オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『エンド・オブ・ウォッチ』

End of Watch, 108min

監督:デヴィッド・エアー 出演:ジェイク・ジレンホール、マイケル・ペーニャ

★★★

概要

LAPDの日常。

短評

デヴィッド・エアーに『スーサイド・スクワッド』で求められていたのはこれだったんだろうなあ……。本作の主人公は決して“正義の人”な警察官ではないが、悪徳警官というわけでもく、時に職業的正義感を発揮し、それを後悔したりもする。銃弾飛び交う凶悪犯罪がそこかしこに溢れ、バラバラ死体に遭遇したりもする。しかし、仕事を一歩離れれば彼らにも“普通の生活”があったりして、混沌とした世界が見事に描かれていた。大手スタジオが安全志向によって『スーサイド・スクワッド』を“清潔なヒーロー映画”にしなければ、果たしてどんな映画になっていたのだろう(『ブライト』のような他作品を観るとあまり期待はできないが)。

あらすじ

ロサンゼルス、サウスセントラル。その中でも特に凶悪犯罪の多いニュートン地区で働くテイラー(ジェイク・ジレンホール)とザヴァラ(マイケル・ペーニャ)の二人の警察官。二人は日々対峙する凶悪犯罪に臆することのない優秀な警察官だったが、ギャングに命を狙われることになる。

感想

基本的には“エピソード羅列型”の作品である。ストーリーらしいストーリーはなく(一応はあるが、それが“中心”ではないことは明らか)、主人公二人が楽しく会話しながらパトロールしていると無線連絡が入り、現場に急行すると大体凶悪犯が待っている。相手はすぐに暴れるか銃を取り出すし、対する二人も荒っぽい(ザヴァラが黒人とファイトする時にテイラーが“セコンド”なのが笑えた)。恐怖を感じる神経が麻痺していないと務まらない、命がいくつあっても足りない仕事である。ロサンゼルスは怖い。

映画的な誇張があるにしても、市民やギャングが自由に銃を所持できるのだから、ある程度の真実味はあるのだろう。これはすぐに容疑者を撃ちたくもなる。と言うか、撃たずにはいられない。そうしないと自分が死ぬのだから。誘拐事件の通報を受けて訪問すると子供がダクトテープで拘束されて家にいるし、ちょっと理解を超えた世界である。

彼らが接する事件の中には明らかに“大事件”と呼べるようなものもある。たとえば人身売買の疑われる移民の監禁部屋や大量の麻薬とバラバラ死体(生贄云々のメッセージ付)の残された家を発見したりする。ただし、彼らはあくまで警察官(officer)であり、刑事(detective)ではないため、見つけたらそれで終わり。前者は移民局に「余計なことしやがって」と追い返されるし、後者の真相を追いかけるような展開にもならない。“物語”を作るのであれば二人が事件を解決すべく独断で捜査する流れになるのだろうが、事件は彼らの横を通り過ぎていき、彼らはすぐに次の現場へと向かう。これが“日常”なのだから、ちょっとではなく理解できない世界である。

火事の現場を発見し、燃える屋内に飛び込んで子供を救助するテイラーとザヴァラ。この英雄的行為に対して叙勲というご褒美が待っているものの、ザヴァラは妻ギャビー(ナタリー・マルティネス)と「他人の子供のために死ぬ気?あんたは消防士じゃないでしょ」とケンカになるし、テイラーは「お前が先に入ったから追いかけただけ。二度とやらない」と複雑な表情。警察官には勇気を持って行動してほしいと思う一方で、家族の言い分も大いに理解できる。そこには当然葛藤があるはずなのだが、迷っている暇すらなく次の事件が待っている。この割り切れない感じがとても良かった。

テイラーは自分の日常をビデオカメラで記録しており、本作はそれにボディカメラや車載カメラの映像を加えたファウンド・フッテージ方式となっている。現場に飛び込んだかのような臨場感や緊迫感はあるものの、「これは誰が撮ってるの?」という映像もあって、強いてこの設定を用いる必要はなかったのではないかと思う。

テイラーの恋人ジャネット(アナ・ケンドリック)が可愛い。二人の結婚式で“先輩奥さん”のギャビーが送るアドバイスが二つ。一つは、常にさせること。もう一つは、変態になること。なお、ザヴァラが目撃してしまって真似しようとしたギャビーの両親の変態行為は、ギャビーに受け入れられなかった模様。

エンド・オブ・ウォッチ(字幕版)

エンド・オブ・ウォッチ(字幕版)

  • 発売日: 2020/12/25
  • メディア: Prime Video