オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ROAR/ロアー』

Roar, 93min

監督:ノエル・マーシャル 出演:ノエル・マーシャル、ティッピ・ヘドレン

★★★

概要

猛獣に囲まれた生活。

短評

驚愕のアニマル映画。冒頭に「訓練を受けず自由に演じた動物たちには、共同監督・共同脚本にクレジットされる権利がある」とある通り、ストーリーも何もあったものではないのだが、とにかく動物の数と近すぎる距離感が尋常ではない。それもただの動物ではなく、ライオンやトラといった猛獣である。きっと動物たちはじゃれ合っているだけなのだろうが、キャストは生きた心地がしなかっただろう。決して襲ってくるわけではない動物たちが引き起こすパニックはどこか滑稽でありながら、ビビる人間の方は正に迫真だった。

あらすじ

動物の研究者であるハンクは、アフリカでライオンやトラに囲まれた生活を送っていた。彼がハンターによる狩猟を防ぐべく奔走している一方で、研究費が下りるなりアフリカへと単身で飛んだ父を家族が訪ねてくる。しかし、ハンクは家を空けており、何も知らない家族の前には家がライオンたちに占拠された光景が広がっていた。

感想

家族がギャーギャー騒いでビビり倒していると、ようやくハンクが帰宅してハッピーエンドである。たったこれだけの話である。ただし、相手は猛獣。しかも大群である。家の中を所狭しと闊歩し、どの部屋に入っても、どの窓から脱出してもライオンがいる。とてもじゃないが「ギャーギャー騒ぐ」の一言では片付けられない。完全に人に慣れてはいるのだろうが、よくもまあこれだけの数のライオンを集めて撮影したものだと感心させられる。この凄さは文字では表現できない。そのための映画だと言える。

きっと本作は“動物映画”の主なターゲットである子供たちの方が“ファミリー映画”として素直に楽しめるのではないだろうか。無邪気にじゃれついてくるライオンたちに人間が本気で恐怖する姿は滑稽なはずなのに、一歩間違えば致命的な事故に繋がりかねないと理解しているからか、全編に異様な恐怖が漂っていた。「楽しい」というよりも「よく撮れたな」と感心する気持ちが先行する。ハンクがオスライオンのケンカを止めに入るシーンなんて見ているこちらが冷や冷やした。ただし、観ている内に慣れが出てきて、妙に笑えたりはする(BGMもコミカルに変化する)。

“襲われている”シーンもさることながら、「危険じゃないじゃん」「赤ちゃんライオン超カワイイ」と理解した後のシーンも凄い。ライオンとベッドで添い寝し、顔を撫でてあげる。怖がるシーンは感情をそのまま出せばよいが、恐怖を抑えて穏やかな表情を見せるというのもなかなかに至難の業なのではないかと思う。

動物たちは訓練を受けていないとのことだったが、ハンターに撃たれて坂を転げ落ちたり、その後、瀕死で横たわっていたりするので、少しは“演技”ができるライオンもいたのではないかと思う。

ライオン、トラ、ヒョウとネコ科の猛獣たちが大活躍する一作なのだが、意外にも最も凶暴なのはゾウだった。船を、樽を、持ち前の怪力と牙で破壊している。穏やかなイメージのあるゾウだが、本気を出すと怖い。

一家の娘メラニーが可愛いと思ったら、なんとメラニー・グリフィスだった。魔女のようになった現在の姿からは想像もできない可憐さである。なお、彼女は母親役ティッピ・ヘドレンの実娘であり、へドレンは本作の撮影時にハンク役ノエル・マーシャルと夫婦である。映画の公開が1981年。夫婦の離婚が1982年。実際に怪我人も出た(撮影監督のヤン・デ・ボンも)という本作の過酷な撮影が影響したのかは不明である。

ちなみに、劇場公開時のタイトルが『ロアーズ』で、ビデオ版が『ロアーズ/猛獣一家はおおさわぎ!』。『ROAR/ロアー』はDVD版のタイトルなのだとか。なお、「roar」は「咆哮」という意味である。「ズ」は要らないのでは?

ROAR/ロアー

ROAR/ロアー

  • 発売日: 2018/06/27
  • メディア: Prime Video