オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ソードフィッシュ』

Swordfish, 99min

監督:ドミニク・セナ 出演:ジョン・トラボルタヒュー・ジャックマン

★★★

概要

凄腕ハッカーが銀行強盗させられる話。

短評

ハル・ベリーがトップレスで読書している犯罪映画。当該シーンについて、「両腕を使って上手く寄せている職人芸」との評価が雑誌か何かに載っていたことを記憶しているのだが、確かに上手く寄せていた。彼女は下着姿もセクシーで、“それなりには楽しめる”程度の話に上手く華を添えていたと思う。二転三転する騙し合いが魅力の物語のはずだが、頭脳の働きよりも爆薬の活躍が目立っていた。

あらすじ

人質に爆弾を巻きつけた強盗が銀行を襲う。その4日前、テキサスに住む元凄腕ハッカーのスタンリー(ヒュー・ジャックマン)にジンジャー(ハル・ベリー)と名乗る女が接触し、ガブリエル(ジョン・トラボルタ)との仕事を仲介する。ガブリエルの計画とは、95億ドルを電子送金で盗み出すこと。コンピューターに触ることすら禁止されているスタンリーだったが、元妻から娘ホリー(キャムリン・グライムス。面影はない)を取り戻すためには金が必要であり、否応なく計画に巻き込まれていく。

感想

本作のプロデューサーがジョエル・シルバーということもあり、劇場公開時には「あの『マトリックス』を超えるマシンガン撮影!」という宣伝文句が全面に出ていたように記憶している。確かにバレットタイムを使用した爆発シーンは規模も長さもなかなかのものだし、ハッカーが登場する点もマトリックス的なのだが、映画の方向性としては真逆の一作だと思う。

一般に、「ハッカー」という言葉からは「キーボードをカタカタしているオタク」の姿が想起される。これは全く格好よくないし、映画の主人公として魅力的とは言い難い。そこで、『マトリックス』では「キーボードカタカタ」の動作を全て脳内で処理させてしまい、「カタカタすることで何が起きているのか」を映像として描き出したわけである。キモオタがモードファッション全開のキアヌ・リーブスへと変貌し、銃で、カンフーで暴れ回る。かくして“クールな電脳世界”が完成したわけである。

対する本作。ヒュー・ジャックマンの外見がキモオタとは程遠く、彼が格好いいBGMを流してノリノリで作業していようと、キーボードをカタカタしていることには変わりない。どうやっても画的には格好よくない。電子送金で盗むのに銀行を襲わねばならないという設定を付与することで派手にはしているが(これ自体はセキュリティ的にありうる話だろう)、結局の所、やっていることは「キーボードカタカタ」なのである。女に口淫させながらハッキングすることで「俺はキモオタとは違うんだぜ」と装ってみようと、やはりカタカタには違いない。

作品のコアの部分がマトリックス的でないとは言え、「スタイリッシュな映画にしたい」という意思は共通していただろうか。今では見慣れてしまったバレットタイムも改めて見ると迫力があるし、「カタカタ」をクールな作業であるかのように偽装するために苦心した痕も感じられる。ストーリーはテンポよく進み、ヘリでバスを吊るすというバレットタイム以外の見所も用意されている。「『マトリックス』を超えた!」というアンカーがなければ、及第点ではあるか。

「思い込み(ミスディレクション)」を強調している一作なのだが、どんでん返し的な結末を導く伏線よりも、映画冒頭のガブリエルの一人語りの方が効いていたと思う。彼は「ハリウッド映画にはリアリティがないのが問題だ」と語る。こうしたメタ発言があると、観客は「きっとこの映画はその問題点を解決しているのだな」と“思い込む”わけだが、本作にはリアリティの欠片もない。「人は目と耳の刺激に騙される」との理由で「爆発」を見せていたが、観客が“思い込み”に囚われる切っ掛けは「ハル・ベリーの下着姿」である。確かにあの場面ではそれ以外の何かに注意を向けるなんて不可能なので、彼女の言葉をそのまま受け入れてしまう。迫力と勢いで押し切られた感は否めないものの、“騙す”という点についてはそれなりに上手くいっていたか(驚きはないが)。また、この映画を初めて観る人にとっては「ヒュー・ジャックマンが主役だろう」というのも一つの思い込みになるだろうか。

ソードフィッシュ (字幕版)

ソードフィッシュ (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video