オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『観相師 -かんそうし-』

관상(The Face Reader), 139min

監督:ハン・ジェリム 出演:ソン・ガンホイ・ジョンジェ

★★★

概要

凄腕の観相師がクーデターに巻き込まれる話。

短評

人相を見るだけで相手のことが分かってしまう男を描いた韓国映画。主人公は流石に創作なのだろうが、クーデター自体は史実らしい。コミカルなサクセスストーリーとして始まったかと思いきや、韓国映画によく見られる“ジャンルの転換”のよって壮大な歴史劇と化す一作である。「観相」という少々胡散臭い占い的行為に対する距離感が絶妙で、ファンタジーに落ちることはないが、偽物と断じるわけでもない。その能力故に悲劇に巻き込まれてしまう者の、実に因果な物語に仕上がっていた。悪い意味での韓国映画らしいベタベタな演出も多いが、史実への絡め方も上手く、全体としては面白かった。

あらすじ

顔を一目見るだけで相手のことを見抜くことができる凄腕の観相師キム・ネギョン(ソン・ガンホ)。その噂は都まで届き、芸妓館の女主人ヨノンにスカウトされ、義弟ペンホンと共に都へと向かう。彼の腕はたちまち評判となり、王や側近からの依頼を受けるほどの成功を収めるが、王の死を受けて勃発した謀反に巻き込まれることになる。

感想

「都に出て金儲けするぞ!」と意気込んで芸妓館へと向かうも、酒と女の手厚いもてなしを受け、酔っ払った内に2年間のタダ働き契約を結ばされるネギョン。「この苦境から抜け出すには偉い人とのコネ作りだ!」と役人に取り入って、そこから“採用担当”の職を得るまでに成長する。この序盤は、芸妓の“ボディ・チェック”を屏風の裏に隠れて覗くシーンに象徴されるような(ペンホンの「どけ!」には同じリアクションをするはず)、ソン・ガンホのコミカルな演技が活きた展開となっている(ジャンル変更は韓国映画というかソン・ガンホ出演作に多いのか)。

ところが、王の死を受けて雰囲気が一転。先王の弟・首陽大君は「素人が見ても分かる逆賊の相」の持ち主で、ネギョンは「こいつはなんとかせねば!」と奮闘するのだが、「“歴史の大波”には勝てなかったよ……」という結末を迎える。

冷静に考えて、「こいつは顔つきが悪いから悪人!よって不採用!」なんてふざけた話ではないか。全てを見通すかのような特別な才能を持つネギョンだが、彼の能力や行動が及ばないこともある。そこには一種の思い上がりが生じ、それ故に自身の限界を知り、息子が命を落とすことになる。観相という技術や能力自体は認めるが、それを過度に持ち上げることのない、適度な距離感を保った一作だったように思う。現代に至るも「顔を見ればその人が分かる」なん人は後を絶たないが、思い上がりも甚だしい。

「男が寄ってこないの」と嘆く芸妓の鼻にスイカの種をつけるネギョン。芸妓はホクロのタトゥーを入れ、見事に人気嬢となる。古くから観相という文化が根づいているために、韓国では整形手術がカジュアルに受け入れられるようになったのだろうか。これと同じく、首陽大君の額にホクロ・タトゥーを入れて改造する場面があるのだが、こちらは「人相の変化によって運命を変える」という狙いの持つ意味合いが異なっており、観相万能論との対比になっている。

とは言え、観相という行為を全面的に否定してしまっては映画にならない。多くの人が他者の第一印象を“顔”で判断するように、そこに一定の説得力が生じてしまうのも事実である。“顔で判断する”という行為の存在自体が何かしらの意味を持つ。人の顔だけを見て時代を読めなかったネギョンだが、彼のハン・ミョンフェに対する言葉が歴史を動かし、予言は成就される。悪人面という言葉に逆の因果を感じることがあるのだが、ミョンヘのエピソードも同じような性質を備えているように思う。

「黄標政事」というコネ採用制度が登場する。これが創作ならあまりに歴史用語として訳が上手すぎると思ったら、やはり史実だった。

観相師(字幕版)

観相師(字幕版)

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