オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ALONE アローン』

Mine, 106min

監督:ファビオ・レジナーロ、ファビオ・グアリョーネ 出演:アーミー・ハマーアナベル・ウォーリス

★★

概要

砂漠で地雷を踏んで動けなくなる話。

短評

砂漠が舞台のソリッド・シチュエーション・スリラー、のはずだったのだが……。この状況を何らかの隠喩として描くのであればそうなるが、その隠喩の方が前面に出ており、もはや隠喩ではなくそちらがメインだった。その分かりやすさは親切なのかもしれないが、スリラーの部分がなおざりとなっているのではつまらない。また、極限状況で幻覚を見るのも理解はできるが、流石に多用しすぎである。

あらすじ

テロリスト暗殺任務に失敗し、その場から逃亡したスナイパーのマイク(アーミー・ハマー)。相棒のトミーと共に味方との合流地点を目指して砂漠を越えようとしていると、ドクロの描かれた看板を発見する。トミーは平気だとそのまま進むが、あえなく地雷の餌食に。また、マイクも地雷を踏んでしまい、その場から動けなくなってしまう。

感想

砂漠で一人ぼっちなマイクの前に地元民のベルベル人が現れて、「一歩踏み出せ」「自由になれ」とばかり言うものだから、どういう話なのかはこの時点で明白である。三十郎氏が思うに、こういうのは極限状況を生き延びた上で、「ああ、このサバイバルにはこんな意味があったのか」と納得するべき要素であり、前面に出して描くべきものではないのではないかと。マイクが経験する出来事は相当に過酷なはずなのに、トラウマ克服体験記の方ばかりを重視してしまうと、それが伝わってこない。もう国内で勝手にやってろよ、と。

その上、トラウマの描き方がくどい割には深みを持たせようとして曖昧な感じになっている。三十郎氏の嫌いな中途半端さである。そして、散々思わせぶりな演出をした挙げ句に「よし!ジェニー(アナベル・ウォーリス)と結婚するんだ!」なんて決心されても、ただ反応に困るだけである。

ドラマの方を前面に出してしまったため、サバイバル描写はあまり面白くない。「これ絶対に無理なやつだろ……」と絶望する規模の砂嵐はその場に跪いているだけで堪え忍べるし、オオカミやテロリストに襲われたかと思えば幻覚。とても冷える砂漠の夜に焚き火が消えてしまったのに特に問題なし。小便を飲むことはあるが乾きが命を脅かすこともない。そもそも過酷さを上手く表現できていない上に、その過酷な状況まで幻覚で済ませてしまうとなると、もう何が大変なのだかよく分からなくなってしまう。

そもそも本作は出だしから怪しいところがあった。テロリストの暗殺任務に就いているはずのマイクが、「結婚式で新郎の父を撃てない!」と言い出してミッション・インコンプリートとなる。阿呆かと。撃てよ。嫌なら軍隊になんて入るなよ。無線で連絡を取った上官も「任務失敗したしな~。味方部隊が通るまでとりあえず待っててよ」と救助に乗り気でないことで物語を成立させるべくアシストをしていたが、そこは助けてやれよ。助けた上で軍法会議にかければよい。

本作の「一歩踏み出す」という言葉は、トラウマを克服して前に進むことを意味しているのだが、現在三十郎氏はシオランの『生誕の災厄』を読んでいる真っ最中であり、別の意味で「自由になってもいいんだよ」と思いながら本作を観ていた。生存という苦役から解放されることこそが、本当の意味での救済である。人を撃つべきなのかも悩まなくていいし、トラウマに苦しめられることもない。何も背負わなくてよい。トラウマ克服のハッピーエンドありきなしょうもないオチのせいでそれすら果たされなかったマイクはお気の毒さま。人は皆その一歩というゴールのために生きているに過ぎないのに。

ALONE アローン(字幕版)

ALONE アローン(字幕版)

  • 発売日: 2018/10/19
  • メディア: Prime Video