オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『UNIT7 ユニット7 麻薬取締第七班』

Grupo 7(Unit 7), 95min

監督:アルベルト・ロドリゲス 出演:アントニオ・デ・ラ・トレ、マリオ・カサス

★★★

概要

セビリアの麻薬捜査班。

短評

邦題が同じ意味の言葉を三度も繰り返しているスペイン映画。そこまで大切なことなのか。セビリア万博開催に向けて経済が成長する一方で麻薬の取り締まり件数も激増し、その強引過ぎる手法が捜査員たちを蝕んでいくという内容である。ありきたりと言えばありきたりな話なのだが、ポンコツ新人が極悪に成長する一方で強面のベテランが穏健化したり、一応は犯罪の取り締まりをしているのに市民から猛反発を受けていたりして、そこそこ見応えのあるドラマに仕上がっていた。ただし、アクションについては冒頭の追跡劇がピークだったのは残念だった。

あらすじ

1987年、セビリア。1992年の万博開催に向けて準備が進む一方で、麻薬取締第七班“ユニット7”の仕事も増加の一途を辿っていた。彼らは合法非合法を問わない強引な捜査手法によって摘発件数を劇的に増やすが、その一方で市民から苦情の声が上がるようになる。それでもユニット7の暴走が止まることはなく、密告者の利用や押収物の横領、暴行・脅迫といった違法行為が常態化していく。

感想

違法行為を躊躇うことなく暴挙に打って出るユニット7は、いわゆる“悪徳刑事”に分類されるのだが、彼らの第一目的が金儲けではない点が本作の特徴だろう。あくまで「取締件数増加のためなら手段を選ばない」というモットーの下での行動であり、それは街にとっても有益なことのはず。その一方で、「摘発激増、苦情も10倍」と揶揄される程に捜査手法は強引そのものであり、決して“英雄”というわけでもない。

ユニット7の言い分としては、「犯罪の摘発のためであれば“やむを得ない”」といったところだろう。彼らが摘発件数を増加させたことは事実であり、その結果自体は“正義”である。しかし、社会の要求を満たすために反社会的な行為に走るという矛盾が生じ、その矛盾が捜査員の心を蝕む。結果が正しいからこそ、間違った行為を止められなくなる。

それに加えて、市民の反発である。ユニット7はマフィアやギャングのような“ヤバい人たち”だけでなく、広く市民を敵に回しているように見える。車や看板に「ホモ野郎!」と落書きされ、愛犬に火をつけられさえする(この映像はショッキング。CG処理だろうけど)。詳しい事情は分からないが、貧民を中心に麻薬に手を出している人が非常に多く、万博という華やかな歴史の裏にある“影”を描いた一作ということになるらしい。

糖尿病持ちで妻エレナ(インマ・クエスタ)と穏やかに暮らすはずだった青年アンヘル。病気のせいもあってか昇進がままならず、ある日、金のために押収した麻薬を懐に(実際には股間に)入れる。仲間たちは戸惑いながらも咎めることはせず、これを機に彼らは暴走の一途を辿ることになる。そこまで強い説得力があるとは思わないが、“一線を越える”理由の部分にコンプレックスを入れたことで、その反動としての暴走が納得できるようになっていたように思う。

逃走犯にナイフを突きつけられたポンコツアンヘルを救出し、売人たちをパンツ一丁の刑に処す暴力刑事だったラファエル(後者の行為が彼自身に返ってきたのは笑った)。ヤク中の家出娘(ルシア・ゲレーロ)と知り合い、「もしかしてやりすぎちゃってたかなあ……」と自身の行為に疑問を抱くようになる。分かりやすくアンヘルとの対比要員である。家出娘がラファエルの家を出る時に「引き止めてよ」と言うのだが、男にそれを期待するのはやめた方がよい。

本作の麻薬取り締まりは「経済成長の裏で広がる闇を潰す」という性格を持っているため、少々構図は異なるのだが、東京オリンピック開催に向けて風俗産業(及びアダルト産業全般)が浄化されるという話があった気がする。果たしてどうなったのだろう。

UNIT7 ユニット7/麻薬取締第七班(字幕版)

UNIT7 ユニット7/麻薬取締第七班(字幕版)

  • 発売日: 2016/05/11
  • メディア: Prime Video