オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『グラウンドブレイク 都市壊滅』

Zemletryasenie(Earthquake), 104min

監督:サリク・アンドレアシアン 出演:コンスタンチン・ラヴロネンコ、ヴィクター・ステパニヤン

★★★

概要

アルメニア地震が起こる話。

短評

アルメニア地震映画。 B級パニック映画のようなタイトルとパッケージだが、1988年に発生したアルメニア地震(別名スピタク地震)を基にした一作とのことで、思っていたよりもずっと真面目な作品だった。災害時に起こりうるドラマを欲張って“全部盛り”にしたストーリーは凡庸に感じられたものの(叙情的な音楽もくどい)、土埃舞う瓦礫の山のセットは相当リアルに作られており、地震大国の一員として、改めて「地震は怖いなあ」と思った。

あらすじ

アルメニアのレニナカンを地震が襲う。地面が割れ、建物は崩れ落ち、一瞬にして街が壊滅する。生き残った者たちは──ある者は死体や負傷者を運び、ある者は瓦礫の下に埋もれた人を救おうとし、ある者は出産を控え、ある者は火事場泥棒に走る。多くの人が命を落とす中、誰もが必死に生き延びようとする。

感想

アルメニア地震では2万5000人以上が命を落としたとのことで、これは東日本大震災の犠牲者数を悠に超える数字である。日本だと阪神大震災で崩れた高架や3.11の津波後の光景が今なお強烈な印象を残しているが、これらの大震災以上の被害が出たということは、やはり人口の密集度や建物の耐震性能の影響が大きいのだろう。地震が発生した瞬間に飛行機に乗っている男が外を眺めているのだが、ものの見事に全ての建物が崩壊していた(このCGは少し安っぽい)。地震発生前に紹介される人物の生存率が比較的高いので勘違いしそうになるが、この崩落に巻き込まれた“描かれない使者”の数は想像を絶する。

主人公に相当するキャラクターのローベルト。彼は地震の8年前に交通事故で両親を亡くしており、相手の男が出所した日に会いに行こうとしていたところで地震発生である。やりきれない思いを抱えながらも、救出作業を共にすることでローベルトの心境に変化が現れる。他にも、娘婿のことを嫌っていた父が改心する場面が見られ(妻子ありの不倫男に娘が孕まされれば反感を覚えて当然だと思うが)、地震という自然現象が、人間社会の小さないざこざを否応なく飲み込んでいくことが分かる。もはや争っている場合ではない。協力するより他にないのである。これは非常に皮肉な話だと思うが、人間は危機を前にした時にだけ団結する生き物である。

そんな団結を乱す火事場泥棒。悲しいかな、彼らのような存在がいることもまた事実だろう。映画を盛り上げるためだけに暴れるような場面もあったが、災害を千載一遇の好機と考える人がいる事自体は不思議でも何でもない。財産の持ち主は死んでいたり、それを守るどころではないのだから、はっきり言って“ボーナスステージ”である。彼らの行動に憤ることもできるのだろうが、不当ではあってもそれで命を落とすわけではない。他人が得をすることに嫉妬するよりも、災害の一部と捉える方が精神衛生上よろしい。

ローベルトが必死に救出しようとするリリット(タイトフ・オーヴァキミヤン)。彼女は足蹴にしていた男から送られたテーブルのおかげで一命を取り留めるのだが、これが少々複雑である。付き纏い男は迷惑だが、リリットが「墓場で働いてる奴なんて不吉で嫌」と穢多非人差別のような危うい発言をしており、彼女の救出が大きな見せ場となっているのは感情移入の面で微妙だった(助かった後のリリットの「ありがとう」に対する男のリアクションは良い)。

このフラれ男が「俺がアルメニア人だからダメなのか」と口にしている場面も気になった。「カーチャ」や「ワーニャ」というロシア語の名前や、「ダバイ、ダバイ」というお馴染みのフレーズが何度も聞こえてくるため(「急げ」以外に「いいぞ」という意味でも使われており、割と万能な言葉らしい)、アルメニア国内でもロシアの影響が強い地域であることが察せられる。シンガポールで華僑に支配されるマレー人みたいな感じなのだろうか。

グラウンドブレイク 都市壊滅

グラウンドブレイク 都市壊滅

  • メディア: Prime Video