オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『デッド・クリフ』

Body at Brighton Rock, 87min

監督:ロクサーヌ・ベンジャミン 出演:カリーナ・フォンテス、ケイシー・アダムス

★★

概要

ポンコツレンジャーが森で迷う話。

短評

邦題が『デッドクリフ』と紛らわしい山岳スリラー。同作は“想定外”の方向へと話が進んだのに対し、本作は主人公が一人で勝手にビビっているだけという珍作である。よくこの間抜けな話をスリラーに仕立てたものだと思うが(その功績のほとんどは音楽によるものだろう)、観客は最初から一貫して「これは主人公が阿呆なだけなのでは……?」と察してしまっているため、スリルも何もあったものではない。最後に本物のクマが登場するので、クマの出演を前提に適当に脚本を書いたのではないかという疑惑が残る。

あらすじ

遅刻常習犯のポンコツレンジャー、ウェンディ(カリーナ・フォンテス)。彼女は同僚たちを見返そうと森の中の任務を買って出るが、そこはポンコツ、当然のように道に迷ってしまう。地図を失くし、スマホはバッテリー切れ。その上、滑落したと思しき男の死体まで発見してしまう。無線で本部に連絡を取るも、捜索隊の到着は翌朝になるとのことで、ウェンディは森の中で一夜を明かすことになってしまう。

感想

天候の変化や野獣の出現。山では何が起こるのか分からないから怖い……はずなのだが、今回ばかりは山に責任を押し付けることはできまい。全面的にウェンディの責任である。音楽を聞いて踊りながら森を進み、看板を見落として道に迷うウェンディ。途中で地図を開いて位置確認に失敗しているはずなのに(ここで地図を落として失くす)、目的地に着いたと思って余裕の自撮り。同僚に「私にだってできるのよ!」と写真を送ったところで、「そこどこ?」である。阿呆を通り越して可哀想な子である。ところで、テキスト送信が可能なのにGPSが使えないという状況はありうるのだろうか。開けた場所なのに。

崖の下に死体を見つけ、「よし!本部に連絡する口実ができた!」と言わんがばかりのウェンディ。「君、そこに行く権限ないよね?」と叱られるも言い訳し、「朝まで待って」と言われば「冗談じゃないわよ!」「私は専門家じゃないのよ!」と逆ギレする。やっぱり阿呆である。彼女が事件の可能性を考慮せず死体に触れたことについても本部から注意を受けていたが、ここまでウェンディの出来が悪いとなると、研修の内容を再検討する必要があると思う。

なんやかんやあって夜を迎え、ウェンディの恐怖は高まりを見せる。夜に森の中で一人っきり。おまけに側には死体がある(あえて死体の側を選んで眠ろうとする思考経路は理解できないが)。もし自分がこの状況に置かれれば相当に怖いはずなのだが、原因がウェンディのポンコツにあるため、何が起ころうと出てくるのは乾いた笑いばかりである。ペッパースプレーで自滅し、幻聴を聞いて無線機を投げ捨てる。本当にどうしようもない女である。ここまで酷いと、むしろ順当に死んでほしいとさえ思わなくもない。

途中で怪しげな男が出現し、実はそいつが死体の幽霊でした、というオチである。終わってみれば“怪談”になるわけだが、男の存在は明らかに浮いているし、ウェンディが感じる恐怖とも特に関係がない。彼はクマに襲われて死んだことが最後に発覚し、保安官(?)が「人間の味を覚えたクマだから君も危なかった」と発言するものの、食べられていたなら損傷具合から分かるだろう。

幽霊にせよ、蛇や人影にせよ、基本的にはウェンディが存在しない相手に対して一人勝手にビビっているだけなのだが、最後の最後になって本物のクマが登場する。恐らくは「演技のできるクマがいるから、それで一本映画を撮ろう!」というノリで制作した映画なのではないか。クマの出番が少ないのは、きっと本業のサーカスか何かの合間にでも出演したからだろう。ウェンディはペッパー成分の切れたペッパースプレーで炎を放ってクマを撃退していたが(スプレーはガスの方が先に切れるイメージがあるのだが、どうなのだろう)、クマは火を恐れないらしい。

本作をウェンディの“成長譚”として観るならば、彼女が学んだ内容は「自分はこの仕事に向いていない」に違いない。

デッド・クリフ

デッド・クリフ

  • メディア: Prime Video