オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』

A Ghost Story, 92min

監督:デヴィッド・ロウリー 出演:ケイシー・アフレックルーニー・マーラ

★★★

概要

お化けの一生。

短評

KKKみたいに白シーツを被った地縛霊視点の物語。冒頭から壮大な音楽と宇宙の映像を合わせてくるテレンス・マリック的な意識の高さに嫌な予感がし、画面の四隅をラウンドさせているのも「“普通の映画”とは一風違うんだぜ」と気取っているようで鼻につく(後で理由の説明はあるが納得はいかない)。「これは抽象的で苦手なやつに違いないぞ……」と身構えたものの、意外と普通に楽しめた。ホラー映画では人を怖がらせている幽霊を、彼らの視点から見るというのが新鮮かつコミカルだった。

あらすじ

交通事故で夫(ケイシー・アフレック)を亡くした妻(ルーニー・マーラ)。妻が霊安室から立ち去ると、夫がむくりと起き上がり、彼はそのまま自宅へと戻る。失意の妻を無言で見守る夫だったが、やがて妻は家を去り、夫は一人家に取り残される。

感想

食事をするのも一人(差し入れのパイを容器に取らず、涙しながら貪り食って吐く描写に、夫の死を受けて感情のやりどころがない感じがよく出ている)、ベッドで眠るのも一人(抱き合って眠るシーンとの対比)。悲しみに暮れる妻だが、それでも生者は皆いつかは立ち直る、彼女が男を家に連れ込みかけると、夫の霊が嫉妬に駆られて“電球をピカピカ”させる。ホラー映画なら怖い場面のはずだが、霊視点で事情が分かっていればコメディである。

その後、妻が引っ越す前に壁の裂け目に一通のメモを差し込み、霊はそれが気になって成仏できないという状況が完成する(シーツが邪魔で掴めないのが笑える)。きっと病院の壁に現れた“光の扉”を通るのが正規の成仏ルートで、それを無視した夫は地縛霊化したのだろう。引っ越してきた移民一家を脅かして立ち去らせ(シーツ男が皿を投げる絵面が笑えた)、右側だけワキ汗の凄いハゲ男の御高説を聞かされ、家はやがて廃墟になって取り壊される(ここで木が割れてメモを取れそう)。跡地には立派なビルが建ち、霊が“飛び降り自殺”すると、なんと西部開拓時代へとジャンプする。

自殺までは普通に時系列順だったので大いに戸惑ったのだが、死者と生者では時間の概念が異なると考えるしかないか。霊がいる時点でなんでもありである。更に時が流れて夫婦が入居し……という流れで無事成仏となるのだが、ここで気になる点が。開拓時代からやって来た霊の視線の先には、引っ越す妻を見つめる霊(=自分)がいる。「開拓時代からずっとその場所で見守ってきた」という設定を表現するために古いフィルムのような画面枠を採用しているのだと思うが、霊は元々現代人なわけで、彼の視点がレトロ仕様なのはおかしくないか。

ワキ汗ハゲの御高説の内容は、「人は皆死ぬし、人類も地球もいつか滅ぶ」「だから創作なんて結局は無意味になる」というもの。本作は霊が時間を超越することで“滅ばないもの”──歴史を肯定しているのだが、これには同意できかねる。幽霊(=何かしらの観察者)の存在を前提にしている時点で、それがフィクションならばハゲの言う通りにならないだろうか。観察によって存在が確定するならば、その観察者を霊に託してしまうのはどうなの?という気がする。霊なんていないのだから、誰も見てくれませんよ。

もっとも、三十郎氏は創作が無意味だと思っているわけではなく、自分が生きた証が消えることを恐れる必要などないと考えている。その時、その瞬間に、自分が表現したいものを創り出し、見たり聞いたり、読んだりしてくれる人がいれば、その時点で十分に有意義ではないだろうか。創作者だと「残したい」と考えるのかな。

冒頭で宇宙の映像が出てきた時には不安になったが、長回しが多めの静謐な映像は美しかった。特に、窓から差し込んだ光が壁に反射し、その揺らめきが夫の霊の存在と重なるかのような演出が気に入った。

A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー(字幕版)

A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー(字幕版)

  • 発売日: 2019/12/03
  • メディア: Prime Video