オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ウォリアー・ゲート 時空を超えた騎士』

The Warriors Gate(勇士之門), 107min

監督:マティアス・ハーネー 出演:ユリア・シェルトン、ニー・二ー

★★

概要

ゲーマーが異世界でお姫様を救う話。

短評

中華系の異世界転生ファンタジー映画。「現実世界の負け組が異世界だと活躍できる」という設定にどうもノリ切れず、なんとも薄ら寒いものを観せられているような、観ているこちらの方が恥ずかしくなってしまうような話だった。全体的にコミカルな雰囲気の一作であり、中には笑えるジョークもあるのだが、これが「異世界にいる」という感覚を冷静に現実へ連れ戻してしまうのも良くない。中国の風光明媚な自然や武侠映画的なアクションは悪くなかったが、やはり根本的な部分でノリが合わない。

あらすじ

母(シエンナ・ギロリー)と二人で暮らす高校生のジャック。格闘ゲームの世界では“黒騎士”というキャラクターで活躍する一方で、現実世界ではイジメられていた。ある日、バイト先の店主チャンから箱を貰って帰ると(大きい。どうやって持ち帰ったのか)、その夜、男が部屋に現れて、姫スーリン(ニー・二ー)をジャックに任せていなくなってしまう。しかし、アルーン(デイヴ・バウティスタ)の部下がスーリンを連れ去ってしまい、ジャックは彼女を追って箱の中の世界へと飛び込む。

感想

ジャックの母親がシエンナ・ギロリーである。今回もちょい役だが、とっても綺麗な母親だった。本作自体が“異世界転生もの”のアニメやラノベみたいなノリだと思うのだが、「母親が美人」というのもアニメ的と言えるか。もっとも、不自然に若々しい感じはせず、全体的に不自然さだらけの一作における数少ない“まともなキャラクター”だったように思う。それが映画を面白くしてくれるわけではないが、『ドント・ハングアップ』では暗くて顔がよく見えず、『アブダクション・プロジェクト』は退屈過ぎてそれどころではなかったことを考えると、「シエンナ・ギロリーを見たい」という目的は本作が最も満たしてくれた。スーリンを演じるニー・二ーも可愛かった。

どういうわけだか分からないが魔法使いが“ジャックがプレイするキャラクター”を見て、「こいつは頼りになりそうだ」ということになる。戦士ジャオに「無能」と罵られながらも秘められし“勇敢さ”を発揮していくジャックなのだが(何も知らない相手に姫を託したジャオも相当な無能だと思う)、これは……都合がよすぎる。この発想が許されるのは、主人公が未就学児(ギリギリ我慢しても小学校低学年)までの話に限られる。異世界でちょこっと修行すれば立派に戦えるようになり、現実世界に戻るとイジメっ子に対してイキり倒す。ああ、恥ずかしい……。見ていられない……。

これに近い設定自体は異世界転生でなくともよくあると思うが、「現実ではダメだけど異世界ならやれるんだ!」というのは流石に受け入れられない。せめて自分のダメさを受け入れた上で努力し、成長する物語なら理解できるが、「ダメな自分は本当はダメじゃないんだ」と自己肯定してしまうのはちょっと……。

本来、この負け組の願望がダダ漏れな発想の恥ずかしさを埋めるべきは、「異世界にいる」という“感覚”なのだろう。主人公のダメっぷりを忘れさせてしまうくらいのスケール感で圧倒してしまえばよいのだが、現実世界で性格を踏襲してコミカルにしようとしたためか、どうも世界に入り込めない。「異世界では別人」というのもご都合主義だが、「(負け組な)現実世界の延長線上でも活躍できる」というのもまたご都合主義である。アルーンとブルータスのやり取りは好きだったが、それが“異世界感”を削いでいたことは否定できない。姫が現実世界でハチャメチャするのと異世界でダンスするのはひたすらに寒いだけだった。

魔法使いの能力がチートである。彼が元に世界に戻る箱の材料を探す旅に出て、ジャックとジャオが姫を救う。最後は魔法使いが窮地に駆け付けて助けてくれる。もう全部魔法使いだけでいいんじゃないかな。ジャックと姫が敵の要塞から投石機を使って脱出する一方で、魔法使いはジャオと“瞬間移動”で逃げ出す。最初から全員瞬間移動で連れていけよ。ジャックは落ちた先でアルーンと最終決戦するのだが、魔法使いは何をしているのか。

アルーンは姫と結婚することで帝位を獲得しようとしている。蛮族の王が結婚式が済むまでは姫に手出ししないのが律儀だと思った。彼に捕らえられたジャックとジャオに美女二人が“最後の晩餐”を運んできた時には“最後のサービス”もあるのではないかと期待したが(ジャックが「童貞のまま死にたくない(意訳)」と発言しているため)、意外にも奥手な蛮族にそこまでのサービス精神はないようだった。なお、危機を乗り越えたスーリンは“民衆の支持を得て”帝位につく。民衆が独裁者を支持するなんて、まったく怖ろしい異世界だよ!