オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『奇蹟 ミラクル』

奇蹟(Canton God Father), 127min

監督:ジャッキー・チェン 出演:ジャッキー・チェンアニタ・ムイ

★★

概要

香港に出稼ぎにきた男がマフィアのボスになる話。

短評

フランク・キャプラの『一日だけの淑女』(及びセルフ・リメイクの『ポケット一杯の幸福』。両作共に未見)の香港リメイク作品。アクションとコメディの比率が明らかに後者に傾いている一作であり、ジャッキーに期待するものとは異なっていた。設定自体は面白そうなのだが、テンポの悪さを感じさせる部分が多々あり、また、人情ドラマにも乗り切れなかった。最終決戦の場面なんかにはジャッキーらしさが出ていて楽しかったので、もう少しバランスを工夫してほしかった。

あらすじ

香港に出稼ぎにきたものの、詐欺に遭って無一文となったコオ(ジャッキー・チェン)。ひょんなことからマフィアの抗争に巻き込まれ、更には勘違いからボスに後継指名されてしまう。コオは抗争の原因を作って死んだ男の娘ルーミン(アニタ・ムイ)を目玉にしたナイトクラブの経営しつつ、自分に幸運を運んできてくれたバラ売りおばさんに恩返ししようと奮闘する。

感想

状況設定は悪くない。ボスの遺言を聞き間違えた手下たちに新ボスにされてしまったジャッキーが、「ムリだよ」と戸惑いながらもマフィアになる。外様のボス就任に不満を持った手下たちをカンフーの腕前で納得させるのも良い。勘違いが切っ掛けで成り上がる構図はどたばたコメディに相応しく、黒社会が舞台ならばカンフーの出番も多そうである。

しかし、敵対勢力タイガーとの抗争もほどほどに、物語は“人情もの”へと舵を切る。バラ売りおばさんが「上海にいる娘には金持ちって嘘ついてきたけど、婚約者をつれて帰ってくるからバレちゃう」と言い出したので、彼女を“金持ちに偽装する”という展開に。ここから先のテンポが非常に悪く、アクションの比率も大きく下がる。また、「娘に二重の嘘をつくのはどうなのか」という引っ掛かりもあって楽しめなかった。なお、最後はなんとか“騙し通す”ことに成功してハッピーエンドとなるのだが、それでいいのか。正直に告白した上で、「それでもいいんです」ではダメなのか。

金持ち偽装作戦の途中で冒頭の詐欺師(トン・ピョウ。ジャッキー映画の常連の人)が出てきたり、香港中のマフィアたちに名士を演じさせようとするのは面白かったが、勘違いからマフィアになってしまうのとは異なり、“そもそもの状況設定”に乗り切れなかった。

アクションが少ないとは言っても、やはりジャッキー映画なのであることにはある。“何を作っているのか分からない工場”での最後の戦いは、やたらと沢山あるロープの使い方が楽しいシーンに仕上がっていた。高く、細い足場で軽快に動き回る姿や、“縄跳び”を入れてくるコミカルさがジャッキーらしい。とても面白いシーンではあるものの、「見たいのはやっぱり“アクションの中のコメディ”なんだよなぁ」とそれまでの退屈さへの不満が再び募る結果となった。

アクション以外ではナイトクラブの演出が良かっただろうか。カットの切り替えでルーミンの衣装が変わり(歌は共通)、一定の時間経過とクラブの経営成功が分かりやすく描かれる。華やかなミュージカル映画のような演出だった。

奇蹟 ミラクル (字幕版)

奇蹟 ミラクル (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video