オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『北極のナヌー』

Arctic Tale, 84min

監督:アダム・ラヴェッチ、サラ・ロバートソン 出演:クイーン・ラティファ

★★★

概要

シロクマとセイウチの生育記録。

短評

ナショナル・ジオグラフィック提供のネイチャードキュメンタリー。「このままでは北極の氷が融けてナヌーたちが生きられなくなってしまいますよ」という啓発的な目的を持った一作なのだが、最後以外は説教臭いところなどなく、「シロクマの赤ちゃんが可愛いなあ」「北極の環境は過酷だなあ」「映像が綺麗だなあ」と素直に楽しむことができた。原題が「Arctic Tale(北極物語)」なのに対して邦題が「北極のナヌー」なのは、ナヌーと同じくメインで登場するセイウチのシーラが、ナヌーほどは可愛くないからなのだろう。ルッキズム

あらすじ

氷の王国──北極に春が訪れ、母と双子の弟と共に巣穴から出てきた赤ちゃんシロクマのナヌー。一方、セイウチの赤ちゃんシーラもまた母や子守と共に人生の第一歩を踏み出そうとしていた。果たして、彼女たちは過酷な北極で生き抜くことができるのか。

感想

シロクマことホッキョクグマは非常に大きい。クマ科でも最大のサイズを誇る大型肉食獣である。ナヌーが超絶キュートなのも巣穴から出てきてしばらくの間だけで、すぐに大きくなってしまう。こうなると触ってモフモフしたいとは思えない。しかし、ヒグマやグリズリーとは違い、「クマって怖いなあ……」とはならないところにシロクマの面白さがあるように思う。成長したシロクマはある種の気高さを湛えており、一面に広がる白銀の世界の王者たる風格がある。これはきっと“距離”の問題なのだろう。シロクマは人間の生息域では動物園にしかいないため、危険な存在として認識する必要がなく、その美しさを楽しめるのではないだろうか。

とは言え、“釣り”要素としての赤ちゃんシロクマはとっても可愛い。特に、巣穴から出てきたばかりのナヌーと弟がじゃれ合いながら坂道を転げ落ちる姿なんて悶絶ものだった。

北極と言うと「寒さ」が過酷なように思えるが、そこに生きる者たちにとっては、むしろ“快適”な環境の方が過酷なのだろう。実際にナヌーが直面する危機も、寒さではなく飢えによるものだった。「獲物が少ないから面倒見きれんわ」と予定よりも一年早い独り立ちを余儀なくされたナヌー。彼女は上手く狩りをすることができず、オスシロクマが狩った獲物のお裾分けを狙う。デカいセイウチを仕留めたのに「こっち来んな!」とめっちゃ怒るオスだったが、最後にはナヌーが粘り勝ちしていた。彼らの中ではどのようなルールがあるのだろう。栄養豊富で貴重な内蔵を食べ終えたら譲ってもらえるのか。それとも、ホッキョクギツネと同じように食べ残しを漁っているだけなのか。

とは言え、飢えに寒さが重なると流石にキツいらしく、弟くんが命を落としている(だから彼には名前が与えられなかったのか)。ナヌーと母が最後の瞬間を看取るように寄り添う姿には胸が痛んだ。

セイウチの育児システムが興味深い。母親と子守が一緒に赤ん坊の世話をするのである。たとえば母が海からの上がり方を教えている時に、子守は周囲の警戒をしている。これはセイウチの出産回数が少なく、赤ん坊が群れにとって貴重であることが理由なのだとか。

なんとか過酷な環境を息抜き、成獣へと成長したナヌーとシーラ。彼女たちは番を見つけ、命が受け継がれていくのだ。セイウチのオスは最大50時間も歌い続けて求愛するとのことで、見方によっては酷くストーカー的だと思ったのだが、オスとメスが顔を寄せて抱き合っている様子が人間的で面白かった。一方、シロクマの方も相手を「恋人」を称していたが、ナヌーの母の子育てを思えば、オスは種を撒き散らして去るだけであり、これは恋人とは言い難いように思う。その上、発情したオスは赤ちゃんを殺して母クマを襲おうとするのだから、とんでもない連中である。

他の生物の描写だと、ウミガラスの潜水が幻想的で美しかった。イッカクは「一角」の名を持っているのに、あれは「牙」らしい。詐欺だろ。

ところで、北極圏では最強のはずのシロクマが“白い”のは何故なのだろう。景色に紛れて天敵から身を隠す必要などないように思うのだが。狩りの時に隠密効果があるのかな。

北極のナヌー(字幕版)

北極のナヌー(字幕版)

  • 発売日: 2015/06/24
  • メディア: Prime Video