マルジョリエ・エスチアーノ)に住み込みの子守兼家政婦として雇われたクララ。アナの妊娠が近づくにつれて、夢遊病といった奇妙な出来事が頻発するようになるが、二人は仲を深めていく。そして、遂に出産の時を迎えるが、アナのお腹から出てきたのは毛むくじゃらの赤ん坊だった。

感想

邦題からもパッケージからも、オオカミ男の生まれてこない展開などありえないわけだが、それでも一応は“謎”が物語を引っ張る前半となっている。アナが豪奢な生活を送っているのに家賃未納やクレカ使用不可といった描写で「何かが可怪しい」と違和感を抱かせ、彼女の夢遊病発症で本格化させる。「そうなのだろう」とは確信しつつも、出産は最後の最後だけという展開もありえるのではないかと思えたので、“そうとは知らない状態”で観てみたかったような気もする。出産までの“様子は可怪しいが決定的な事件は起こらない”タイプの不穏さが好みだった。クララが“察して”パスタに血をかけると、アナが「うめえ!」となる場面が可笑しかった。

「バーで出会った男とセックスしたら気絶して、目が覚めたらオオカミがいたの」というアナの証言の通りに、彼女が身籠ったのはオオカミ男との間に出来た子供である。そして、なんとオオカミ赤ちゃんは腹を割いて飛び出してくる。人間もオオカミも(自然分娩の場合は)膣口から出てくるものだと思っていたが、狼人間は随分とバイオレントである。エイリアンかよ。アナとクララのレズ妊婦プレイの描写があるのだが(クララがバーでおばさんにナンパされているので唐突感はない)、これはクララが赤ん坊を捨てられない展開への伏線となっていた。彼女は一度赤ん坊を河原に置き去りにするが、“愛した女”の忘れ形見を殺すことはできない。彼女は自分の乳を与えていたが、出ないだろう。

クララが赤ん坊を連れてアナの家から出るシーンで“歌う女”が登場し、映画がミュージカル調になる。明らかに「ここから先はファンタジーですよ」という宣言だろう(ジョエルと名付けられてオオカミ少年へと成長した場面へと飛ぶ時も爽やかな音楽つき)これは上手い雰囲気の転換方法だと思ったが、上述の通り、そこから先の尺が長すぎて、前半に比べると退屈してしまった。

クララは“菜食”と“(夜間の)監禁部屋”によりジョエルがオオカミ化しないように気をつけていたが、やはり本能は争えない。ふとした切っ掛けで肉の味を覚えてしまい、そこから先は悲劇が待つのみである。オオカミ少年の育成方法については興味深いものの、そこまで時間を掛けなくてもクララの“母の愛”は伝わる。また、出産までは一応何が起こるのか分からない状態だったのに対して、後半は既にファンタジーに突入しているのだから、話が動かないとアンバランスである。展開そのものは良くても、切るべきところを切らないと冗長な印象だけが残ってしまう。

英題の「Good Manners(原題も同義)」について。アナが「花嫁修業で姿勢を正すために本を頭の上に乗せて歩かされた」と話している。他の映画でも見たことのある定番の訓練だが、これは“頭頂部の形状”によっては必ずしも姿勢がよくなるわけではないのではないか。

狼チャイルド(字幕版)

狼チャイルド(字幕版)

  • 発売日: 2019/03/06
  • メディア: Prime Video