オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『デアデビル』

Daredevil, 133min

監督:マーク・スティーヴン・ジョンソン 出演:ベン・アフレックジェニファー・ガーナー

他:ラジー賞最低男優賞(ベン・アフレック

★★

概要

盲目の弁護士vs黒ハゲ+白ハゲ。

短評

「一度ヒーロー映画でコケると、次のヒーロー映画は当たる」というジンクスを打破したベン・アフレックが一度目にコケた方のヒーロー映画(二度目はコケたという程ではないが、単独作を前に降板したので失敗だろう)。“レーダーセンス”という特殊能力をソナーのように表現するのは悪くなかったが、いざ戦い始めると盲目という弱点も特殊能力もそれ程関係ないように見えるし、なによりストーリーが冗長な上に上手く繋がっていない。「昼は正義の弁護士!夜は自警市民!」というバットマンのような設定でダーク路線の割にはデアデビル本人の抱える闇がまるで見えてこず、主人公が間抜けで薄っぺらいヒーロー映画になっていた。

あらすじ

少年時代に有害物質を浴びて視力を失ったマット。しかし、その代わりに残りの感覚が研ぎ澄まされ、レーダーセンスという特殊能力を身につける。ボクサーの父が八百長を断って殺されたことから正義の追求を誓い、成長して弁護士になるマット(ベン・アフレック)。彼は司法の場で弱者を救う傍ら、夜はデアデビルとして自警活動に励んでいた。

感想

「裁判で負けた!でも、お前は悪い奴だから正義の鉄槌を下してやる!」と私刑に走るような男をヒーロー扱いするのはいかがなものだろうか。「俺は心臓の鼓動を聞いて人間嘘発見器ができちゃうんだぜ」と言っても、法廷で証明できなければ弁護士として活動している意味がないだろう。自分の存在が司法を貶めているという矛盾を、果たして本人はどう捉えているのか。その上、ご自慢のレーダーセンスだってペースメーカーに騙されることがあるし、あまり信用できたものではない。女の尻を追いかけて仕事に遅刻するし、敵に負ければ裁判を無断欠席する。自警活動の前提となる“正義”の部分が、とんでもないポンコツである。

あまり金にならない案件ばかりを手掛け、その上、私刑を果たすために無能な弁護士ぶりを披露するマットだが、彫刻が並んでいるような家に住んでいる。どうやって稼いでいるのだろう。彼は棺のような“蓋付きの風呂”に入って休んでいるのだが、ドラキュラかよ。きっと音を遮断するという目的があるのではないかと思われるが、皮膚はふやけるだろうし、寝ている内に身体は冷えそうである。

そんなポンコツヒーローが立ち向かう二人のヴィラン。黒ハゲことキングピン(マイケル・クラーク・ダンカン)は街を牛耳る大物悪人なのだが、娼婦殺害事件が彼へと繋がるというミステリーを話に盛り込んだために、彼が具体的にどれ程の悪行三昧なのかが伝わってこない。一応はラスボスのはずなのに手下の白ハゲの方が目立っていて、最終決戦も物足りなかった。

黒ハゲに雇われたダーツの達人である白ハゲことブルズアイ(コリン・ファレル)。レザーのロングコートを着込み、得点を決めた時のイブラヒモビッチのように両手を広げて“エスカレーターに乗る”。これは恐ろしいヴィランというよりも、ちょっと恥ずかしい人である(クリップをペロペロしているのも……)。デアデビルが彼を倒すのも他人頼りで、あまり魅力的な悪役とは言い難かったが、飛行機で隣の席の五月蝿いお婆ちゃんを黙らせるテクニックだけは笑えた。

マットによる軽めのストーキング被害を受け、公園でのブランコバトルから彼と仲良くなるエレクトラジェニファー・ガーナー)。デアデビルは彼女に負けて顔バレするし、教会で倒れて牧師にも顔を見られるし、キングピンにだってマスクを剥がれる。黒ハゲには「お前の言うことなんで誰も信じないぞ」と余裕をかまし、記者には「お願い、バレたら破滅しちゃうの」と正体を隠すのに必死なマットだったが、この弱さと脇の甘さを考えれば、バレるのは時間の問題だろう。ちなみに、エレクトラのファミリーネームが「ナチオス」である。ギリシャ系の苗字らしいが、ツイッターのラディカル・フェミニスト全体主義的な日本男につけそうな蔑称みたいだと思った。

本作の前年に公開され、歴史的ヒットを飛ばした『スパイダーマン』の影響があったのだろう。雨の中でヒロインとキスをし、身体を回転させながら手裏剣を避ける。杖から飛び出すワイヤーを利用して移動するのも似ているし、流石にパクりすぎではないかと思う。撮影時期を考えれば同作を観てから真似したわけではないと思うのだが、原作から似ていたりするのだろうか。それともヒットを受けて再撮影したか。

特に断り書きはないのだが、プライムビデオで配信されている133分のバージョンはディレクターズ・カットらしい(劇場公開版は103分)。この冗長さは「大作たるもの、せめて2時間はないと舐められる」という風潮が影響したのではないかと思ったが、そういうわけでもないのか。

ベン・アフレックラジー賞受賞については、『ジーリ』の功績の方が大きいと思う。

デアデビル (字幕版)

デアデビル (字幕版)

  • 発売日: 2015/01/17
  • メディア: Prime Video