オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ポスト・アポカリプス』

The Quiet Hour, 85min

監督:ステファニー・ジョアランド 出演:ダコタ・ブルー・リチャーズ、カール・デイヴィス

★★

概要

地球がエイリアンに侵略される話。

短評

ハリー・ポッターLOTRの大ヒットを受け、ファンタジー映画が粗製濫造されていた時期がある。両作の巻き起こしたブームにあやかろうとした後続作品が同様の成功を収めることはなかったが、その中の一つに『ライラの冒険 黄金の羅針盤』という作品がある。高額の予算を費やし、豪華キャストが脇を固めた同作のヒロインこそが本作の主役ダコタ・ブルー・リチャーズであり、彼女の成功は約束されていたかに思えた。しかし、一作目の不発を受けて続編は制作中止となり、眩いばかりに輝いていたはずの彼女のキャリアも萎んでいった。そんな彼女の2014年の主演作品が本作である。これだけ本編とは無関係なことばかりをダラダラと書き連ねた時点でお察しいただけるかと思うが、「出演者を目当てに観た映画はハズレ」の例に漏れることはなかった。

あらすじ

地球が異星人の侵略を受けてから1年が経った。サラ(ダコタ・ブルー・リチャーズ)は、目の見えない弟トムと田舎の農場でひっそりと暮らしていたが、ある日、侵入者がやって来る。幸い、サラがジュードと名乗る男を取り押さえて拘束したものの、夜になると「男を返せ」と要求する集団が現れる。

感想

本作は地球外生命体による侵略を描いたSFスリラーなのだが、エイリアンは一切登場しない。空にそれっぽい宇宙船が浮かんでいるだけで、彼らが何をしているのかも描かれることはない。「地中の鉱物を採掘しているらしい」と台詞で説明されはするものの、SFらしい映像はほぼ皆無である。そこで何をするのかと言えば、“人間同士の争い”となるわけだが、これは「ドラマシリーズを引き延ばしてつまらなくなってきた」と感じる部分“だけ”を描いているに等しい。しかも、ドラマならあるはずの侵略という背景の描写すらないとくれば、本当に“つまらないところだけの寄せ集め”である。

それでも人間同士の争いに緊迫感や説得力があれば一定の面白さを担保できるのだろうが、本作にはそれもない。敵があっさり引き下がったかと思われたがやっぱりいて、その後、ちょこっと戦うだけである(この戦いの間抜けぶりは後述)。睨み合いが続く緊張状態なんてどこにもない。「1日に2時間だけ平穏が訪れる」という設定もなんのためにあったのか分からない。それならドラマの部分が……と期待したくなるところだが、サラがジュードとよろしくヤッちゃうようなお決まりの展開(その時は未遂だったが、後でサラが腹を触っているので、“そういうこと”ではなかろうか)から奥行きなど生まれるはずもない。

しかし、ライラ役で心奪われたダコタのファンであれば、本作を観ておいても損はないだろう。何と言っても主役なので、お目当ての出演者が少ししか見られないという不毛な事態に陥ることはない。また、大きく実ることのなかった彼女のキャリアとは対称的に、上半身の肉塊はたわわに(巨大と言ってもよい)膨らんでおり、子役時代からの成長ぶりを楽しむことができる。ちょうどリアルタイムで『アダムス・ファミリー』を観ていた男性が、『バッファロー'66』のクリスティーナ・リッチに思わず反応してしまうようなものだろう。なんとも立派に育ったものだ……。

男にレイプされかけて地味なブラジャー姿を披露し、男の妻に「レイプされかけた」と主張するためにTシャツをはだけ、死にゆくジュードの前ではダルダルのTシャツから深淵が覗く(『戦火のナージャ』のように「死ぬ前にどうか……」と思わず頼みたくなる)。眼福である。子役として成功しなかったのが奏功したのか、顔も「あの頃はあんなに可愛らしかったのに……」とはなっておらず、とても可愛い。ライラ役以外では『スキンズ』というドラマで少し注目されたに留まるキャリアとなってしまっているが、三十郎氏は密かにダコタに注目し続けている(出演作を観る機会は少ない)。

最も盛り上がるはずの銃撃戦(三十郎氏的にはダコタのおっぱいの盛り上がりの方が盛り上がるが)。敵の一人が「お嬢ちゃんにどうせ撃てないだろ~」と余裕をかまして普通に殺されるシーンも笑ったが、その後が酷かった。最後に残っていた敵が不意をついてジュードを撃つのだが、なぜか銃を持っているサラが撃ち返さない。なんのための銃だ。しかも、相手が拳銃なのに対してサラはライフルである。射程と命中精度で有利なのに。一人撃ち殺した後だから今更躊躇う必要だってないのに。夫のレイプ未遂を告げられた女が自ら“キャトラれ”にいく展開も含めて、完全にジョークだった。

なお、理由も分からぬままにやって来た宇宙船が、理由も分からぬままに消失して終劇となる。なんだそれ。

ポスト・アポカリプス(字幕版)

ポスト・アポカリプス(字幕版)

  • 発売日: 2019/10/09
  • メディア: Prime Video